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電脳@探偵団
作:佐倉信輔



第1話「ええーっ あたしが団長!?」 @2


 ともかく、転校初日は無事に終わった――。私の印象が皆にどう映ったかは分からないが、とりあえず大きな失敗はしなかったし、上々といったところだろう。
 私は学校を案内してくれた女子と共に下校し、帰宅した。
 やっぱり転校初日というのは疲れる――。やっと緊張から解放されたような気分だ。
 自分の部屋に入ってやっと一息つき、鞄の中を整理しつつ宿題の確認等をしていると、本の間から件のプリントがひらりと舞い落ちた。
 改めてプリントを手にとって見る。なぜこんなに気になるんだろう――。
 枠の模様をじっくりと観察しているうち、突然私の脳裏にある事が閃いた。いや、閃いたというよりは思い出したといった方がいいか。
 この枠の模様は3Dモジュールだ。確か、以前パパに見せてもらった事がある。機密文書の保持等の目的で作成された暗号化方法で、一見するとただの模様だが、ある事をすると隠された文字や図形が浮かび上がる仕掛けだ。もっとも、私がパパに見せてもらったのは講義で使う実習教材だったのだが――。
 ちなみにある事とは、模様を"電脳次元"とリンクさせる事。デバイスを通して模様を見る事で、隠された内容が読み取れるようになるのだ。
 私は急いで机の上のゴーグル状のデバイスを取り上げる。"電脳次元"に接続するためのデバイスの中でも特に子供に人気の高いタイプの端末で、普通のゴーグルのようにかぶって持ち運びできるので扱いやすいのが特徴だ。
 ゴーグル(便宜上そう呼ばせてもらう)を装着する。電源は装着すると自動で入り、外すと自動的に落ちる仕組みだ。電源は太陽や電灯の光さえあれば常時自動で充電するので、何もしなくてもエネルギーが切れる事は滅多にない。
 モードを"スキャン"に合わせる。"スキャン"は"電脳次元"自体に入ることはせず、デバイス越しに"電脳次元"内を探索できるモード。身体ごと"電脳次元"に入るのが"ログイン"だ。
 ゴーグル越しにプリントの枠を確認する。――やはり、何かが浮き上がってくる。ただし、何やら文字化けした分掌の羅列になっていて、何が書いてあるのかは分からない。多分、二重プロテクトだ。
 こういう場合、何らかのコードを入力してやるか、決められた操作を行うかがキーになるはずだが――。
 しかし、そこからどうすればいいのかが分からない。見たところコードを入力するエリアは見当たらないから、何らかの操作ということだろうか――。
 しばらく考えていたが、結局どうすればいいのか見当もつかなかった。
 仕方なく解読はそこであきらめ、私はプリントを机の上に置いてベッドの上にごろんと横になった。
 それにしても、ただのお知らせプリントになんで3Dモジュールなんかが仕込まれていたのだろう――。
 その時、開いていた窓から風が吹き込み、机の上においたプリントを吹き飛ばした。
 プリントは天井近くまで舞い上がり、ゆっくりと左右に大きく舞いながら落ちてくる。
 私は何の気なしにその様子を見つめていたが、次の瞬間目を疑った。一瞬――ほんの一瞬だがプリントの枠に文字が浮き上がったような気がしたのだ。
 舞い落ちたプリントを拾い上げ、もう一度くまなく見渡してみる。すると、プリントを裏から透かして見た時に薄く文字が浮かび上がる事に気がついた。
 裏文字だ――。この3Dモジュールは、浮かび上がった羅列を裏文字にすることでプロテクトが解ける仕掛けになっていたのだ。
 モジュールを裏文字にするには一度"電脳次元"に入る必要がある。私はゴーグルのモードを"ログイン"に切り替えた。瞬時に私の身体は"電脳次元"へと転送される。
 電脳次元は見た目は現実世界と全く同じ構成の世界だ。けど、全く別の次元として存在する空間で全てがデータで構成されている。この中であれば現実世界では絶対不可能な実験等もプログラムの知識さえあれば行う事ができるのだ。
 "電脳次元"にログインするには、専用のデバイスと自分を証明するためのID、それにボディパス(生体パスワード)が必要である。ボディパスというのは指紋・声紋・虹彩こうさい等の生体識別データのことで、デバイスに合わせて自動的に前述のいずれかが登録される事になっている。ゴーグルタイプなら眼球の薄い内膜である虹彩だ。
 "電脳次元"にログインし、すぐにプリントのデータを反転させる。ゴーグルタイプはデバイスがそのままコントローラーにもなっていて、"電脳空間"内であれば直接触れた物のデータを操作する事ができる(建物の壁なや道路などはプロテクトされているのである程度プログラミングの知識と操作技術がいるけど)。
 ちなみにログインする時に身体の一部が触れていれば、現実世界の"物"を"電脳次元"に持っていく事ができる(ただし、家とか壁とか道路とか、物理的に動かせないものはだめ。あと、自動車など持ち込み不可の設定になっている物もある)。
 反転させたモジュールに解析をかける。ほどなくして、文字が浮かび上がってきた。

 "求める物はここにある。1枚目は白い箱の上にある。2枚目は小さい人形の周りにある。3枚目は凛々しい銅像の横にある。4枚目は古い映画館の隅にある。5枚目は黄色い車の後ろにある。6枚目は遠い山のふもとにある。7枚目は細長い電信柱の陰にある。8枚目は大きい長靴の前にある。9枚目は美しい鉄橋の下にある。10枚目は分厚い本の隙間にある。"

 それが、書かれていた文字の全てだった。
 ――はっきり言って、何の文章なんだかさっぱり意味が分からない。
 "1枚目"とか書かれているという事は、文章が指し示す場所に何かが隠されているということなのだろうか。――けど銅像・山・電信柱・鉄橋はともかく、他の六つは簡単に動かせるものばかりだ。第一、文章があまりにも抽象的過ぎてどこの事を指しているかが分からない。おまけに、引っ越してきたばかりの私はまだこの町の地理にも詳しくない。
 とりあえず、このまま考えていてもらちが空かない。とりあえず私は、文面をゴーグルに記録させてログアウトする事にした。
 ログアウトした後、ゴーグルに記録させた文章のデータをプリンターに出力する。これで、現実世界でもこの文章を持ち運ぶ事ができるわけだ。もちろん記録したデータはいつでもゴーグルに呼び出す事ができるが、いちいちゴーグルをつけっぱなしにするよりこの方が好きな時だけ見られるし。
 さて、あとはこれをどうするかだけど――。
 とりあえず、図書館にでも行って調べてみようか――。
 そう考えた私は、とりあえず出力した紙を持って、市立の図書館に向かう事にしたのだった。







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