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魔王城の門番
作:水城朱音



第二話:横暴な奴でも仮にも王様


「う…ん…」

何だかずいぶんと背中が痛い…
この感触はどう考えてもベットじゃない…段々意識がハッキリしてきたようだ…
てことは…ここは…えーと何処かしら?

なんだか物凄い嫌な予感がして中々目が開けられない。

まずは勇気を出して片目をゆっくり開けてみる。

うん?片目に見えたのは綺麗な顔をした男。
急いで目をつぶって考える。

この男には見覚えがあるぞ。そう会社の帰り道に現れた変質者。

そう…

「変質者!!」

私は急いで起き上がって尻餅をついたまま後ずさり、人差し指を男に向ける。
変質者呼ばわりが気に食わなかったのか男は顔を顰め立ち上がる。

「いきなり起き上がったと思ったらなんだ…我は変質者などと言うものではない」
「じゃ、じゃあ一体あんた何なのよ!?」
「我は魔界の王。ギルだ。覚えておけ」
「……」

コイツが王様!?あ、頭が痛い…なんだか現実逃避をしたくなってきた…
魔界に…、王様に…もう頭の中はめちゃくちゃだ。

「とにかくこんな所にいても仕方ない。さっさと城に帰るぞ」
「し、城?」

なに!?城なんてものまであるのか?なんちゅーファンタジックな世界!!

「なんだ。そなた、城も知らないのか?」
「城ぐらい知ってます!!」
「じゃあ何も問題ないな。いいから我に掴まれ」
「え?ど、どうするんです?」
「もちろん飛んでいくに決まっている」
「へ?ちょっ…!?」

そう言うとギルは突然背中から真っ黒な羽を出すと私を抱えて地面を蹴飛ばす。
驚いて、目を見開き下を見れば、すでに地面は遥か遠く。
物凄い速さで周りの景色が流れていく。

「と、飛んでるわ!!」
「そなた今更何を言っている?飛ぶといったであろう?」
「だ、だって…」
「まぁよい。城はすぐそこだ。少し黙って捕まっていろ」

一言でも言い返してやろうかと思ったが、この人は一応これでも悪魔なのだ。ここは大人しく黙っていたほうが賢明だろう…

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「で?いきなり帰ってきたと思ったらその方は誰です?」

あっという間に城らしきものが見えてきて、屋上のような所に降り立った所でまたしても美形な男が現れた。

彼は呆れた顔をしてギルと私を交互に見ている。

「ちょっと人間界へ行って連れて来た」

なんだかちょっとそこらへんに行って買い物でもして来た様な言い方だな…

「はぁ…、この忙しい時に…一体何を為さっているのです?」
「だから、コイツに働いてもらおうと連れて来た」

は?今この人なんとおっしゃった!?は、働いてもらう!?
ほら、そこの人も何言ってんだ?って顔をしてるぞ!

「とにかく俺は疲れた。少し休むからコイツに仕事を与えといてくれ」
「で、ですがっ…!!」

お、おい!連れて来るだけ連れてきといて後は人任せかよ!?この人だっていきなり言われて困っちゃってんじゃん!
いくら横暴な奴でも仮にも王様。そんな事を口に出しでもしたら後が怖いので心の中で毒つく。

私が困っておろおろしているのにも気づかない様子でギルはマントを翻すとさっさと城の中へ消えていってしまった。

残されたのは名前も知らない魔族の男と人間の女。

チラッと彼の顔を見れば目が合った。とりあえず口に笑みを浮かべとく事にした。
心の中でどんなに悪態をついていても顔には出さない。それが仕事をする上での今までの鉄則。
そんな薄笑いを浮かべる私を見て、魔族の男は大きなため息を吐いたのだった。










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