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異説 かぐや姫の物語

作者:高月水都
唐突に浮かんだ物語。
 月の都には天帝様が住んでおられ、そこには月の名を貰った妃も多くいる。

 がしゃーん

「なんていう事をしてくれたの!!」
「おっ、お許しください!!」
 十六夜の方と呼ばれる妃の所に新しく召し抱えられた女官は割れた器の前で土下座をしている。

「この器は主上がわたくしのために下さったのに!!」
 その主上――天帝がお訪ねにならなくなり早数か月。ご寵愛は別の妃の元に向かっているという事実は十六夜の方を苦しめている。

 わずかに残る思い出の品に縋っているだけの弱い立場。それ故にその思い出の品に執着をしている。

「お許しください!!」
 死をも覚悟しつつ、その女官は頭を下げる。
 声が震える。恐怖で指先が白くなる。

「…………そうね。特別に許してあげてもいいわよ」
 その女官を見てふと面白い遊びを思いついた。いや、遊びではなく。

「罰は与える。――天から追放して地上にて、わたくしと主上を楽しませる物語を紡ぎなさい」
 そう。この女官が地上の民とどんな関わりをもたらすのか。それを利用して主上を自分の所にお渡りさせてそれを眺めていたい。

「十六夜の方……」
「ある程度面白い話が出来たら呼び戻してあげるわ。そうね。無いと思うけど、もし地上に天の都にあっても見劣りしない宝物があれば、罪を早く許してあげるわ」
 その後の貴方の身分も保証しましょう。

 その言葉を最後にその女官は地上に落とされた。


「輝夜や。輝夜」
 女官は地上に落とされて、竹取の翁に拾われた。そこでなよ竹の輝夜姫という名を付けられた。
(十六夜の方は、それを面白がっておられるのだろう……)
 天帝に使える立場の女官は身分の高い家の者が多い。
 そんな自分が竹を採って生活をしている貧しい家で住んでいるのだから――。

(幸いにも実家からの仕送りは禁じられてない)
 仕送りを翁の目に止まるところにおいて、生活環境だけ整える。それで何とか、まともな生活を送れるようにしたが、
(罪を許してもらうには天の都に見劣りしない宝物を見つけ出す事……)
 そんなものはこの地上にあるのだろうか――。

「輝夜や。今から出かけてくるが、欲しい物はないかい?」
 優しく声を掛ける翁。その格好は山に行くもの。
「おじいさま。どこへ行かれるのですか…?」
 その格好で。
「輝夜も知ってるじゃろ。竹を取ってくるからな」
「竹って……そんな竹を取らなくても生活できるではありませんか」
 そんな竹を取るなんてみっともない仕事をしなくてももっと別の仕事をすればいい。それに仕送りは老夫婦が働かなくてもいいぐらいに渡したはずだ。

「輝夜はいい子じゃな。儂を心配してくれているんじゃな」
「心配なんかしてません」
 みっともないから辞めさせたいだけです。

「お金は天の神様が輝夜のために使えとお渡しになられたのじゃ。輝夜のために使うお金を儂らが貰ってはいけないじゃろ」
 そうは言っても屋敷の修繕や食事。新しい服に使ってしまったけどな。

「………」
 事実その為の仕送りだが、みっともない仕事を辞めさせたいためのものでもあるのに……。

「わたくしも行きます」
 こんな年寄りを働かせてのうのうとしているなんて後でどんな事を思われるか。

(何をしても十六夜の方のお遊びにしかならないのだ。なら年寄りをこき使うなんて悪名だけは勘弁してもらおう)
 女のくせに働くなんてと言われるかもしれないが、どっちにしても自分の精神的に楽な方を選ばせてもらおう。

 と決心したがうまくいかなかった。

 非力でコツもないので翁の足手まといにしかならなかったので、付いて行ったのは一日だけ。それでも、役に立たないといけないと判断して竹細工の作り方を婆に尋ねて作っていく。幸いにもそちらの才能は有ったので、二人にそっちの手伝いを頼まれた。

 どこか二人が安堵したように見えるのは前回の竹を取りに行くのがよほどおっかなびっくりで冷や冷やものだったからだろう。

 そんな二人にすくすくと育てられ……地上と月の都での文化の違いに戸惑い。そうして日々を過ごしているうちに月に帰るとよりもこの地に留まりたいという想いが浮かんでくる。

(十六夜の方が見てる……)
 視線を感じる。
 物語をより楽しませてほしいという魂胆がありありと出ている。そして、それは、物語だからこそ起きる事件につながった。

 自分なんて者の所に――月の都にはもっと美しい人はいる。自分は並みより少し上な程度だ――求婚者が殺到してくる。

 翁と婆――おじいさまとおばあさまはその求婚者の対応に追われて休んでいる暇もない。

「――私の欲しものを持ってきた方との結婚を考えてみます」
 心労でただでさえ高齢の二人を振り回す求婚者に腹を立て、無理難題を押し付ける。

 今思えば、この状態をキレたというのではないだろうか。

 蓬莱の球の枝。火鼠の皮衣。燕の子安貝……などなど。この世界のあるのか分からない宝物を挙げたのは月の都に居る十六夜の方に許しを得たい時に差し出したいという思惑もあっての事。

 帰りたい気持ちも薄れてきたが、あの方は自分が面白い存在としてふるまっているのをじっと見ている。

(……主上の寵愛が向いているのだろう……自分という物語を通して)
 寵愛が向いているのなら物語は続いている。

 それを感じながら、求婚者の行動を見ていると、その悲劇、喜劇はかの人を面白がらせているのだろう。

 なよ竹の輝夜姫はそんな求婚者をあざ笑って弄んでいると――。

「輝夜や。これでいいのかい?」
 おばあさまが心配して尋ねてくるが、
「私はおじいさまおばあさまを大切に思って下さる方がいいです」
 そういずれ月に帰る身分だ。

 そんなこんなでようやく諦めてくれたが、それでは面白くないからだろう。作意が感じられるというか仕込んだのかと思われるぐらいに帝が興味を持ったという噂が耳に入った。

 帝……地上での一番の権力者。
 かの方に目を付けられたらどうなるのだろうか……。

 思い出す。
 器を割ってしまった時の十六夜の方の事を。
 身分が上の方の機嫌を損ねる事がどうなるかを――。

 自分はまだいい。だけど、おじいさまとおばあさまを巻き込んでしまったら――。

 不安は杞憂に終わった。

 帝はいい方だった。

 人とは思えない自分を詮索しない。
 無理強いはしない。
 おじいさまにもおばあさまにも親切にしてくださる。

 和歌をくれた。
 花をくれた。
 貴重な紙をくださり、自分がおじいさまとおばあさまを大事にしているの知って、その二人を労わってくれる。
 先日は夏の暑さにやられたおばあさまに滋養のいいものを送ってくださった。

 素敵な方。

 素敵な……とても素敵な。

『――ホントいい方ね』
 ぞくっ
「十六夜の方……」
 庭の池。
 映し出される月。
 そこに現れるお方。

 今夜は十六夜――。

『貴方のおかげで主上がわたくしの元に毎日通ってくださっているのよ』
 喜ぶ声。
『だから、そろそろ罪を許してあげようと思うの』
 遠い声。

『物語の終わりは悲劇の方が感動するのよ』
 そう。
『想い人が出来た時に引き離される絶望って、いいわよね』
 すべてが真っ暗に閉ざされたかと思えた――。

 離れたくない。
 無理だ。

 月の住民だと話しても孫だと抱き寄せてくれる手を。
 どんどん大きくなる不気味な子供であった自分を愛してくれたぬくもりを。

 手放さない。そんな決意を込めて手を打とうとしてくれる二人。そして、帝。

 無理なのに。
 不可能なのに。それでも努力してくれる方々。

 もういい。
 だから、天に逆らわないでくれればいい。


 優しい方達だった。
 天の意向に背いて自分を守ろうとしてくださった。

 天帝はそんな地上の者が面白かったのだろう最後に置き土産という形で不老不死の妙薬を渡した。

 そして、自分は。

「―――」
 心をここに置いて行った。


 月の都に帰って女官としての生活。
 その名誉ある地位に戻れた事を誇ればいいのにどうして自分は地上を見て、目が潤むのだろうか………?
正直、バットエンド。
因みに不老不死の妙薬を渡して、この話の続編を天帝は希望していたけど、結果は……。

天帝「悲劇の方が感動するだろう?」
十六夜の方のその後は察してください。

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