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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第3章「生き脱ぎ」

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第3章「生き脱ぎ」29 波涛に遠く

女王と侍女団は近くで一塊りになっていた。
女官長とチャンダル女官が両脇から挟むようにして女王を守っていた。マリラの横顔は希望とも絶望とも分からない不思議な色を帯びていた。
少年が見たのは、艦砲射撃とともに今にも四散しそうなほど儚げなくせに、強い意志で我が身を支えている女だった。春分以来、カレナードは彼女に女王以外の顔を感じていた。
彼女の視線は遥か遠くにあった。カレナードはマリラの視線の先を見た。
サージ・ウォールを突き抜け、アナザーアメリカの外へと向かう視線だった。誰も追いつけない世界にたった1人でいるのが分かった。ひっ詰めた髪が数筋、乱れて風になぶられていた。
カレナードは急に彼女のそばに行く衝動に襲われた。砲撃と砲撃のわずかな隙に立ちあがった。
キリアンとアレクが急いで彼の頭を押さえた。
「あほ。目と耳をやられるって」
「マリラさまに気を取られてちゃ駄目だろ。次は古参の『それでも貴様軍人かッ!』が来るぞ」
カレナードはつぶやいた。
「僕はそんなに危なっかしいか」
V班の友人達はあきれた。ヤルヴィは大人ぶって「世話が焼けるったらありゃしない」と言った。「それは俺のセリフだよ」とシャルが悔しがった。
それから全員が次の砲撃に備えて真顔に戻った。
ミンシャはミシコをつついた。
「V班はいいチームワークしてるンじゃないかしら。御姫さまの彼を守る騎士のようだわ」
「僕としては君の騎士になりたいンだけど」
小麦色のミンシャの頬に、荷電ナノ粒子砲の色が映えた。
「ン、もう!照れるじゃないの」
最後の砲撃に甲板は揺れ、ミシコはミンシャの肩を抱いた。誰もそれに口出しする余裕はなかった。
3日後、ガーランドは元の姿に戻った。ポワントゥの浜辺にはミセンキッタの人々が集い、洋上に静々と巨大な調停の守護船の甦える様を見守っていた。
データを満載して回収された調査ナノマシンを解析する手伝いのため、訓練生は忙殺されることをまだ知らなかった。
何割かの新参訓練生の胸には、女王が今更のように口にした『ヴィザーツの真の役割』が引っ掛かっていた。その何割かの中にカレナードもいた。調停と武力の間で何を目指すのか、問いは始まったばかりだった。
こうして生き脱ぎの季節は終わりを告げた。
第3章はここで終わりです。次回から第4章「春の嵐」になります。
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