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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第3章「生き脱ぎ」

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第3章「生き脱ぎ」18 施療棟の林に毒が落ちる

キリアンはマヤルカの強い口調に頷きながら、さらに訊いた。
「彼は今でも君が調子悪ければ添い伏しするの」
「オルシニバレを出てからガーランドに来るまでは、ずっとそんな感じだったわ。私一人ではここには来れなかった。彼の力は大したものよ。まぁ、本人には自覚がないんだけど。ところで、あなたも添い伏しが要るの」
キリアンはカレナードに出生の秘密を打ち明けたことが添い伏しだったと思ったので、「すでにしてもらったようなものだ」と言った。
マヤルカはなぜだか嫉妬に似た感情を覚えて、探るように「そうなの」とだけ答えた。
「そういえばヤルヴィは時々一緒に寝てるようだけどな。あれも添い伏しなのかな」
キリアンの言葉にマヤルカは慌てて、ヤルヴィを目で追った。
「添い伏しは祈祷師がそれなりに手順を踏む儀式なのよ。あの子は、十分に元気だわ。ちょっと寂しそうだけど」
施療棟群は六つの建物があり、彼らはその真ん中にある広場で待っていた。
リリィの助手のマハが研究専門棟から出てきて、彼らにカレナードの到着を教えてくれた。
幸いにもリリィは艦長から小解析室という名の小さな部屋を確保して、大切なサロンを守れたことにホクホクしていた。
「面会はまだ出来ないわ。命を取り留めたのは奇跡なのよ。難しい医療コードを遣うんだから、明日にしてちょうだい。でも、ドアのところから顔だけ見るのならいいわ」
仕方なくV班とY班はガラス越しに友人を見舞った。カレナードはうつ伏せで眠っていた。マハが彼の腕に点滴の針を挿し、心配しないわと微笑むのを見て納得するしかなかったが、ミシコは明日もミンシャ達を誘えるのだと思い直した。それより早くオーレリが明日も来たいわぁと水を向けたので、さっさとそれに乗った。
隣の林を通り抜けるさい先客がいた。教官のエンゾ・ボンゾだ。
小柄な彼が小柄な女と一緒にいた。その女は新参訓練生には縁のないような妖艶さと研げば刃になる鋭さがあった。只者ではない女の香りだった。
Y班の少女達はその毒気に当てられないよう、軽く挨拶して通り過ぎた。女は女王のように彼女らを見下し、無言で笑った。エンゾはさっと教官の表情を作った。
「レブラント君がいませんね。皆さん、私に投げられた打ち身はいかがです」
ミシコは班長らしく答えた。
「大したことないです。それとカレナード・レブラントは明日からしばらく欠席です。大怪我を負って、施療棟に入りましたから」
「ほう、それは残念です。彼にはまた手本になってもらいたかったのに。明日から全員で実技を始めますよ」
「ボンゾ先生、彼の事情をご存知ですか。身体的なことですが」
道化はしらばっくれた。
「怪我のことなら、今聞きましたよ」
「違います。彼が玄街にひどいコードを掛けられたことです」
「それ、どんなコードですか」
道化はわざとミシコに言わせようとした。彼は毅然と返した。
「僕の口からは言えません。施療棟のドクター・リリィに聞いてください。今も彼の手当をしてるはずですから」
道化は新参を困らせたくて仕方なかったが、連れの女が彼の腰に手を回した。
「若造を相手にするなら、アタシ、帰るわよ。」
そして振り向いた道化に軽くキスした。
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