第五話:嵐のような男
広い城の中はまるで迷路のようだ。
少し迷ってしまったが、なんとか部屋に戻って来るとそこにはエリザが待っていた。
「お疲れ様です」
「うん。疲れたーもうクタクタ」
エリザとは3日間共に過ごす内に歳も近かったこともありすぐに打ち解けた。
今まで過ごしてきて、ここの城にはホントに人が居ないという事が判明した。
エリザにあまりにも人に会わないので、ここには何人の人がいるのかと尋ねたら、こんな広い城に10人程度しかいないという答えが返ってきた。
しかもその中で女はエリザとアンナの2人だけ。
アンナとは昨日食事を運んできた時に会った。
私より1つ年上の気さくなお姉さんだった。
「ご飯の用意しときましたから食べてくださいね」
「ありがとう」
「にしても今日は大変だったみたいですね」
着替えも終わり、さあご飯を食べるかという所で、エリザが向かいの椅子へ座り言い出した。
「そうよ…何だか知らないけど大軍でやって来て…でもここは会社だと思って対応してやったわ」
「…かいしゃ?」
その意味がわからなかったのかキョトンとした顔でエリザは聞いてきた。
そうか…ここでは会社って言う単語はないのね…
「あぁ、人間界では働く所の事を会社って言うのよ」
「そうなんですかーへぇー」
感心したのか大きく首をコクコクと縦に振っている。
そんなに感心されるとあれだな…なんだか頭がよくなった気分だ
「そうよ。おかげで剣で切りかかって来ようとしたから、男の癖に女に剣を上げるなんて恥ずかしくないのかって言ったら、なぜか大人しく帰って行ったけど…」
「なんだか男らしくないですね…」
「全くだわ…でさ、その人しょっちゅうやって来てるって聞いたけど、ホントなの?」
「そうですね〜だいたい3、4日に1度の割合でいらっしゃってますね」
「はぁ?そんなに頻繁にやって来てるの?」
「はい。なので、対応にとても困っていたんです。この城には人がいない上に、ギル様もセルロス様も皆忙しい身ですから…」
そっかぁ…それで門番が必要だったわけね…でもさ、女の私が門番って危なくない?
そう言うのって男がやるべきだと思うんだけど…
まぁ、これから先怪我でも負った場合は仕事変えてもらえばいいか…
などとのん気なことを考えて居ると、エリザが急に立ち上がった。
「エリザ?どうしたの?」
「あっ!すいません。用事があったの思い出して…」
「用事?」
「はい。申し訳ないんですけど、その食器台所へ片しておいてくれませんか?」
「え、えぇ…良いわよ…」
「すいませんが、よろしくお願いします。では、これで失礼します」
相当急いでいるのか、エリザは軽く一礼をすると部屋を飛び出しバタバタと足音を響かせて去って行ってしまった。
私はというと、残された食器を台所へと持って行くようにと言われ、エリザが部屋を出て行った後、はて?台所は何処なのかと真剣に悩んだ。
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いつまでも悩んでいても仕方ないと、取り合えず食器を持って部屋を出てみたものの、早速迷ってしまったようだ。
しかも、帰る道すら分からないという状況に私は追い込まれていた。
もう!!なんなの!?台所はどこよ!?この城広すぎだし道を聞こうにも誰もいないじゃない!!
「もーー!どこなのよーここは…」
ぼそりと呟いて、つきあたりを右に曲がった時だった。
「きゃ!!」
ドンッ!ガシャン!!
いきなり出現した人に出会い頭にぶつかってしまい、その勢いで食器を床へ落とし、しりもち付いてしまった。
「ーーーっつ…いたた」
「なんだよ、大丈夫か?」
尻餅をついたせいで痛みに顔を歪ませていると、聞いたことのない声が上から降ってきた。
「えっ?」
ちょっとビックリして顔を上げると、なんだかガタイのいい兄ちゃんが立っていて、手を差し伸べている。
折角差し出してくれた手を拒むのも気が引けてその手を掴むと私を立たせてくれた。
「ん?お前見ない顔だな?新入りか?」
「え、えぇ。3日ほど前から門番として働いています」
「あぁ…お前か。新しく門番になったって言う女は」
なんだかじろじろ全身を見られて、私はムスッとした。
「はい。初めまして、染谷夏輝といいます」
「ふーん、夏輝って言うのか…オレはデイルって言うんだ。よろしくな!!」
ムスッとした私とは対照的に、二カッと白い歯を見せて笑うこの人はセルロスにこの間教えてもらったデイルだということが判明。
とりあえず、かろうじて割れなかった食器を一緒に拾ってもらい、台所まで案内を頼むと心良く引き受けてくれた。
この人がデイルさんね……案外良い奴なのかも…。
「こっちだ。早く着いて来いよ!」
「あ、はい」
そう言って歩き出したデイルに着いていく。
「なぁ、夏輝は人間界から来たんだろ?」
「まぁ…無理やりですけど…」
「俺さ人間界って行った事無いんだ。どんな所なんだ?」
どんな所かって聞かれても…
「うーん、一言じゃ…ちょっと言えないですねぇ…」
「そっか。まぁいいや」
いいんかい!!
なんだか前向きなのか何だか良くわかんない人だな…
そんな事を思いながら、またしても迷路のような廊下を突き進み、デイルのおかげで何とか台所にたどり着いた。
「台所はここ」
「いやぁーホント助かりました」
「まだ慣れてないんじゃ、迷っちまうのもしょうがねーよな。じゃ、俺まだ仕事残ってるからよ…またな!」
「あっ!はい。あり…」
「ありがとうございました」と言おうと思ったのだが、その前にデイルは片手を上げると、来た道を走って去って行ってしまった。
お礼言いたかったのになぁ…ま、いっか。
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