029:02/ほおずきみたいに紅い魂
赤瀬凪人
移動速度:☆☆
攻撃範囲:☆☆☆
攻撃力:☆☆
こんな感じの性能
木々の間を駆ける。
手の甲に描かれた緋の図式から、緑色の宝石の様な弾が放たれる。妖精達の弾幕に触れても掻き消えない宝石の輝きは、その行く道を阻む者を許さない。
体内の気を細かく振動させ身体に書いた『結界』を常時展開させる通常弾幕。触れられずとも弾幕を打てる便利な仕様になったが、中々当てるのが難しい。
そんな数打ちゃ当たれな弾幕を、メイド服を着た妖精に向ける。躱される事は無いが、何発か当てないと沈んでくれないのは辛い。
頭の中でリズムを刻みながら走る。走る。走る。弾幕をナイフで弾きながら、カウンターで弾幕を浴びせる。
即興にしては妖精相手に良く利く。クナイのような連続弾は逃げるしか無いが、それでも敵が減るのは良い。
「敵、か……」
少しばかり、変な気持ちになる。自分の勝手な事情で相手に喧嘩を売っているだなんて、普段なら有り得ない。そも、暴力沙汰は嫌いだ。
それなのに、まさか自分が、他人の為に何かをするだなんて。幻想入りした良心でも戻って来たのだろうか。全く。
「――――三倍速!」
スプリングの様に足の裏から出ていた風が、瞬間的に暴風と化す。身体のあちこちに弾幕が突き刺さるが、このまま妖精とじゃれ合っていたら埒があかない。
痛みを介している暇は無いとばかりに飛び続ける。倒せない妖精も増え、背後から迫る弾幕の密度も上がっていく。
湖畔の森を抜けると、見覚えのある道に出た。何時の日か紅さんと通った、紅い館へと続く道だ。
「…………」
あの人は門番。僕は侵入者。とすれば激突するのは必至。出来ればあの人と争うのは避けたいが、そんな事思おうが無駄だ。
精々気を引き締めてお相手しますかね。そんな事を思いながら、道なりに走っていると、
「よぉ」
と、頭上から。少女の様な声を掛けられた。
「お前もこの先に用があるのか、それとも妖精に追われてるだけか?」
見上げてみる……必要も無く、僕の右隣にまで高度を下げたソレ。
黒い帽子に白黒エプロンドレス、金髪ホウキと来ればもうまんま過ぎる。
「空飛ぶ魔女か」
「惜しい。魔法使いだ」
「それじゃ、訂正させて貰おう。空飛ぶ魔法使いか」
前に後ろに弾幕が飛び交う中、こう話すと言うのは何とも言えない。どっちも常識のネジが外れてなきゃ出来ないだろう。
「空飛ぶにこだわるんだな。ここいらじゃあ飛ぶのは珍しく無いぜ?」
「そうだろうよ。後ろにいる奴らは総じて地に足がついてない」
「それは違いない」
軽く笑いあい、跳躍。目の前に迫っていた妖精を踏み、踏み、ホウキに乗る。
ふむ。少しばかりハイになってるのかもしれない。自分にしては珍しく能動的だ。
「タダ乗りは感心しないな」
「失敬。コレを料金代わりでどうだ」
左手の魔法書を投げ渡す。
「……湿気てるぞ、コレ」
「そこは多目に見てくれると助かる」
はぁ、と金髪少女の溜め息が聞こえた。魔法書が無くても法皇のタロットがあれば問題無い。盾代わりにしようかと思ったのだが。
「仕方無いな。足りない分はツケて置くぜ!」
そう答えた空飛ぶ魔法使い。前方に構えいた手――――正確にはそこに握られていたモノが光り、
魔符「スターダストレヴァリエ」
確かに、星が見えた。
八方に散らされる三色の弾幕。子供が夜空に描く様な星屑が、そこかしこの妖精を吹き飛ばしていく。
宣誓されたモノは確かにスペルカード。だがそれは、フランドールの様な長々と続くものでは無い。花火の輝きの如く、一瞬で中空へ消えていく。
「改めて、自己紹介だ」
まるで、人間である事を示すかの様に。
「普通の魔法使い、霧雨魔理沙。お前は?」
「――――神主兼魔法使い、赤瀬凪人だ」
圧倒されそうな弾幕の明かりに照らされた少女に、そう零していた。
紅魔郷normalがクリア出来ない。せめて咲夜さんまで行きたい