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私は佐藤くんのことが好きです

 恋を知りました。それはもう、突然も突然に。ぴきーんと来たんです。ホント、それは唐突に、何の脈絡も無く、そして一瞬の内の出来事。世界が一瞬止まって、私だけが動いていました。恋って、こんな登場の仕方なんですね。ええ、初めて知りましたよ。
 それは、佐藤くんと偶々廊下ですれ違って、この瞳に佐藤くんの姿を初めて映した時……ではありませんよ。何言ってるんですか。私がそんな、一目惚れするようなタイプの女に見えますか? ……見えるんですか。遺憾の意を示しておきましょう。私はそんな軽い女じゃないですよ。軽井沢な女です。
 ごめんさい、嘘を吐きました。私は軽井沢な女でもありません。そちらの非に託けて、ちょっとくらい見栄を張っても良いかなと思ってしまいました。陳謝します。これでお相子にしましょう。
 話を戻します。
 私が恋を知ったのは……言い方が面倒くさいですね。普通に言います。
 私が佐藤くんのことを好きになったのは、佐藤くんを初めて見た時でもなく、あるいは佐藤くんが体育のバスケットボールの時間で試合中に綺麗なリューキンを決めてみせた時でもなく、はたまた休み時間に窓際の席で「競売ナンバー49の叫び」をクールな表情で愉しんでいた時でもないです。
 佐藤くんが机に突っ伏して、腕を枕の代わりにして、本当に気持ちよさそうに寝ているその姿を見て、私はぴきーんと来ました。頭に電撃が撃ち込まれたんように。
 そんなことで、と言いたいのでしょうが、実際そうなのだから仕方がないじゃないですか。私はその姿に恋をしたんです。ふざけてなんかいませんよ。大真面目です。豚さんが一秒で地球を七週半飛べちゃうくらい真面目です。
 兎にも角にも、私はその時の佐藤くんの姿を見て恋に落ちました。フリーフォールが如く落ちて行きました。急落下という言い方では物足りないくらいの速さです。
 あれ程魅力的な寝姿を、私はついぞ見たことが有りません。寝るだけで人はここまで輝けるものなのかと、びっくり仰天しましたよ。仰天したあまり、椅子からも落ちました。尻餅というやつです。お尻が痛かったですよ。
 それは置いといて。
 あの時、私は考えました。もしも許されるのであれば、あの隣の席にドカンと陣取って、佐藤くんのあの寝姿を一生見ていたい、と。息をする度に揺れる体とか、もう、愛くるしくて愛くるしくて。こちらの息が詰まりそうになりましたよ。
 何だったら私、今から美術部に入部して、佐藤くんにはあの時の寝方をもう一度してもらって、その絵を描いてもいいですよ。もしくは写真部に入って、その姿のベストな写真を撮る術を学んできてもいいですね。
 そうしたらもう、国宝認定間違いナシですよ。ニュースになっちゃいますよ。テレビに出れちゃいますよ。
 あの時の風景、今思い出しても素敵だなあ。素敵滅法素敵滅法。素敵滅法、という言葉が誕生したのは全てあの瞬間の為なんですよ、きっと。大袈裟なんかじゃないですって。佐藤くんには自覚が無いのかもしれませんが、本当に、あの時の寝姿は偉大なる魅力を秘めていました。
 ……ええ、そうですとも。
 ……え、結局趣旨は何だったのか、ですって?
 もう、しょうがないですね、それならもう一度言いますよ。

 私は佐藤くんのことが好きです。良かったら、私と付き合ってください。

 ……本当ですか! やったー。私達、カップルですよ。彼氏彼女の関係ですよ。付き合いたてほやほやの、今世界で一番新しいペアですよ。
 どうです? これって、本当に素晴らしいことだと思いません?
 こんな告白の仕方をする人間は居るのだろうか。

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