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魔王城の門番
作:水城朱音



第十三話:閑話(セルロス)


どうも。セルロスと申します。

今日はちょっと僕がお話したいと思います。

先日、ギル様はちょっと出かけてくると言って忽然と居なくなってしまい、ちょっとした騒ぎになったんです。

まったくあの人は責任感というのが少し足りない所がありまして…、度々困っているんですよね。
城中の人間(って言っても10人程度しか居ないんですけど…)で散々探し回った結果、人間界に居る事がわかり安心したのも束の間、今度は女性なんかを連れて帰ってきちゃったんですよ?信じられます?

ある意味女性嫌いのギル様が…、しかも人間界の人間を連れてくるなんて、僕は夢でも見てるんじゃないかと思いましたよ。

その上、何を考えてるんだかあのアホ主人ときたら、夏樹さんという方連れて来るだけ連れてきといて後は私に押し付けて門番なんかに任命するから伝えとけだなんて…

いくら人手不足って言ったってそりゃ無いだろうと。これでも猛反対したんですよ!?

まぁ、一度言い出したら聞かない人ですから諦めましたけど。

そうそう、最近またしても不穏な動きを見せている輩が居まして、注意をしているんですけどね?
ギル様に報告しようと思ってたその日にいなくなってしまってなんとタイミングの悪い事。
そんな事知らないギル様が夏樹さんを連れて来てしまった事はまぁ、仕方ないんですが危険極まりないじゃないですか?
もう少し早くこの事を報告していればこんな事態にならなかったのではと後悔ばかり。

僕は関係の無い夏樹さんの身の安全を考えに考えて、夏樹さんをギル様の花嫁にしてしまったら良いのではないかと思いついたんです。
そうすれば奴らは簡単に手を出してこないはず。
この提案いい考えだと思いませんか?
だからギル様に何度も言ってるんですけど聞く耳持たずな状態で…。

大体、全く女性に興味の無かったギル様がわざわざ連れて帰って来るぐらいだからその気になってくれるんじゃないかと思っていたのに…。

「はぁ……」
「なんだ、ため息なんか付いて」

目の前で書類に判子を押していたギルは不意に聞こえたため息に視線を上げた。

「いえ…すいません。何でもありません」

おっと。今は仕事中だということを忘れかけてしまった。危ない危ない。

「後は、こっちのに判子押せば良いのか?」
「……」

ってこの人のことでなんで僕が悩まなきゃならないのさ…あーむかつく!

「おい、セルロス聞いているのか?」
「へっ!?」
「だぁから、ここに判子押せば終わりかと聞いたんだが?」
「えっ!あっ…はい」
「お前らしくないな。人の話を聞いてないなんて」
「すいません」

上の空になっちゃう原因もため息を付きたくなってしまうのもこの人のせいなのだが、ここは素直に謝っておいたほうが良いだろう。

「そういえば、何か報告が有ると聞いたが?」
「はい。先日ギル様が人間界へ行ってしまわれた日に判明したのですが、どうやらサミュエルを崇拝していた残党が何やら不穏な動きを見せていまして…」
「…それは本当か?」
「えぇ。まだ詳しい事は分かりませんが…恐らく…」
「そうか…ハッキリした事が分からない以上手の打ちようがないな」

ギルはそう言うと腕を組んで何かを考え込むように黙り込んでしまった。
しばらく黙って様子を伺っていると、ギルは口を開いた。

「セルロス、明後日にでもアンドラの所へ行って意見を伺って来てくれ」
「魔女様の所にですか?」
「彼女なら何かしら掴んでいるはずだしな」
「…確かにその通りかもしれませんね」
「あぁ。よろしく頼む」
「いいですけど僕の留守中、くれぐれも執務はサボらないで下さいよ!」

いつも人の隙を狙って執務をサボろうとするんだから…




――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


2日後、セルロスは魔女の館へとやって来た。
大きな門を前にセルロスはため息を吐く。
魔女様は100歳を超える方で、大きな戦争の時など色々な場面で何度もお世話になっているはずなのだがセルロスは何故か未だにこの魔女様が苦手だった。

館の侍女に案内されて連れて来られた部屋で出されたお茶を飲みながら魔女様を待っていると、廊下に人の気配がして次に部屋の扉が開いた。
どうやら魔女様がお出ましになったようだ。

「おや。待たせたようだね」

そういうと魔女のアンドラは杖をつきながらセルロスの傍へやってくるとクシャクシャな顔を向けて笑った。

「いえ。そんなには待ってませんので」

アンドラに椅子に座るように促し、自分も椅子へ座ると早速ここへ来た理由を言いおうとするとアンドラは片手を挙げてそれを制した。

「セルロス…わたしゃぁあんたがここへ来る事も今何が起きているのかも知っておる」

なんとなくこの人は分かっているのだろうと思ってはいたが、それを面と向って言われてしまい、セルロスは少し動揺したが平静を装った。

「やはり、そうではないかとは思っておりました」
「まぁ、残党のやつらもあんたらの動きにはまだ気が付いておらん。だからといって油断大敵じゃよ?…しかし奴等も懲りんのぉ」
「で、その残党の筆頭となっているのは誰なのです?」
「……恐らく、ジェーンが筆頭となって仲間を集めサミュエルを地下からの逃し、今度こそギルの命を狙おうとしておる」
「ジ、ジェーンが!?」

その名を聞いた途端セルロスは目を見開き立ち上がった。
椅子がガタリと音を立てて動き、動揺を隠し切れないようで顔を真っ赤にしているセルロスに対してアンドラは平然としている。

「まぁ、あんたにとってはつらい話かも知れないが…」
「でも!あいつは…」
「そうじゃ。この間のサミュエルの件でリークしてきた張本人。そしてあんたの友人の一人じゃったな。だがこれは事実じゃ」
「そ…そんな…」

ジェーンは小さい頃から兄弟のように育ってきた幼馴染だ。
誰よりもジョニーの事を知っているだけに信じられない。
ショックが大きすぎて手のひらで頭を抱えて椅子に座り込んでしまった僕にアンドラは黙って傍にいてくれるのかと思いきや、今度は別の話を切り出してきた。

お陰で、ジェーンの事を深く考えていられなくなった。

「ところでセルロス、あんた他にも悩みがあるんじゃないかね?」

悩みだって?そんなものいっぱいある…

「は?えーっと、まぁ…」
「ふふーん、さては最近城にやって来た人間の事じゃろう?」
「そんな事も知ってるんですか!?」
「当たり前じゃ!私を誰だと思っておる!」

あぁ…この人には隠し事はできないのだろうか?こうやってズバズバと心の中を当てられるというのがあるから、セルロスはこの人が苦手なのだ。

「わたしゃ、あのギルが女を連れてくるとは…面白い事をしてくれたと思っとったんじゃがなぁ」
「お、面白くともなんともありませんよ!!魔族ならまだいいんです。人間ですよ!?人間!!」
「まぁまぁ、セルロス落ち着きなさい」
「これが落ち着いていられますか!」
「しかしまぁギルは自分の気持ちにゃぁ気が付いておらん」
「は?どういう…」
「これからが楽しみじゃ!」
「え?ちょっ!なにが楽しみなんですか?教えてくださいよ!!」
「教えたら面白くないじゃろ?まぁ、自分で考えな」

そう言うとアンドラは立ち上がると部屋を出て行った。
「はぁぁ?」と一人取り残されてしまったセルロスは頭を捻った。


更新が滞ってしまってすいませんでした。
プライベートな事で色々忙しくパソコンから遠ざかっておりました。
これからはちょくちょく更新できるか分かりませんが、頑張りますので応援していただけると嬉しいです。






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