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恋愛テスト
作:つぼみ


どうすれば満点がとれますか?どうすれば満点になれますか?




月末恒例の小テストが終わり、今日はそのテスト達が帰ってくる。
みんなが嫌がる“恐怖のテスト返却日”だ。
正門前の掲示板に人だかりができているのは、
5教科の合計点の成績順に順位が発表されるからだ。

「あぁ、また大盛り上がりね・・・。」
人ごみが嫌いな私は、掲示板には近寄らずに正門をくぐろうとした。

「なーつっ。」
ところが、後ろのほうから飛んできたこの声によって、
私の思惑はみごとに壊されてしまった。

「掲示板行かないの?順位、一緒に見に行こうよ!!」
声の主は、西原梨穂。
高校に入学したときから同じクラスで、私の親友だ。

「え?あぁ・・・うん。そうだね・・・。」
基本的にりほのことは好きだし、いい子だと思っている。
でも、こういうときは困る。


りほは私の手をとると、掲示板の方へズルズルと引っ張っていった。
そして、人ごみを掻き分けてどんどん前へ進んでいく。
私は、りほに引っ張られるがままに前へ前へと進んでいった。

「んと・・・どこにいるのかな・・・。」
「西原梨穂西原梨穂・・・・・・。」
私たち二人は、まず、りほの名前を探した。

『149位 西原梨穂  5科合計 238点』

「りほ、149位だって。」
「おぉ!!なかなかいいじゃん。半分より上だし、前回よりも上がってるし。」
私がりほの名前を指差して言うと、りほは満足そうに笑顔を浮かべた。

「じゃあ、次はなつね。」
りほは、自分のを探すときよりも意気込んでいる。

「えっと・・・」
「あ、待ってりほ。私なら・・・」
私は、掲示板の一番上にいる自分の名前を指差した。

『1位 寺坂なつ  5科合計 499点』

「さすがなつ・・・。また1位なんだ。」
りほが、私の名前を見上げて言った。

「でも、残りの1点ってなんなんだろうね?」
そう言って、りほは大きな目で私を見つめている。

「あぁ、それならもう分かってる。たぶん、あの意地の悪い社会の・・・」
「それって誰のことかなぁ?寺坂?」
私が言い切らないうちに、私の頭に何か重いモノがのしかかってきた。
私がその重いモノをどけて、後ろを振り返ると、
そこには、少し引きつった笑顔を浮かべた“1点”の張本人が立っていた。

「あ、鮎原先生・・・!?」
私の隣でりほが絶句している。

「どうせ、また先生でしょ?とってつけたような理由で1点マイナスしてるのは。」
「今回は偉かったね。」
先生は、優しい笑顔で私を見下ろしている。

「全問正解だったよ。」
そう言いながらも、先生の笑顔が急に意地悪になる。
私は、黙って先生を見上げて溜め息をつくと、
「行こっ」とりほの手を引っ張って、その場から離れた。
後ろではまだ意地悪な笑顔で、先生が手を振っている。





「な・・・つっ。・・・・・・なつっ!な、なんで!?」
私に手を引っ張られながら、しばらく放心状態だったりほがいきなり声を張り上げた。

「え?なんでって・・・何が?」
私は、りほの大きな声に耳をふさいぐと、りほに聞き返した。

「だって今っ、なつ、鮎原先生と話してたよね!?」
「うん。話してたけど。」
「なんで?」
「なんでって・・・は?」
だんだん訳が分からなくなってきた。
確かに今、私はあの社会の鮎原先生と話をしていた。
だけど、それってそんなに驚くこと?

「だって、鮎原先生、女の子と全然無駄話しないんだよ!?」
そういえば、この学校であの先生が、女子と話しているところを見たことが無い。

「だけど今、鮎原先生、普通になつに声かけてたじゃん。
 普段は、質問すらほとんど受け付けないのに・・・。」
そう言うりほは、なぜか・・・必死だ。

「りほ、なんでそんな必死なの?」
私は、たまりかねて聞いてみた。

「え?そんなことないよ!?いつもどうりだよ。」
りほはそう弁解するけど、その弁解もどこか必死に見える。

「そう・・・かな。」
なんだか、必死なりほが可愛くなって、それ以上つっこまないことにした。

(きっと、りほは鮎原先生のことが好きなんだ・・・。)
私は、ふと、そう思った。
そのとき、少しだけ変な、モヤモヤした気持ちが見えたような気がしたけど、
私は気づかないフリをした。
その気持ちには、気づいてはいけないような気がしたから。
その気持ちには、触れてはいけないような気がしたから。





こういう日に限って、社会の時間が入っている。
6時限目。今日の最終の授業だ。

(後味の悪い一日になるなぁ・・・。)
そんなことを考えながら授業を受けていると、いつの間にか問題の6時限目になっていた。

「それじゃあ、この前の小テストを返していく。」
先生はよく通る声でそう言うと、順番に生徒の名前を呼んでいった。

「・・・・・・・・・寺坂なつ。」
何人か後に私の名前が呼ばれた。

「はい。」
とりあええず、機嫌よく返事をして教卓へ向かう。

(どうせ、99点に決まってる。)
私はそんなことを考えながら、先生から答案を受け取った。

私は、自分の席に戻って、答案を広げて驚いた。

『100』

答案用紙の右上。点数の欄には確かにそう書いてあった。
いつもなら、際どいところで点を引かれているのに、今回の答案には○しかついていない。

(うそ・・・夢・・・?)
そう思ったけど、これは絶対に夢じゃない。
私は、とたんに満面の笑顔になった。





社会の授業は答案返却だけで終わり、また気が付いたら放課後だった。

(これで、あの社会教師のところに講義しに行かなくて済む。)
そう考えただけで、私は上機嫌になった。

「なつ。ちょっと見てほしいんだけど・・・。」
私は帰る支度をしていると、りほが近づいてきた。

「どうしたの?」
私は、あまりにも控えめなりほに首を傾げた。

「ここってさぁ・・・間違ってる?」
そう言って、りほは社会の答案用紙を見せた。

「どれ?」

とくん・・・

りほの答案用紙を見ると、私の心臓は、少し早くなった。

(これって・・・私の間違い方と全く同じ・・・。)
りほに見せられた社会のテストは、私と同じような際どい点数の引かれ方をしていた。

「正解だと思うよ。先生に聞きに行ってみる?」
私は、どんどん早くなっていく鼓動に気づかないように、落ち着いて答えた。

「う、うん。」
りほは、少し赤くなって、頷いた。
そんなりほを見て、私の鼓動は、また速度を増す。





私たちはその後、ほとんど何も話さずに職員室へ行った。

「スミマセン。社会の鮎原先生いらっしゃいますか?」
職員室のドアを開けてそう言ったのは、私。
いつも社会の答案返却の日の放課後は、先生に講義するためにこうしていた。
でも、今日は違う。今日、先生に用があるのはりほ。私じゃない。

「はい。どうしたの?今回は、文句ないはずでしょ?100点だったんだから。」
先生は、私たちのところまで来ると、私を見下ろして言った。

「いえ、今日は私じゃありません。西原さんです。」
私は背の高い先生を見上げてそう言うと、後ろに隠れていたりほを先生の方へおした。

「えっと・・・」
「あぁ、西原が。テストのこと?」
先生はりほが言い出すのを言葉で遮って、りほに優しく問いかけた。

「・・・・・・・・・。」
りほはますます赤くなって、黙ったまま小さく頷いた。

「そっか。何か間違いがあったのかな?こっちで聞くから、ついておいで。」
先生はそう言うと、りほに手招きをして、職員室を出た。

「寺坂は、もういいだろう?早く帰りなさい。」
先生は、突っ立ったままの私を見てそう言うと、りほを促して行ってしまった。

「あ、な、なつ、バイバイ。」
りほは、先生の後ろをついて歩きながら、私に手を振った。

「バイバイ・・・。」
私は小さくそう言うと、無理やり笑って、りほに手を振った。

私は二人の背中を見送ると、クルッと回れ右をして走り出した。
流れ出しそうになった涙を必死でこらえて、走って家まで帰った。





私は、家に帰るとすぐに、部屋にかけこんだ。
そして、そのままベッドに突っ伏して泣いた。
学校からずっとこらえていた涙が一気に流れ出して止まらなかった。

――どうしてこんな気持ちになるの?
社会で念願の100点が取れたんだよ?
どうして泣くことがあるの?
次の標的がりほに変わっただけ。
それに・・・それに、りほは先生のことが好きなんだから。
それでいいんじゃないの?このモヤモヤした気持ちは何?――

そう。それでいい。私の・・・少なくとも表の顔ではそう思っていた。
でも、心の奥の方では、それじゃ嫌だと言っている自分がいる。
先生の後ろをついて歩くのは私だと、先生に講義するのは私だと、心の奥の私が言っている。

――この・・・モヤモヤした気持ちは・・・私が・・・先生のことを・・・好き・・・だから・・・?-―

気づいてしまった。触れてしまった。
気づいてはいけなかったのに。触れてはいけなかったのに。
この気持ちを認めて、苦しむのは自分だって分かっていたはずなのに・・・。





3学期。小テストは3回。つまり・・・チャンスも3回。
どうやって99点を獲るか考えた。
自分で際どい間違い方をしてみたり、名前を少し汚く書いてみたり、
今までの先生の減点対象になっていたことをいろいろ試してみた。
けど、どのテストも100点だった。
その代わりに、先生の減点対象は私からりほに変わった。
りほは、その度にちょっと嬉しそうにしている。
そんなりほを見る度に、私のモヤモヤは広がっていった。

そして、今日は最後のチャンス。最後のテスト返却日。
私は、校門前に張り出されている掲示板を見に行った。
ここで合計500点なら、まず、可能性は0。

「寺坂なつは・・・」
私は、掲示板を見上げる。

『1位 寺坂なつ  5科合計 499点』

「やった・・・。」
私が小声で言うと、あの日と同じように何か重いモノが頭にのしかかってきた。

「なんでしょうか?鮎原先生。」
私は、このうるさい鼓動を勘付かれないように、
わざと鬱陶しそうにその重いモノをどかした。

「今日が、ラストチャンスだぞ。」
私が振り返ると、先生はあの意地悪な笑顔を浮かべて後ろに立っていた。

「何が?ですか?」
「・・・・・・素直になりなさい。」
私が先生を見上げて問うと、先生は少し優しい笑顔を残して、私の前から去っていった。





今日の社会の時間は、あの日と同じ6時限目。
私は、全然集中できない頭を抱えて、授業を受けていた。

――素直になりなさい――

少しでも真剣に考えようとすると、頭をよぎるのは先生のあの言葉。

(素直に・・・。)
「寺坂っ。」
私は、先生の声で我に返った。

「え?あ、は、はい。」
私は慌てて返事をすると、立ち上がった。

「お前、何回名前呼んだと思ってんだよ。ラストチャンスって言っただろ。」
先生はそう言うと、私に答案用紙を渡した。

「ラストチャンスって・・・どういう意味?」
私は、ブツブツと独り言を言いながら席につくと、答案用紙を開いた。

『99点』
確かに答案用紙の右上にそう書かれていた。

「ラスト・・・チャンス・・・。」
そう。このテストがラストチャンス。私が先生に“本当”を伝える最後のチャンス。





チャイムが鳴って、放課後になった。
早く先生のところに行きたくて、私は手早く帰る私宅をした。

「なつ。今回は、無かったよ。惜しい間違い。」
私が、教室から出ようと鞄を持って立ち上がると、
りほが答案用紙をヒラヒラさせて近づいてきた。

「ほんとに!?よかったじゃん。」
私は、はやる気持ちを抑えながらりほに笑顔を向ける。

「うん。でも・・・ちょっと残念かな・・・。」
りほが少しシュンとする。

「先生に会えなくなるから?」
冗談めかして言うつもりだったのに、声がそうはならなかった。

「心配してるの?」
りほが悪戯な顔をして私を見ている。

「そ、そんなわけないでしょっっ。」
私は、図星をつかれて声を張り上げる。

「大丈夫。心配しないで。私、先生のこと好きだけど。LIKEだから。ただの憧れ。」
LOVEじゃないよ。と、りほがにっこりする。

「じゃあ、ばいばい。素直になりなさい。」
りほは、先生と同じ台詞を残して去って行った。

「素直に・・・ね・・・。」
私はそう呟くと、
机の上に出しっぱなしにしてあった99点の答案用紙を持って、教室を後にした。





私は、まず職員室に直行した。いつもどおり、先生を呼びに行くために。

「あの、社会の鮎原先生いますか?」
私は、職員室を見渡して先生を探しながら言った。

「あぁ、鮎原先生なら社会の教材室だと思うよ。」
ドアの一番近くに座っていた先生が、そう教えてくれた。

「そうですか。ありがとうございます。」
私は、その先生に一礼すると、職員室を飛び出した。





「失礼します。」
私は、社会の教材室のドアを開けた。

「はい。何でしょうか?寺坂さん?」
先生は、その教室の一番奥の椅子に座っていた。

「また、99点なんですけど。」
私は、先生の前まで来ると、不機嫌な声で先生に答案用紙を渡した。

「×が一つも無いのに99点なんです。」
私は点数欄を指差して先生に言う。

「それは、私が素直じゃないからですか?」
私は、目の前の先生を見上げる。
先生の表情は・・・ちょうど差し込んできた西日で、逆光になって分からない。

「私は、先生が好きです。」
私は、先生を見上げたまま言った。
すると、ずっと私の答案を見ていた先生の顔が近づいてきて、私の唇に先生の唇が触れた。

「・・・・・・/////////。」
「はい、これで満点。」
唇が離れても、何も言えなくなってしまった私に先生から渡されたテストの点数欄には、
100点の文字が夕日に照らされて輝いていた。



最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

初投稿作品です。全然まとまりが無い文章ですみません↓↓

なつとりほキャラは、最初と最後でかなり違います…orz

感想などいただけたら、参考にさせていただきます。













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