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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第1章「禁忌破り」

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第1章「禁忌破り」7 二人の秘密となりにけり

山の端から日の光が射し始めた。女王はカレナードの手を引くと歩き出した。
「女王さまのお手が汚れます」
泥だらけの少年は手を引っ込めようとした。
「私のことなら気にするな。土に触れるのは慣れておる」
女王は鷹揚に言い、手を握り直した。少年の顔に初めて微かな笑みが浮かんだ。
「そなたをこの先にある鉱山まで連れて行ってやろう。ヤマの男達は山で死んだものには情に厚い。埋葬くらいはするだろう。彼らには葬儀の手間賃としてこれを渡しなさい」
女王は金の指輪を皮袋に入れて、カレナードの首に下げた。
「お守りだったとでも言えば彼らは納得する。
私の名は一切出さぬがよかろう。マリラ・ヴォーは女王でもあるが、魔術師ヴィザーツの長として要らぬ誤解や恨みを持つ輩もいる。そういう奴らはお前を利用しようとするだろう。用心に越した事はない。
ここで出会ったことはそなたと私だけの秘密にしておこう」
「この指輪はよろしいのですか」
「そなたが先ほど示した勇気に、私は敬意を払う。指輪はその代価だ。
父御の魂も慰められよう。彼は立派な息子を残した」
そこでふと彼女は思い当たった。
「母御はどうした」
「僕を産んでしばらくして亡くなりました」
「知り合いや親戚は」
「いません。父は土と水を調べる仕事をして、僕と一緒にアナザーアメリカ中を旅していました。次はオルシニバレ市に行くところでした」
「父御はオルシニバレ市の誰を訪ねるつもりであったか」
「精密機械組合長のシェナンディ家です」
「では、葬儀の後はそこへ行きなさい。
そなたの身の振り方を考えてもらえるだろう。あの都市はそなたのような人材の卵を育てる気風がある。おそらくそなたは出資寮に行くだろう」
「出資寮って何ですか」
「特別な孤児院だ。オルシニバレの誰かがそなたの親代わりになり養育費を出資する場所だ。そなたはそこで学び訓練を受けよ。そして働き、そなたに出資した額を親代わりの人物に、そう、出資者に払い戻すのだ。
この制度は厳しいが、出資者は後見人にもなってくれる。
オルシニバレ領国民として登録され、一人前になれば他領へも自由に行き来ができる」
マリラの言葉をカレナードは気に入った。その言葉に彼は父のように旅をする大人の自分を想像した。
二人は手を繋いで、湖まで歩いた。女王は優雅な仕草で指を少年に向け、清拭コードを唱えた。
「sorzzittzà-quès-vouffellr.」
少年の全身をわずかに風が包み、泥と汚れが消えた。
彼を飛行艇に乗せて、水と携帯食を取り出した。彼女は干し葡萄と胡桃の焼き菓子を割っては、カレナードの口に入れてやった。
二人の事情を知らない者が見れば、親子に見えたやもしれない。
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