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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第3章「生き脱ぎ」

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第3章「生き脱ぎ」26 威容の空

母艦は最大戦速を3時間ほど試したのち、テネ城市の南方500kmにある副首都プルシェニィを過ぎた頃に第2戦闘速度に移った。
大河沿いの多くの都市と町がガーランドの轟音の洗礼を受けた。
新参訓練生達は退避室で戦闘食なら食べていいぞ、と古参の許可をもらった。訓練はまだまだ続くので、彼らは出来るだけ古参の言うとおりにした。
予定では夕暮れに合流地点で全艦がそろったところで艦砲射撃訓練に入るのだ。それは甲板に出て見ることが出来るとのことだった。
カレナードは艦砲射撃の標的が何なのか、気になった。まさか洋上からミセンキッタに向けて撃ちはしまいと考えたが、例の古参に訊いてみた。
古参はうれしそうに答えた。
「それは秘密だ」
潮の香りが強くなった。ミセンキッタ最南端の岬、高々と灯台が輝くポワントィを過ぎた。海上にはすでに5隻の強襲艦が集結し、30機の菱形戦艦が艦隊を組んで大河の東側から洋上に出ようとしていた。
甲板に出たミシコ達はその迫力に胸が高鳴るのを抑えられなかった。
「すごい…ガーランドがこんな艦隊になるんだ、これは無敵だ!」
艦長が乗っているエメラルドグリーンの強襲艦船から、母艦に向かって艦砲射撃用意しろと合図の閃光弾が上げられた。
訓練生達は背嚢から出した旗を一斉に振った。旗はアルミニウムの粉を固定コードで付着させてあるため、集団で日の光があるうちに振ればキラキラと瞬いて、先ほどの閃光弾への返信となった。
トール・スピリッツ隊長機のヤッカはその様子を確認した。
「おもしろいことをやってるな。しかし、勝手に合図を送っては困るんだ。今年の新参は豊作なんだか不作なんだか。ここは叱ってやらねば。」
カレナードは左手で旗を振り、皆と同じように高揚の中にあった。何度も歓声が上がり、甲板上に若さが炸裂していた。
ヤッカは甲板にトール・スピリッツを寄せた。全長15mの機体が間近に迫ると初めこそ大騒ぎしていた若者達は静まり返った。
叱られている間、カレナードはトールの素晴らしく輝く機体を観察した。
隊長機は何層もの透過性装甲が艶やかな黒い光沢を放ち、機体を長く縁取る金と白と赤のラインに加えて、頸部や胸のくぼみにひそむ黒のために美しさを通りこして怖さを滲ませていた。
実習で見かけたときにはなかった武装があった。トールの右腕には斧の形の武器、左腕には盾を構えていた。盾の内側に一振りの剣。脚部には火器が付いていた。
カレナードは、それらのどの一つでも数撃で都市と人々と生活を破壊するのに十分のように思えた。
「この武器、戦艦、トール・スピリッツ、…何のためにあるんだ。これらは何をするんだ。
玄街と戦うためなのか。どうやって…。僕には分からないことだらけだ」
先ほどまでの興奮はどこかに消え、彼は訳も分からぬまま訓練のただなかにいる自分に気付いた。
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