22
「ふわぁ・・・・・・ぁ」
梗汰はベッドから起き上がり、首をゴキゴキと鳴らす。
最近は寝起きがとてもスッキリだ。
「・・・・・・やっと起きました」
「ん?」
ベッドの傍の椅子にサイラが座っていた。
なにやら怒っているようだ。不機嫌オーラが出ている。
「さ、サイラ、一体どうした」
「コータさん!コータさんが術の練習中に怪我をして倒れたと聞きました。また鼻血だしたんですね・・・・・・なんですぐに教えてくれないんですか!」
「・・・・・・ぁ」
(そういえば瞳が言ってたな、サイラに会いに行けって・・・・・・さっきのこと、サイラに伝えてたのか)
「わるい!なんだか布団が気持ちよくて眠っちゃったわ」
「私は眠気に負けたんですね・・・・・・」
ずーん、とサイラが気を落とした。
「あー!今のなし!疲れてて眠っちゃったんだ。いやー、不知火さんに訓練に付き合ってもらっててさー、それで疲れちゃってね!」
「・・・・・・まぁいいです」
サイラも納得してくれたようだ・・・・・・多分。
(さすがに殴り合いの戦いをしていたとは言えないよな)
「ところで、怪我はもういいんですか?」
「うーん、まだちょっと胸がチリチリする感じがあるけど」
破けた服のスキマから胸の火傷に手を当てる。
うん、微かに痛む程度だし問題はなさそうだ。
「ちょっとした怪我と火傷だから大丈夫だよ」
「それならよかったです。でも、あんまり危ないことしないでくださいよ?」
「・・・・・・努力する」
「コータさん!」
「あー、わかったよ」
ぅぐ・・・・・・サイラには強く言えない。
この約束を破ったら本気で怒られそうだ・・・・・・。
「そういや、サイラはアメリアかニーナの居場所が知らないか?」
梗汰は話題を変えるように言う。
「あの人達に何か用があるんですか?」
「そうそう、オレの服さ、破けたりところどころ焦げたりしちゃったからさ、その・・・・・・服でも買ってもらいたいなーと」
自分で言ってて凄く恥ずかしい、女性にたかるとか情けなさ過ぎるぞ・・・・・・オレ。
といかオレ、普段着何も持ってねーじゃん!
アズールに貰ったスーツしかないし・・・・・・。
因みに今日着ている服は、梗汰がこの世界に来たときから着ていた服で、昨日の夜に洗濯して乾かしたのを使っている。寝巻きは部屋に置いてあるのを使った。
でも、オレお金とか無いし、せめて給料とかの前借でも・・・・・・おい、なんだか泣けてきたぞ。
「服ですかー、さすがにそのボロボロの格好じゃ寒そうですもんね」
「うん、そういう訳でニーナかアメリアと会いたくてね。あー、アズールでもいいかな」
「うーん、ニーナさんは確か街に出ていますね、アメリアさんは忙しいんじゃないですかね?王様ですし、アズールさんは場所が分かりません」
「そうだよなぁ、まぁとりあえずこの部屋から出るか。いつまでも居て迷惑をかけるのもなんだし」
「そうですねー」
梗汰はベッドから降り、職員に挨拶をしサイラを連れて救護室から出た。
「おー、誰かが戦ってるな」
救護室は施設の端のほうにあったようだ。救護室から出ると結界の中で誰かが戦っているのが見えた。
結界の中には、爆風や水、その他にも梗汰には分からない何かが吹き荒れていた。
「わぁ、凄いですねー」
「そうだなー」
「おい、お前がさっき不知火と戦っていたやつだな」
梗汰達が結界の中での戦いを観ていると、横から声が掛かった。
「ん?」
誰だろ?オレの知っている人じゃないな。ごつい感じのおっさんだ。
「よくアイツと戦おうと思ったな、実戦は初心者って聞いたが、なかなか根性があるじゃねーか。怪我はもういいのか?」
「治してもらったようなので、なんとか」
この人、不知火さんの知り合いなのかな?
「いやー、練習って事で実戦での術の扱いを確かめてたんですよ。向こうは全然本気じゃなかったと思いますよ」
「だろうな。不知火はこの国の様々な術師が集うこの場所でも、アイツは屈指の実力を誇っているからな」
屈指の実力って、どんだけ強いんすか不知火さん・・・・・・。
「そ、そうだったのか、凄いやつだったんだな」
「そうだ、おれはここの職員になってから、不知火の戦いを何度か見たが、凄いもんだぞ、毎回ここの地形が変わるからな。結界の効果で元通り修復されるが、あれは圧巻だぞ。ま、他にも凄いやつは居るがね、がはは」
そう言っておっさんは梗汰の胸を叩く。
「あはは、そうなんですか」
(おい、そこはまさに火傷したとこだよ!少し痛ぇぞ!)
「そう言うお前さんもなかなかだったぞ、おれは精霊術とかよく分からんから、岩を打ち飛ばしたようにしか見えなかったが、最後のあの攻撃は良かったと思う」
「はは、それはありがとうございます」
「お前さんも頑張りしだいでは化けるかもな」
そう言って豪快に笑う。
「お前さんは体を鍛えた方がいいぞ、さっきも殴り合いのときに防戦一方だったしな。次にもし不知火と戦おうと思うなら、炎属性の左には気をつけろよ、さっきのようにまた吹き飛ぶぜ。それじゃあな」
そう言っておっさんは自分の持ち場に戻っていった。
ずいぶんと気のいいおっさんだ。
「体を鍛える、ねぇ。まぁ今はいいか、さーてここから出るかね。ん、どうしたんだサイラ?」
サイラは先ほどから黙っていて、現在も下を向いている。
「コータさん・・・・・・」
「なんだ?」
サイラは顔を上げ梗汰の服を掴んだ。
「コータさんもあそこで戦ったんですね、ヒトミさんと、それで怪我をしたんですね」
・・・・・・あ。
「訓練じゃなかったんですね」
・・・・・・やば。
「あ・・・・・・あぁ、いやでもこんな凄いのじゃなくて、もっと訓練みたいな感じのだったんだよ」
梗汰はなんとか誤魔化そうとするが。
「でも、さっきのおじさんが戦ったって言ってました!」
「わ、わるい、心配かけたくなくてさ」
サイラは服を握っている手に力を込める。
梗汰を見る目は微かに涙が見える。
「もぉー!そういうのはダメです!次からはちゃんと教えてくださいね!そしてもう危ないことをしちゃダメです!」
梗汰を心配する気持が痛いほど伝わってくる。
「ごめんよ、だからそんなに怒らないでくれ」
梗汰は必死にサイラをなだめにかかる。
サイラには心配をかけたくない。
ビリッ
「「あっ」」
サイラが梗汰の服を握ったまま振り回したせいか、梗汰の胸元は大きく破れてしまった。それはもう服と言うよりボロキレに近い。
「ご、ごめんなさい、コータさんの服を破いてしまいました・・・・・・」
「気にしなくていいよ、でも、これでほんとに服を買わないといけなくなっちゃったな」
「ごめんなさい!」
しゅんとなるサイラ。
梗汰はそのサイラの頭に手を置き軽く撫でる。
「だから気にすんなって、ほら、もう行こうぜ、お金持ってる人を探しに行こう」
梗汰は人としてアウトな発言をしながら、サイラの手を握り引っ張るようにして出口へ向う。
とりあえず王宮にでも行くかぁ。
梗汰の向かう先は王宮、はたしてそこには、梗汰にお金を恵んでくれる人がいるのだろうか。
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