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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第3章「生き脱ぎ」

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第3章「生き脱ぎ」21 女王とキリアン

轟音は夜半に止んで、夜空の月が真新しい装甲と磨きあげられた窓の数々に映り込んだ。アナザーアメリカの夜に、ガーランドは煌々と輝いた。
地上の人々はその姿に畏怖し、また高揚した。春分の数日後にこれを目撃できた領国は、その年は幸運に恵まれると信じられていた。この年、幸運に恵まれるのは西メイス領国だった。
ガーランド内部では、朝日が射した天蓋が透きとおり、建物は艶を持った。宮殿の天井でさえ、幾何学模様がくっきりと浮かんでいた。シャルが寝不足の目をこすっていた。
「お、おかしいぞ。いつもより物がくっきり見える。美しい…、何もかもが…」
マリラはようやくカレナードを放し、マットに腰掛けていた。
キリアンが話しかけた。
「マリラさま、僕はキリアン・レーと申します。カレナードと同じ班の者です」
「夕べはご苦労であった。ずっと点滴台を支えていたな」
「ありがとうございます。あの…カレナードは怪我をしてから、ほとんど食べられないのです。無理やり食べさせると戻してしまうのです。このままでは…」
「心配はいらぬよ。彼の中のウーヴァの強力な波動は抜けたようだ。
生き脱ぎの時、彼はただならぬエネルギーを受けた。それが五臓六腑に溜まっていたのでは、ろくろく食事もできまい。
それでも一つ良かったことがあるのだよ。何だと思う、キリアン・レー」
「良かったことですか。何か良かったこと…。食べない割には傷の治りがいいようですが、そうでしょうか」
マリラは僅かに微笑んだ。
「お前は怪我人をよく見ているようだな。そのとおり。ウーヴァのおかげで医療コードがどれもよく効いている。体の細胞が活性化しているのだ。不幸中の幸いだ」
キリアンは気になっていることを口にした。
「では、彼はますます女性の体になっていくのでしょうか」
マリラは何も分からないと首を振った。
女王の臨席を知るものは少なかったが、大宮殿の2階左バルコンから注視していたのはワイズ・フールだった。彼は格闘術の授業でカレナードをいじめる機会を失い、張り合いがなかった。 
「マリラさまったら、お優しいことで。果たしていつまで続くやら。ふっふん!」
1階右バルコンからはピード・パスリが注意を向け、艦長控え室を抜け出たエーリフが女王の近くにいた。巡回していたリリィも気付いていたが、女王とマハがいれば十分と判断して近寄らなかった。
ジーナ女官長がそっと現れた。
「お戻りください。そろそろ人目に付きます」
マリラはもう一度カレナードを見た。彼は穏やかに眠り続けていた。彼女は声をかけずに去っていった。
冬の名残の重たい雪が降る日にカレナードは施療棟を出て、V班の部屋に戻った。まだ右腕を十二分に使うことは出来なかったが、講義だけでも早く復帰したかった。途中で女王区画に寄るよう、ベル・チャンダルが迎えに来た。ベルはゆっくり目に歩いた。
「もう傷は完全にふさがったの」
「はい。たまにピリピリする時がありますが、大丈夫です」
「マリラさまがあなたとお話したいそうよ。午後の実習が始まったばかりだから、時間はたくさんあるわ」
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