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電脳@探偵団
作:佐倉信輔



第1話「ええーっ あたしが団長!?」 @4


 さて、どうしたものか――。
 確かあの男の子はいろいろ試して見ろと言っていた。
 挙げていたのは区切りを入れて見ろ、それと形を変えてみろ――。
 そこでよく見ると、どの文章も最初が"○枚目は"という形で始まっている事に気がついた。
 この部分で文章を二つに分ける事ができそうである。 
 そして、分けた結果このようになった。

 "求める物はここにある。

  1枚目は 白い箱の上にある。
  2枚目は 小さい人形の周りにある。
  3枚目は 凛々しい銅像の横にある。
  4枚目は 古い映画館の隅にある。
  5枚目は 黄色い車の後ろにある。
  6枚目は 遠い山のふもとにある。
  7枚目は 細長い電信柱の陰にある。
  8枚目は 大きい長靴の前にある。
  9枚目は 美しい鉄橋の下にある。
  10枚目は 分厚い本の隙間にある。"

 次は形を変える事。最初は意味は分からなかったが、考えているうちにひとつの可能性に思い当たった。
 前にテレビのクイズ番組で見たのだが、こういう暗号の場合文章全てを同じ文体に統一することが鍵になっている場合が多いのだ。
 そこで、今度は文章中の漢字を全てかなに直して見る事にした。
 前半部分は順番を表しているだけのようなので、結果後半部分だけをかなに直してみた。
 その結果、こうなった。

 "求める物はここにある。

  1枚目は しろいはこのうえにある。
  2枚目は ちいさいにんぎょうのまわりにある。
  3枚目は りりしいどうぞうのよこにある。
  4枚目は ふるいえいがかんのすみにある。
  5枚目は きいろいくるまのうしろにある。
  6枚目は とおいやまのふもとにある。
  7枚目は ほそながいでんしんばしらのかげにある。
  8枚目は おおきいながぐつのまえにある。
  9枚目は うつくしいてっきょうのしたにある。
  10枚目は ぶあついほんのすきまにある。"

 さて、ここからどうしよう――。
 数字が順番を表しているのなら、上から順に頭の文字でも読んでみるか――。

 "しちりふきとほおうぶ"

 ――ただの文字の羅列にしか見えないか、やっぱり――。
 じゃあ、お尻はどうか――。
 ――全部"る"じゃん。
 よく考えたら、上から順番なら番号を打つ意味なんてなさそうだし――。
 ――待てよ?
 じゃあ、各文章の数字番目の文字を抜き出す、というのはどうだろうか。
 試しにやってみたところ、こうなった。

 "しいしえくのんつょま"

 ――うーん、やっぱり意味がありそうには思えないんだけど。
 待てよ? そういえばある言葉をランダムで並べ替えて意味不明の羅列や全く関係のない文章に変換してしまう、という暗号があったはずだ。確か――、そうだ"アナグラム"とかいったっけ。
 私は早速、並べ替えを試してみる事にした。
 まず頭の文字を抜き出した文字から――。しかし、どう並べ替えても文章にはならなかった。
 次にお尻のほうで試してみたが、こちらもやはり文章にはならない。
 最後は各文章の数字番目の文字を――、分かりやすくいえば階段状に抜き出した文字だ。
 たっぷり時間をかけて並べ替えのパターンを書きだしていく。その結果――。
「これって――」
 私は思わず呟いた。
 なったのだ――。意味が通る内容に。

 "しょくいんしつのまえ"

 つまり、"職員室の前"だ。
 職員室――、小学校の職員室の事だろうか。
 暗号の記されていたプリントは小学校で刷られたものだし、別の学校とは考えにくかった。
 私はいてもたってもいられなくなり、学校へと向かったのだった。

 夕方の学校は既に人気もまばらとなっていた。僅かに部活中の生徒と何人かの教師が残っているくらいである。
 私は問題の"職員室の前"にたっていた。――といっても、入り口からは少し外れているが。
 さて、とりあえずここまで来てはみたものの、これからどうしようか――。
 暗号文には"職員室の前"としか書かれていなかった(それが果たして正解なのかどうか分からないが)。
 が、そこからどうしろとまでは書かれていなかった。
 どうしたものかと途方にくれているうち、私は不意に「あ、そうか」と呟いた。
 この暗号は"電脳次元"で見つけた暗号だ。――ということは、暗号が示す"何か"も"電脳次元"あるのではないだろうか。
 そこで早速、"電脳次元"にログインしてみる。
 人の気配の消えた職員室の窓から、そっと中を覗き込んでみる。職員室を始めとするいくつかのへやにはファイヤーウォールが張られていて、許可のない者が入る事はできない。
 とりあえず中はあきらめて職員室の周りを探してみると、職員室の扉の側当たりに"それ"はあった。
 箱――である。何の変哲もないただの黒っぽい金属性の箱だった。
 何が入っているのかは分からないが、持ち上げて軽く振ってみるとカラカラと音がする。
 私は箱を開けてみようとしたが、どうやらロックされているらしくびくともしなかった。
 しばらく格闘した後、開けるのをあきらめて元の場所に箱を戻そうとしたとき、いきなり"そいつ"は動き出した。
 箱からいきなりニョキニョキと手足が生えたのだ。続いて長い耳が箱の上部に浮き上がり、前面にはデジタルチックに光る二つの目玉が浮きあがった。
「よくオイラを見つけ出したなっ」
 箱はいきなりそう言ってきた。
 おそらく電子ペットにプログラムを加えて、箱の機能を追加したものだろう。"電脳次元"であれば、キットさえあればこのくらいの事は小学生でもできるので、さして驚きはしない。
「ありり? お前、見かけない顔だな? 新入りか?」
 箱はメカメカした目をチカチカさせながらそう言った。
 新入りって、なんのことだ――?
「ま、いっか。オイラは団のマスコットのラビーだ、よろしくな。――ってことで、お前には資格ありとみなして挑戦権をあたえよう!」
 箱はそう言った。
 団って何だ? 資格とか挑戦権とか、一体何のことだ――?
 そう訊こうとしたが、箱はこちらのいう事を聞きもせずに一方的に話を続けていった。
「見ての通り、証はオイラの中にある。――んが、オイラを開けるにはパスワードを入力してロックを解除しなきゃならない。そこで第二のテストだ。第二のテストは正しいパスワードを探し当てて、オイラのロックを解除すること。――あ、ちなみに時間制限はないけど入力できるチャンスは一回だけだからな」
「ちょ、ちょっと待った!」
 私は慌ててラビーと名乗った箱の話を止めた。
 ラビーは目をきょとんと(機械の目なので本当にそうしたのかはわからないが)させると、言った。
「焦らなくてもヒントはやるぞ。パスワードはお前をここに導いたものの中に隠されている。そん中でたった一つだけある"仲間外れ"がパスワードだよん」
 いや、私が訊きたいのはそういう事じゃあないんだけど――。
 ともかく、ここはラビーとやらに従ってロックを解除するしかないか――。
 仕方なく私はまた、謎の問題に挑む事になったのであった。
 っていうか、仲間外れって何だ――?
 "私をここに導いたもの"とは、もちろん例の暗号文のことだろう。
 その中でパスワードっぽいものといえば、暗号文に表記されていた"物"ということになるだろう。
 つまり答えは、"箱・人形・銅像・映画館・車・山・電信柱・長靴・鉄橋・本"のどれかということか。
 パスワードが二文字とかのはずはないだろうから、多分形容詞もくっつけるのだろう。
 しかし、仲間外れとは一体どういうことなのか。
 その意味がどう考えても分からない。大体どれもそれほど関連性があるとは思えないものばかりなのだ。
 あれこれ考えてみたが、やはりどうやっても"仲間外れ"が見つからない。
 っていうか、本当にこの中に"仲間外れ"があるのか?
「どうしたー? ひょっとして降参かな?」
 ラビーがニヤニヤ(何度も言うが機械眼だから本当にそうなのかどうかは分からないが)しながら話かけてくる。
「うるさいなあ! 今考え中!」
 私はちょっと苛立ち気味に言った。
 だんだん頭の中がこんがらかってきた――。こうなりゃもう一か八かだ――!
「決めた!」
 私は言った。
 どうせこのまま考えてたって分からない。ならば――。
「言うよ――?」
 私がそう言うと、ラビーは答える代わりに目をチカチカ光らせた。
 私は深呼吸をすると、その答えをゆっくりと告げた。
「"白い箱"――。パスワードは"白い箱"よ――!」
 ラビーは何も答えず、ただ黙って宙に浮かんでいる。
 そのまま無言の間が流れていく。やっぱり間違いだったか――!
 が、次の瞬間ラビーはいきなりこう言った。
「パンパカパーン! 大正解――!」
 その間の抜けた声に、思わず緊張の糸が解けて腰から砕けそうになってしまった。
 乙女の勘って、意外に当たるもんだな――。そんな事を考えていると、いきなりラビーの体がパカッと開いた。
 私はびっくりして少し後ずさりしてしまったが、ラビーに呼ばれて恐る恐る中を覗いてみた。
 箱の中には、一つのバッジが収められていた。
 ひまわりの花――あるいは太陽だろうか――を模した丸いバッジの中に、五芒星というひと筆書きの星があしらわれ、その五芒星を切り裂くように稲妻のマークが乗っかっている。
「さあ、受け取るのだ。由緒ただしき"電脳@探偵団"団長バッジを」
 ラビーはちょうど何とかバウアーのような体勢のままそう言った。
 "電脳@探偵団"!? 団長!?
 一体何の事なんだ――?
「ちょ、ちょっと待った――! その"何とか探偵団"って何!? 団長ってどういうこと!?」
 私は思わず叫んだ。
 一体何だっていうんだよ、もう――!?
 ラビーは何を言っているんだ、という表情(顔が向こう側に反っているので実際は見えないが、多分そんな感じなのだろうと思う)で言った。
「お前、何も知らずに解いちまったのか? こいつはな、"電脳@探偵団"という、この学校に代々伝わる伝統的な探偵団の次の団長を決めるテストだったんだよ。――だから、テストをクリアして見事このバッジを手にしたお前さんは、次の団長に任命されたってわけさ」
 ――えええっっ!!


そんなわけでいきなり“電脳@探偵団”の新団長に任命されてしまった私。
“電脳@探偵団”って何? 団長ってどういう事?
わけの分からぬまま、話は進んでいくのであった。
次回、
第2話『出動! 電脳@探偵団』
お楽しみに☆






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