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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第3章「生き脱ぎ」

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第3章「生き脱ぎ」23 新たなるページ

マリラは静かに言った
「私の紋章人であるそなたに限らず、私に仕える者はみな…私が記憶を失くし、表向き以外での思い出を失くして『昨年はこうでした、ああでした』と過去を共に振り返ることが出来ない。 
一方は懐かしさを感じ、私は私を発見する。それは毎としのことなのだが…なぜだろうな、そなたに辛く当り散らし、さらに生き脱ぎの場に呼んでしまうとは」
「マリラさまは、ご自分が僕を呼んだとお考えなのですか」
「そうとしか考えられぬ。エーリフの言うとおり、理屈ではない力が働いたのだ。
そなたが私の呼び声に応じた。
いつ、どのように呼んだのかは永遠に分からないだろう」
カレナードはもう一度思い出した。
春分の夜、マリラの声は無視できない強さで彼を動かした。無視できなかったものとは何だったのか。
彼の直感はその正体を知っているような気がしたが、それをただちに肯定することも、ましてマリラに伝えることもできなかった。
そのため、直感が触れたそれは彼の胸の奥でちりっと痛んだきり、仕舞い込まれることとなった。
「おそらく…そなたと私には何らかの縁があるのだ。そうでなければ、ここで一緒にいるわけがない。
そなたはさぞかし私に戸惑ったろう。
どうだろう、カレナード・レブラント。私の紋章人よ。私と共に歩んでくれ」
「ぼ…僕はすでにあなたに魂までも捧げました。ですから…」
「そうではない。
そなたを奴隷や人形ではなく、ガーランドの乗組員として、一人の人間として見ていたいのだ。それは迷惑か」
「いえ、迷惑だなんて」
カレナードはマリラを信じきれないでいる自分が悲しかった。それほどに生き脱ぎ以降のマリラは別人なのだ。しかし、女王に身の保証をされたことは素直に喜ぶべきだとアレクは言うだろう。
マリラはカレナードの手を取った。
「そなたへの理由なき暴力を許してほしい。さあ、行きなさい。友人達が待っているだろう。傷はきちっと治しなさい」
少年は頷いて、書斎をあとにした。午後の時間はすでに夕刻になっていた。
ベル・チャンダルに別れを告げ、エレベーターを降りると彼は小走りに訓練生棟へと走った。すぐに息切れしたが、早く自分の居場所に帰りたかった。V班の部屋が懐かしく感じられるほど、彼は遠くへ彷徨った気持ちだった。
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