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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第3章「生き脱ぎ」

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第3章「生き脱ぎ」27 真珠のコートがはためく

強面の古参訓練生が整列のホイッスルを吹いた。
彼はカレナードの肩を叩き、もうすぐ標的が分かるぜと言った。それから急に愛想のいい笑顔を見せた。
「お前のことは噂で知ってる。良かったら付き合わないか」
訓練中にナンパするのか。しかも整列してる皆の前で。カレナードはしれっと返した。
「噂って、どんな噂ですか」
「そりゃあ、あの話さ」
「承知の上で、付き合えと」
「もちろんだ」
「僕は男ですが、いいのですか」
古参の強面が一瞬こわばった。何か話が違うぞと眉間にしわが寄っていた。
カレナードは目の端で女王と侍女団が甲板に上がっているのをとらえて、そちらに小さく顎をしゃくった。
「申し訳ないのですが、僕には先約があるんです。ほら、あそこにいる方が先約のお相手です」
古参はそちらを見て、ぎょっとした。この話は忘れてくれと手を振り、その場を離れた。
V班の連中はカレナードを女扱いした古参を殴らずにすんだが、彼が女王を先約の相手だと言った大胆さに驚き、また納得もした。キリアンが無粋な質問をした。
「君は一体何人の男から言い寄られてるんだ」
カレナードは聞いていなかった。彼は近づいてくるマリラしか見ていなかった。彼女は懐かしい真珠色のコートを羽織り、前髪をふっくら膨らませてはいたが、後ろでひっ詰めていた。教官に、同席させてもらおう、と言った。教官はせっかくの機会ですから新参達にお言葉をいただきたいと提案した。
女王は居並ぶ若者達の前にこともなげに進んだ。
「新参の諸君、今、そなたたちはヴィザーツの真の役割を見ている。
ガーランド一隻で艦隊を組み、アナザーアメリカを巡航する意味を考えるのだ。これが武力であり、使われることと使われぬ意味を考えるのだ。
また、今から行われる艦砲射撃は実弾ではない。
実弾を使えば、ここから眺める美しいポワントゥ岬と内陸にかけて数十kmの風景は永久に失われるだろう。
そなたたちの何人かは帰る故郷を亡くすのだ。ポワントゥの出身者は誰か。」
女王の問いに男子X班の1人と女子S班の2人が名乗りを上げた。
「そなたたちの故郷を引き合いに出してすまなかった。ミセンキッタ南部を灰にはせぬから案ずるな。
さて、そなたたちに課題を出そう。
艦砲射撃訓練はサージ・ウォール周辺に向けて、あるプログラムを与えた荷電ナノ粒子砲を使う。上空500mでナノ粒子は拡散し、艦砲射撃で加えられたエネルギー消失のため、サージ・ウォールに降り注ぐ。
この粒子に与えられたプログラムは何か、予想を立てるのだ。まだ時間がある。3分間、そなたたちにブレインストーミングをやってもらおう。
多少人数が多いが、非常時なれば気にすまい。さあ、開始だ」
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