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  大地の系譜 作者:Melon
27
 ・・・・・・カタカタカタ
 馬車内ではルービックキューブの面が動く音がBGMとなっている。
 梗汰は道中の暇な時間をルービックキューブで潰していた。
 瞳は出発してから何をするでもなく、無言で窓の外を眺めている。

 うーむ、気まずい。
 何か、何か話題は無いものか・・・・・・。

 こういうときは家族の話題が無難か?

「あ、あのさ」
「なによ」

 瞳が緩慢な動作でこちらを向く。

「会合ってさ、不知火さんの両親とかもくるの?」
「・・・・・・来るわよ」

 いきなりハズレかよ・・・・・・。
 なんか、ものっすごく嫌そうに答えたぞ。
 もしかして親との仲が悪いとか?

「それが何か?」
「え、いやその、不知火さんの両親はどんな人なのかなーと」
「ふん、どうせ会うことになるのだから気にしないことね」
「・・・・・・そっすか」

 はい、会話しゅーりょー。
 馬車内には二人しか居ないのに、この空気はきつすぎる。
 
「そういえば、あなた」

 お、向こうから会話を始めてくれたぞ。
 嬉しいが、ここはあまり嬉しそうな感じを出すと恥ずかしいし・・・・・・よし、そうでもないような雰囲気で返事をするか。

「・・・・・・なに?」
「まじめに答えないとぶっ飛ばすわよ」
「オレ、まじめなの、大好き」
「結構。サイラちゃんの事だけど、あの子はずっと一人で森に住んでいたそうね」
「うん、そう聞いた」

 サイラの話か。どんとこい!

「サイラちゃん、一人でずっと暮らしていた割りには、あなたにべったりなのね。もっとしっかりしていても良さそうなのに」
「ぁー、そう言われてみると、今よりしっかりしてたかも。初めて会った時に色々あったからなぁ」
「へぇ、そうなの。それじゃあなた達の馴れ初めを聞かせて」
「馴れ初めって・・・・・・オレとサイラは別に恋人じゃねーよ!」
「なんでも良いわ、聞かせなさい。どうせすることも無いし暇なんだからいいじゃない」

 ちょっと強引すぎやしませんかね、不知火さんよ。
 梗汰はじとーっと瞳を睨む。

「そう言えばいい天気ね」
「え?」

 なんだ急に、天気の話なんて。

「こんなにいい天気だと、空を飛んでみたくならない?」
「話させていただきます!」

 そして梗汰は、自分とサイラが会ってからの事をしぶしぶ々語る事となった。



★ 

 三十分ほど話しただろうか、

「なるほどね」

 梗汰が話し終わると、瞳が何かを納得したかのように頷いた。

「サイラちゃんがあなたにべったりなのは、多分あなたが彼女を変えたからね」
「オレが?」
「サイラちゃんが一人で生きていた時に作った壁を、多分あなたが崩したのね。今の彼女がおかしいは言わないけど、このままだと少し危ういかもよ?」

 壁?サイラが危うい?

「サイラが?それは一体どう言う事なんだ」
「このままのだと、もし何かあった時にサイラちゃんが壊れちゃうかもよ?ってこと」
「壊れる?」
「そう。彼女は周囲に疎まれ冷たくされて、親しい人も居なく、ずっと一人で生きていた。そして其処にあなたが現れた。彼女にはあなたが救世主にでも見えたでしょうね。彼女はあなたに少々依存しすぎているわ。あなたが急に居なくなったり、もう二度と会えなくなったりしたら、きっと壊れちゃうわ」
「・・・・・・っ!」
「きっと彼女の中であなたは感情の防波堤の様な役割を果たしているのね。あながずっと自分の傍に居る。そう思っていたくて、あなたの存在を確認するように甘えているのよ」
「そう・・・・・・なのか?」

 オレは人の心なんて読めないから、サッパリ分からない、オレとサイラは普通に仲良くなっているだけだと思っていた。
 でも、もし瞳の言うとおりだとしたら。
 確かにサイラはこの先危ういのかもしれない。
 しかし、そんなこと今言われても、どうしたら・・・・・・。

「まぁ、全部私の推測だからあまり当てにしないことね」
「そうは言ってもな、ここまで言われちゃうと気になっちゃうだろ・・・・・・」
「だとしても、それはあなた達の問題なのだから、何にするにしても、離れ離れになる前に少しずつ解決するのね。ずっと一緒に居るなんて事は無理なんだし」

 オレとサイラが離れ離れになる時、か。
 瞳の言う事も一理あるが、それだけが答えではないだろう。
 子供はいつかは親離れするものだ、サイラにもいつかはそれが訪れるだろう。
 それがいつかは分からないけど、サイラには今まで誰もしてあげなかった分、その時が来るまでは自分がしっかり付いていてあげたい、と思う。
 
「いや、オレはしばらくの間はサイラの甘えに応えてあげようと思う。小さい頃から人の優しさを知らなかったサイラに教えてあげたい、人はこんなにも優しいんだっていう事を」

 梗汰がそう言うと、瞳は優しげな微笑みを浮かべた。

「へえ、教師みたいなことを言うのね」
「まーな、オレはこう見えても学校の先生を目指していたんだ」

 理由は単純、中学時の先生に大変お世話になり、それがきっかけになったという、ありふれたもの、そして何より子供が好きだと言う事だ。

「そうだったの。まぁあなたがそう言うのなら、それがいいのかもね」
「まぁ、オレじゃ役不足かもしれないけどね」

 梗汰は苦笑しながら言う。
 自分の未熟さは自分が一番分かっている、人間としての。 

「だからオレじゃダメな時は、みんなに手伝って貰うよ。今はニーナっていう友達も出来たしね」
「ふふふ、ならその時はあたしも手伝ってあげるわ」
「それは助かる」

 そう言ってお互いに笑った。

 こいつも案外優しいところもあるじゃん。



 梗汰は瞳との距離が少し縮まった気がした。


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