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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第4章「春の嵐」

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第4章「春の嵐」2 ハーリ・ソルゼニン

2人は図書館が閉まるまで粘って点呼直前に夜の居住街を駆けていた。
その時、訓練生棟の門の外で小柄な女と男子T班のハーリ・ソルゼニンが話しこんでいた。その女は春分の翌日、施療棟の林でエンゾと一緒にいた女だった。エンゾと一緒でない分、怪しさは減っているが、ミシコは気になった。
「ハーリは今頃何を話してたんだ」
ミシコは階段を上がってくるハーリを待ちかまえて訊いた。ハーリは柔和な面立ちを崩さずに答えた。
「彼女、マルゴ・アングレーは親戚なんだよ。家族からの手紙を預かったからって、直接届けてくれたんだ」
「彼女はガーランドを降りてたのか」
「オスティア領国で補給した時にね。彼女と俺んち、オスティアの海沿いなんだ」
「そうか、それは良かったな」
「ありがとう。でも詰所には内緒にしておいて。あそこを通さない手紙はけっこう舎監がうるさいみたいだから。ああ、点呼が始まるよ、ミシコ・カレント」
3人は急いで4階まで駆け上がった。
春分から3週間が経ち、カレナードの背中から肩や脇腹にはたまに小さな引き攣りが走ったが、彼は気にしないことにしていた。
なによりマイヨール女史とその授業が気に入っていた。凛とした姿勢がどちらかと言えば男性的な印象を残すマイヨールだが、実際には2人の子供の母親で、ガーランドには5年前から単身赴任していた。子供は夫と共にオルシニバレ領国に住んでいる。口調がどこかフロリヤに似ていた。
シャルは課題が出るたびに愚痴を言った。
「春なのに!レポート地獄!」
毎度のことなので、ミシコは次はどんな名文句が出るか楽しみにしようと言った。
ヴィザーツ歴史学のほか、理数学と基礎病理学からも週末を返上するくらいレポートが求められた。
湯船の中のシャルが、キリアンが腰にタオル一枚巻いただけで机に向かっているのをからかった。
「ああ、風呂に浸かってる時くらいレポートを忘れさせてくれよ!」
「出たぞ、シャルの新しい愚痴だ」
そこへマヤルカが訪ねてきた。彼女は不用意にドアを開けたので、衝立の隙間から湯から出ようとしたシャルと目が合ってしまった。
「きゃあ!なんで今頃お風呂なのよ!朝のうちに入っておきなさいよ!」
彼女はオルシニバレから届いた手紙をカレナードに見せに来たのだった。フロリヤからカレナード宛ての手紙が同封されていた。彼は先日のハーリの事を思い出して言った。
「僕宛の手紙があるなら、一応詰所に届け出ておいた方がいいんじゃないか」
「あら、ミンシャに訊いたら、そんな必要ないって言ってたわ」
耳ざとくミシコが反応してきた。
「詰め所を通さなくてもいいってことか。変だな、ハーリの言い分と違うぞ」
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