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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第1章「禁忌破り」

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第1章「禁忌破り」8 煌めくは花の浮き船

陽の光が離陸する飛行艇を包んだ。
飛行艇が最初の丘陵地を越えると、浮き船ガーランドが近づいて来るのが見えた。マリラがおどけて言った。
「おやおや、迎えに来るとは!カレナード、私のおうちだ」
それから通信器に向かった。口調は変わっていた。
「こちらは女王、マリラ・ヴォーである。第一管制室に告ぐ。飛行艇グラナダ・ワンはガーランド前方1時の方向より接近中、高度500。着艦はせぬ。ガーランドの船体に沿って一周する。第一管制室、復唱せよ」
通信器の向こうから復唱が戻ってきた。マリラは誇り高く言った。
「さあ、カレナード、見てご覧。浮き船ガーランドだ」
カレナードは「はあっ!」と歓声を上げたきり、間近で見るガーランドの美しく壮麗な姿に見とれた。
飛行艇はガーランドの上をゆっくり飛んだ。
長く伸びた4本の甲板は銀色に輝いた。
花模様に型どられた無数の大窓が続き、楔形の船体に添って花の冠が幾重にも巻かれているようだった。
「マリラさま、お花の中にもっと花があります」
「いい目をしている。あれは窓のようで実は栽培プラントだ。ガーランド・ヴィザーツ達の野菜畑だよ」
甲板に挟まれた船体中央部にはなだらかで透明な大天蓋が2つあった。大天蓋の下には緑の絨毯のように緑地と林があり、さらに建物の列が幾何学模様を作っていた。
大天蓋の後方にひときわ目立つ美しい建物があった。調停完了式を行う大宮殿だった。
真上からは楔型、真横からは長く平たい菱形のその船の全長は、3000mに及び、一年中地上に影を落とすのだ。
朝日を受けて輝くガーランドはこの世のものとは思えない威容であった 。
女王は言った。
「さながら天空の都市、アナザーアメリカの調停を司る守護の艦、私を長とするヴィザーツの船よ」
通信が入った。「マリラさま!マリラ・ヴォーさま!」とそれは叫んだ 。
「こちら、マリラである。同乗者をオルシニバレ鉱山に下ろすまで待機せよ。今回の飛行記録および女王の私事録は抹消せよ。よろしいな、エーリフ艦長!」
「同乗者とは誰でありますか」
「知らずともよい。しばらく静かにしておれ」
通信回線が沈黙したのちも女王はぶつくさ言った。
「新任艦長殿は心配症であるな」
ふとマリラは膝に暖かい重みを感じた。少年は女王にもたれてうとうとしていた。
「降ろすには忍びない。が、アナザーアメリカンを浮き船に乗せるも禁忌。
そなたとは良い出逢いであった、カレナード。春分の日に、この記憶は私から消えるだろう。だが、それまでの数日、私を楽しませ支えてくれるだろう」
飛行艇は旋回し、オルシニバレ鉱山街に向かった。父は遭難した現場に埋葬された。墓標はヤマの男達が石を積み上げたケルンだった。
3日後、カレナードは父の遺品を詰め込んだトランク一つでシェナンディ家の門をくぐった。
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