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  大地の系譜 作者:Melon
18
 夜

 梗汰はアメリアから貸し与えられた部屋で、一人のんびりしていた。
 梗汰がその部屋にくるまでは、その部屋は誰にも使われておらず、目立つ家具は、タンス、ベッド位で、調度品も暮らすのに困らない程度に置いてあるだけである。
 なにより狭い、一人で過すには問題はないが、気分的にもう少し広いほうが梗汰には嬉しかった。
 そこは、王宮から近い場所にある、国の役人に貸し与えられている部屋の一つ。
 その部屋に住むのは梗汰一人である。
 現在サイラは、ニーナがこの国にしばらく滞在するということで、客人扱いのサイラは、ニーナに貸し与えられた部屋で一緒に寝泊りすることとなった。
 さすがにこの国の王の血縁ということで、ニーナには王宮にある一室が開放されたのだ。
 梗汰もこの部屋に来る前に見てきたが、梗汰の部屋とは段違いでだった。

 シャンデリアとか普通についてた。
 ベッドはお姫様とかが使いそうなイメージの天蓋つきベッドだった。
 絨毯やカーテンには金糸が使われていた。
 なによりデカイ、梗汰の部屋の十倍はある。
 そこで梗汰がアメリアに、

”なんでオレの部屋だけランクが低いんだよ!”と言ったところ、
”は?ふざけているのか?俺はお前を雇ったんだ、よって客人扱いをする必要は無い、悔しかったら、さっさとなんかで活躍して出世するんだな”と言う言葉が返ってきた。

 ごもっともな意見である。
 梗汰は反論出来ずに今ここに居ると言うわけだ。

「今日は色々あって疲れたなぁ」

 梗汰はベッドの上で寝転んでいる。

「うーん、明日はアイツのところに行かなくちゃな」

 恐らく朝一で行って待っていないと、瞳は怒るだろう。
 梗汰は今日、術師館で瞳に言われたことを思い返した。
 あいつより遅れた場合の、自分の姿を想像したくない。
 きっとつまらない小言を沢山聞かされることになるだろう。
 うぅ、考えただけでもめんどくさい・・・・・・。

「自分の情けない姿しか予想できん・・・・・・今日はもう寝るか。っておい、目覚ましねぇよ、どうしよ、っく、気合で起きるしかねーか」

 こうして梗汰は早めの眠りについた。





 梗汰が眠りについた頃、王宮の一室では。

「これはなんて言う字なんですか?」
「それは、”か”と読む」
「分かりましたー」
 
 サイラは豪奢な机で紙に字を書いていた。とても下手な字である、子供が始めて書いたような字だ。
 それを書いているサイラはとても楽しそうだ。
 熱心に何度も同じ字を書き続けている。
 現在サイラはニーナに字を習っているところだった。
 物心ついたときからの時間をほぼ一人で過してきたサイラ、村人達は、自分達が避けている人にわざわざ字を教えるような事をすることはなかった。積極的に関わらないようにしていたのである。
 そのため、サイラは日常会話には問題は無いが、字がほとんどと言っていいほど書けず、簡単な手計算もすることが出来ない。
 そして一人で暮らすことになってからは、誰かと会話もすることが無くなり、一人で生きて行くのに必要なサバイバルの知識などがどんどん増えていったのだ。
 
 アメリアの言うちゃんとした教育の第一歩が、ニーナによる個人授業だった。
 ニーナの時間が空いているときは、サイラに字や歴史、基本形さん程度の算数を教えることとなったらしい。
 梗汰は学校のようなものがあると思っていたが、さすがに無教養の人間がいきなり行っても出来ることは無い、むしろサイラを孤立させてしまうことになる。
 そこでニーナが基礎的なことを教えるため、サイラの家庭教師をすることとなったのだ。

「ニーナさんニーナさん」

 そう言ってサイラは机の上で動かしていた手を止める。

「ん?どうしたのだサイラ、また分からないところでもあったか?」
「自分の知らないことを学ぶことは、とても楽しいです!」

 生まれて初めての”勉強”と言う経験は、サイラにとってとても新鮮であり、そして自分の知らない知識が増えてゆくことが、サイラにはとても楽しく、そして嬉しかった。

「ニーナさん、ありがとうございます」

 子供のような純粋な笑顔。
 思わずニーナは目をそむける。

「あう・・・・・・き、気にするな。なんというか、私としても他人にものを教えるという事は学ぶべきことも多いと言うか、自分の知識の再確認もできるというか・・・・・・」

 ニーナは今読んでいた本をたたみ、顔に押し付けるようにして言った。
 純粋な感謝の意を向けられたニーナは照れていた。

「そ、そうだ、これをサイラにあげよう」

 そう言ってニーナが取り出したのは、一冊の留め金のついた日記帳だった。
 見た目は古く見えるが、きちんとした作りだ。

「いいんですか?」
「うむ、私が使うよりもサイラが使ったほうがこれも喜ぶだろう」

 サイラに日記帳を渡す。

「これは何に使うんですか?書き取りなら紙がありますよー」

 サイラは首を傾げながら聞く。

「それは日記帳と言ってな、それには、その日の出来事や、自分の思いを書くんだ。そして後でそれを読み返すんだ。自分の大切な人と一緒に見たりしてもいいだろう」

 思い出を書いて残せるんだ、とニーナは付け加えた。
 
「ありがとうございます!大切に使いますね!」

 サイラは目を輝かせて言う。

「うむ」

 満足そうにニーナも頷いた。

「まだ文字は全て分からないだろうから、今日の分は私が書こう、明日からは自分で書けるように頑張るんだぞ」
「はい!」

 サイラの元気な声が部屋に広がる。



 いつか読み返そう、自分の生きてきた証を。
 この日、サイラの生きる楽しみがまた一つ増えた。














 - サイラの日記 -

本日は私ことニーナが代筆をすることになった。

今日は梗汰さん達とみんなで、この国の王様と会いました。
とても綺麗な人でニーナさんに似ていました。
お二人が従姉妹どうしだと聞いてびっくりしました。
今日も新しいことが沢山あってとても楽しかったです。
梗汰さんがきてからは毎日が楽しいです。
梗汰さんには感謝しきれません。
明日もいい日になりますように。

さ いら


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