前編:真夏の夜の夢
ブゥンブーン
けたたましいバイクの音がする。黒い特攻服に身をつつんだ若き少年たちが何人も鉄の馬にまたがり,暴走している。
ここ,青海町では,1ヶ月前に強力な暴走族,爆鬼天と呼ばれる集団ができた。これは,その族の物語である。
時期は現在8月である。太陽がサンサンと照りつける猛暑の季節。
このできてまもない暴走族にはとある問題があった。ちょうど同時期に隣町,宝美町にできた暴走族,白龍爆走連合,通称白龍と勢力争いをしていると言う事だ。できてすぐに勢力争いだなんて・・・・。
そんな中、土曜日の爆鬼天の集会でのことである。
「みんな,あつまったか?」
総長,湯水がみんなに声をかける。
「あきらたちがまだきてやせん」
「そうか・・・」
いつものような会話をし集会をしていると突然1人の男が飛び込んできた。
「総長,大変です。あきらたちが,東のゲーセンで遊んでいたら,白龍のやつらが攻めてきてやられてしまいました!」
あきらとは?
爆鬼天の副リーダ格の男で,そのつれ3名とゲーセンに行っていたところ,白龍にボコされたのであった。
「あきらは,どうした?」
心配そうに総長が聞くと,
「つかまって,今頃ケジメかと・・・」
「よし!助けに行くぞコラァ!」
掛け声とともにいっせいにバイクにまたがる爆鬼天の連中・・・。集会所からさほど遠くないゲーセンに向かった。
ゲーセンの駐車場には,白い特攻服を着て,バイクに龍の旗を掲げた連中がいた。白龍だ!
その中に黒い服をきた人間が4人ほど正座させられている。敵の数は約15人・・・かなりの数である。
しかし、湯水もその手下たちもビビルことなく近くまでバイクで接近し、
「かこめぇ!!」
湯水の言葉にそれに続く暴走族たちが白い特攻服をきた男たちのまわりをグルグルまわりながら,たまにヤンキーホン(ラッパ)を鳴らしたり,木刀でつついたりして戦闘が開始された。
「あぁ?なんだ?おめぇーら!」
白龍のやつらの質問に総長は
「爆鬼天じゃ!ボケェ!」
そう、どなり声をだすとバイクを止め堂々と地面に降り立つ。
「俺の仲間を帰してもらおうか?さもねぇーとおめーら!ぶっ殺すぞ!」
ニヤニヤと笑いながら白龍の1人が
「そりゃあおもしれぇ! やってみな!」
その言葉で完璧な戦闘が行われた。木刀、バッド、鉄パイプ、火炎瓶など様々な武器が使用された・・・駐車場は戦場と化した。
月が出る時間、爆鬼天はバイクにまたがり道路を走っていた。時折聞いたこと有るようなメロディーのラッパ音をヤンキーホンで鳴らしながら。
パラリパラ、パラリパラ パラリラッタラ
ヤンキー関係者は知っていた。この音楽が爆鬼天の勝利を告げる音楽だと。
ゲーセンの駐車場で行われた激しい戦闘は爆鬼天のみごとな勝利に終わった。総長の湯水の喧嘩の腕はたいしたもので、相手がいくら武器を持っていようとすべて素手で倒してきた・・・・
当然、族のみんなからも尊敬の眼差しでみられていた。
しかし、
あの戦いから4日がすぎたあくる日に湯水は突如として病院に運ばれた。あきら等の複数のメンバーが病院に駆けつけた。
「総長、どうしたんすか?なにがあったんすか?」
心配そうに自分を眺めるメンバーたちに湯水は言った。
「すまない・・・麻里がつかまってしまって・・・俺だけで助けに行ったんだがかなわなかったよ。」
麻里とは?
総長、湯水の愛しの人。つまり彼女である。性分はギャルだが優しくメンバーのみんなからも理想の女性と言われるほど美人だった。その麻里は2日ほど前に白龍につかまって宝美町につれていかれたというわけである。湯水は自分1人で助けに行ったが、しくじったのだった・・・
「そんな・・・じゃあ俺らが行きます。俺らが総長の仇とってきます!」
そう言ってダッシュで出て行こうとするメンバーに湯水は
「だめだ!行くんじゃない!あいつが・・・あいつが白龍と手を組んでる。」
「だれです?」
すると、湯水は大きく深呼吸すると・・・
「蛇だ・・・・」
そうゆっくり言うとクタリと横になり寝てしまった。
蛇・・・聞いただけでぞっとする。この近辺最強の暴走族、”華亜悪”の総長で喧嘩で右にでるものはいないといわれている。彼に目をつけられたらおしまいとまで言われている。本名、中川裕也である。
その言葉を聞いて、他のヤンキーたち立ち尽くした。勝てるわけがねぇ・・・そう思ったのだろう。
総長はくやしさのあまり涙もながせないでいた。愛するものと、愛するチームがもうすぐ消えてなくなるかもしれないのだ・・・
真夏の夜の夢はそうして始まった。
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