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艦魂・神龍編シリーズ

護衛戦艦『神龍』 〜その想いをさがして〜

作者: 伊東椋

本作品【護衛戦艦『神龍』 〜護りたいものがそこにある〜 】が完結して一週間程度が経ちました。…ということで黒鉄先生に続いての外伝版本格的始動ですっ!

…と言っても実は外伝の一作目は既に執筆投稿してたんですよね。長門の話……。

というわけでこの作品は外伝二作目となりますね。そして私の艦魂作品三作目ということです。

今回は本作品のメインヒロインである神龍の誕生から呉への回航までの物語です。

相変わらず見苦しい点が多々あるとは思いますが温かい目で見守ってください。

では、どうぞご覧ください。

           願いは叶う

        ずっとあなたと会うことに

      あなたに会うため百色の詩を奏でよう



                sovereignty of fear natumegumi.



                ●




 ある一隻の巨大艦の建造が開始された。

 それは戦艦から変わった、航空機と航空母艦が海軍兵力の主力となった当時の時代にとってはかけがえの無い戦力―――航空母艦の建造だった。

 戦局の変化に伴って大和型三番艦『信濃しなの』が戦艦から航空母艦に改造された同じ時期、ともにもう一隻の航空母艦が建造されていた。

 横須賀海軍工廠でともに建造された二隻の中で、一番最初に完成したのが『信濃』だった。莫大な費用をかけて生まれた一隻の世界一の巨大さを持つ航空母艦『信濃』は機密保持のためにひっそりと祝されて誕生した。

 やがて『信濃』は航空機ではなく特攻機『桜花』を貨物として積み込み、横須賀港を出港して呉海軍工廠へ回航するために大海原に出た。

 しかし『信濃』は不運にも回航途中に敵潜水艦に発見され、護衛の駆逐艦『雪風』『磯風』『浜風』の三隻が同行していたにも関わらず、魚雷攻撃によって撃沈された。就役から十日という短すぎる生涯を終えた『信濃』はこれからの戦局に重要な航空母艦でありながらいとも簡単にその身を海中深くに没することとなったのだ。

 『信濃』沈没の報が出港地である横須賀に伝わり、横須賀海軍工廠は動揺した。完成間近の一隻も戦局に重要なはずの航空母艦として日本海軍に加わり、沈んだ『信濃』と同じく呉に回航するはずだったのだ。

 それが理由かどうかはわからないが、『信濃』沈没から間もないある日、横須賀海軍工廠は完成間近だった一隻の航空母艦を戦艦に変更という命令を言い渡された。

 今は航空機と航空母艦の時代であり、大艦巨砲主義の時代はとっくに終わっている。だからこそ先に沈んだ『信濃』も建造当初の戦艦からわざわざ航空母艦に変えたのだ。

 その『信濃』があっけなく沈み、だからといって何故戦艦などという前時代的なものに戻してしまうのか横須賀海軍工廠は理解できなかった。

 しかしそれはただの戦艦ではないことが加えて言い渡された。

 横須賀海軍工廠はそれを聞いてまた理解できなかったが、やがてそれが普通の戦艦とは違うということに動かされ、命令通りにその航空母艦を特殊というべき戦艦に急遽建造を変更することになった。

 そしてさらに同時期に姉妹艦『天龍てんりゅう』が試験的に新型電子兵装を搭載することによって、姉妹艦より一年半早くも竣工されることとなった(そのため『天龍』は終戦時までに完成に間に合わず、後に海自艦『てんりゅう』として生まれ変わることとなる)(さらに言えば『天龍』という名は既に軽巡洋艦『天龍』が存在したがこの時点でそれは沈んでしまっている)

 それはただの戦艦ではない―――護衛戦艦。

 一見普通の戦艦とは変わらない。『長門』や『大和』のような巨人艦で、大艦巨砲主義が完璧に誇示されているような主砲を装備している。

 しかしそれはまた今の時代に対応した部分もあった。

 対空兵装と防御を重視したその身は『大和』などとは一味違い、性能自体も大きく上回っていた。この時点では時代に適応しようという試みが見られていた。

 その大艦巨砲主義を思わせる主砲は同時に現時代の考えも思わせていた。何故ならその主砲には対空新兵器という秘密兵器が極秘開発されてその艦限定に搭載されたのだ。それは正に大艦巨砲主義が航空機を打ち破り、乗っ取ってしまうといった感じのものだった。

 航空母艦から対空と防御に重視された特殊戦艦――護衛戦艦として生まれたその戦艦。

 名を―――『神龍しんりゅう』と呼ばれた。

 『神』と『龍』。まるで龍の形をしている日本列島。そして神州という神の国として信じて疑わない日本という国の希望が託されたたった一隻の特別な戦艦としてはふさわしい名前だった。

 『大和』とは別に正しく日本を表したような名前だという声もある。

 こうして護衛戦艦『神龍』は誰にも大々的に祝されずにひっそりと誕生したのだった。


 『信濃』でもそうだったが、このような戦艦や空母は極秘の上のクラスである軍極秘という名目で極秘裏に建造、完成され、起工式や進水式、就役のときも、誰にも知られずにひっそりとするしかなかったのだ。

 それは極秘裏に開発された『大和』や『武蔵』も同じだった。

 そして、『神龍』も―――

 

 全長270メートルほどの巨大ドッグ。射しこむ光は微かにしか無く、中は暗い雰囲気にあった。

 微かに射しこまれた光の中で空中に舞うチリが白く浮かんでいた。人一人居ない寂しい空間にはなにもない。

 いや、巨大すぎる山が闇と同化していたために気付かなかった。確かにそれはあった。

 そして佇む山に、一人の人影があった。

 それは少女。

 長く黒い髪が僅かな光に浮かんだ舞い散るチリと一緒にきらきらと輝き、黒くて丸い瞳が闇の先の上を仰いでいた。

 僅かに射しこむ光。その先にはその光の根源である太陽があり、そして太陽があるということは青空があるはずだ。どこまでも無限に続く青空が。

 自分はそれらをまだ見たことがない。この僅かに射しこむ光が発する眩しい太陽と無限に広がる蒼い空なんて実際に知らない。だけど知識としては知っている。ただそれだけだ。

 僅かに光が射す天井を見上げてから、不意に寂しげな瞳を下げた。

 寂しげな瞳――それが少女の常の瞳だった。

 生まれてから孤独にただ生きてきた。自分はいつ外の世界に出られるのだろうか。

 こういう空間は自然と人の心を無気力にさせる。そして孤独感が沸く。

 「(……みんな生まれるときって、こんなに寂しいものなのかな…)」

 自分は護衛戦艦。軍極秘という名目で極秘裏に建造され、そして生まれてからもひっそりと存在を隠されるようにして過ごしている。

 その艦種の名前にある誇りに気付くのは、まだ先のことだ。

 戦況が悪化の一途を辿る戦争。今も海のどこかで自分と同じ少女たちが敵と戦っている。

 自分もいつかはここを出て戦場に赴くことになる。

 その時まで―――ここで過ごさなければならない。

 突然、扉が開いた。

 開かれた外の世界に繋がる光の中をくぐり、少女の艦体からだは着水した。

 陰湿で孤独だったドッグから出て、初めて外に出た少女を迎えたのは待ち望んでいた青空と暖かな光。

 護衛戦艦『神龍』――そしてその艦魂、神龍は生まれて初めて外の世界に出て、全ての物語がここから始まったのだった。

 


 初めて外の世界に出た日の夜、満天の星空のもとで神龍の歓迎会が開かれていた。

 戦艦『長門』の艦内。その第三会議室。なにも戦艦は『神龍』だけではない。他にも戦前から日本を護り続けている古参兵である『長門』も横須賀の港に碇を下ろしているのだ。

 今夜の『長門』の会議室の一室は久方ぶりに賑やかだった。

 それは新たに大日本帝国海軍に一隻の特別な戦艦が加わったからであった。

 「それでは。今日、我が帝国海軍に新たな仲間が加わったことに、みんなで乾杯しましょうっ!」

 神龍のように長い黒髪を流し、しかし神龍よりは大人っぽく、しかし無邪気な口調が子供っぽい。思い切りコップを握った手を振り上げると白色の第二種軍装の生地が盛り上がったたわわな双丘が揺れる。

 宴会を仕切る会場の戦艦―――長門に応えるように、「おーっ!」という歓声が沸き立った。各々にコップを持った手を差し出した少女たちが並んだごちそうの周りを囲んでいた。

 そして長門の隣には、少々引きこもりに身を縮めている少女、神龍がいた。

 「ほら。あなたが主役なんだからちゃんと参加してね」

 「は、はい…っ」

 長門に軽く肩を叩かれてびくりと震えてから、おずおずと液体を注いだコップを手に握り掲げた。長門はそれを確認してにっこりと微笑んで頷き、宴会に参加する一同を見渡した。

 「我が帝国海軍の希望、私の新しいともだち、そして私たちの仲間となった神龍に、乾杯ッ!」

 『乾杯ッ!』

 同時に所々でコップが鳴る音が響き渡り、少女たちは乾杯を祝して中身の液体を飲み干した。

 そのコップの中身は少女たちの好みによって、日本酒、ラムネ、水、とそれぞれ違っている。

 ちなみに神龍はラムネ、長門は日本酒だ。

 「どう?神龍。 おいしい?」

 僅かに口もとをコップに付けてちびちびと呑んでいた神龍に長門が呼びかけ、神龍がすこし慌てるように答えた。

 「は、はい…っ。とてもおいしいです…っ」

 「神龍はラムネは初めて? 炭酸は大丈夫なほう?」

 「はい。全然平気ですから…」

 「なら良かったよ。…んぐっ」

 長門はそう言ってから自分の日本酒をぐいっと飲み下す。すこし長い時間の間に飲み下していた長門は口からコップを放すと、「ぷはっ」と吐息とともに頬が火照り始めていた。

 「やっぱり日本酒は美味しいね。神龍もどう?」

 「…いえ。私はこれでいいです…」

 「あ、ごめん。苦手かな?」

 「…飲んだことはありませんけど、本能的に危険だと知らせているんです……」

 「あはは。神龍って可愛いっ」

 「ひゃっ!?」

 ぎゅっと長門に抱き締められる神龍は長門の胸に顔を埋められて慌てて耳まで赤くして、もがいて長門から離れた。逃げられた長門は惜しむように「あ〜…」と声を漏らしていた。

 「もうっ。えっと……な、長門さん。いきなりなにするんですかぁ…」

 「ごめんごめん。つい可愛くて…。大和じゃないけど、神龍が本当に可愛いと思ってね」

 「…大和、さん?」

 「私のともだち。今は榛名たちと一緒に呉にいるかな?もちろん榛名たちも私の大切なともだち」

 長門はにっこりと子供っぽい無垢な笑顔で微笑んだ。神龍はその笑顔にドキリとして頬を朱色に染めた。

 大和。――戦艦『大和』。大日本帝国海軍が生み出した世界最大最強の不沈戦艦として謳われている。大艦巨砲主義を誇示した、日本の優秀な造船技術の粋を結集させた世界一の戦艦だ。『長門』と同じく今は滅びた連合艦隊旗艦を務めたことがあり、今も日本海軍最後の艦隊である第二艦隊の旗艦だ。言わば日本艦魂たちの司令長官はその世界一の戦艦の艦魂である大和である。

 艦魂にも人間社会と同じように階級という社会制度が存在し、その艦種や性能、戦歴、様々な要素によって異なる。基本的に艦種によって階級が決まり、そして旗艦であれば司令長官の地位となる。

 生まれて間もない、外の世界に出たばかりの神龍が知った情報の中で、今の艦魂たちの中での地位関係は、大和が司令長官、長門が参謀長、後の戦艦艦魂は皆参謀。

 そして神龍も戦艦である。しかし神龍はただの戦艦ではない。

 ――護衛戦艦だ。

 まだ自分自身でもよくわからないが、その特殊な戦艦は他の戦艦とは違う。

 情報として聞いたことがあるだけの艦魂たちの名を聞かされ、神龍はすこし動揺するしかなかった。

 「大丈夫。みんないい子たちばかりだから」

 そう微笑んで肩に触れる彼女の手の温もりが、安心感を自分に植え付けているように感じた。

 「…はい」

 神龍も、まだ会ったことがない仲間たちと出逢える未来を思い浮かべ、柔らかく微笑んだ。

 それを見て、長門もうんうんと笑顔で頷いた。

 「………」

 神龍は日本酒を口に運ぶ長門を横に、宴会ムードに包まれる周りを見渡した。自分の仲間である同じ少女たちが、様々な艦魂たちが各々にこの宴会ムードを盛り上げて楽しんでいる。

 久しぶりだからか高揚している。ある者は酒を飲み、ある者はラムネを飲み、ある者はご馳走を食べ、ある者は歌い、踊っている。

 仲間たちのそんな光景を見詰める神龍の横で、長門は神龍とは相反した瞳でその光景を見詰めていた。

 「……昔に比べて、随分と減ったものね…」

 「え?」

 不意に漏れた長門の言葉を神龍は聞き逃さなかった。

 「なにがですか?」

 長門は一瞬しまったという風に閉じた口もとに手を当てていたが、すぐに溜息を吐き、口を開いた。

 「…ううん。ただ、昔と比べたら随分と減ったな……って思って」

 「……昔」

 自分の知らない、昔。

 それは自分が生まれる前。まだ世界に名を馳せる世界最強の連合艦隊が健在だった頃。

 「今回は久しぶりにこうして盛り上がってるけど、しばらくこんなことなかったから今更改めて気付かされた……ってところかな。昔は、みんながいた頃はもっと賑やかだったんだから」

 「……賑やか」

 神龍は長門の不意に揺れた瞳からまた周囲に視線を移した。

 これ以上の賑やかさを知らない神龍にはわからないが、神龍が充分に盛り上がっていると思っているこの宴会も実は随分と寂しいものになっていた。第一に彼女たちの数は昔と比べるとずっと少なく、横須賀に集っている艦魂たちは、たったこれだけという状況なのである。

 長門が言っていたように、大和も榛名たちも、ほとんどの主力艦や艦艇が被害が少ない呉に集まっている。

 「ま。今更だけどね」

 一変してにっこりと輝かしい笑顔を向けた長門を、神龍はふと疑問に感じた。

 何故、彼女はこんなにも笑顔でいられるのだろう。

 戦争は激化し、戦況は悪化の一途を辿り続けている。日本本土は敵の空襲にあい、日本中のどこも焼け野原だ。いつ東京や大阪などの主要都市も徹底的に攻撃されるかわからない。もしかしたら台湾か沖縄、日本本土に敵が上陸してくるかもしれない。正にそんな緊迫した情勢だ。

 自分は平和な世界を知らない。ただ戦争の渦の狭間で生まれ、与えられた世界でたったひとつの誇りの意味に気付かない。気付くのはまだ先だということも知らない赤子のようなもの。

 これから自分は目の前にいる彼女をはじめとして、多くの出逢いを巡り往くことになるのだろう。そして自分は自分の存在意義を見出すのだ。

 とりあえず、それを見つけるために自分は彼女たちとともにこの世界を生きて過ごす。

 早く赤子のような存在から脱するために。

 神龍の瞳には強い決意のような炎が宿り、持っていたラムネをぐいっと喉に流し込んだ。

 「ぷはっ」

 「おぉー」

 その横で長門が感嘆の声を上げる。

 「いい飲みっぷりだねぇ。よーし、皆の衆。今日は呑め、食え、歌え、踊れーっ!夜は長いぞーっっ!!」

 『おぉぉぉーーーっっ!!』

 長門の号令により、戦艦『長門』の会議室は一層久方ぶりに彼女達の熱気が高まったのだった。

 そして―――

 「にゃははははは。あー……ういッ…」

 号令から始まり、数時間後。その激戦地に生き残っているのはべろんべろんに酔っ払っている長門(上司)とその横でガタガタブルブルと震えている神龍(新人)の二人だけであった。

 「んぐ…んぐ……。ぷはーーーっっ! はっはっはっ。やばいねこれっ。ひぃ〜〜〜」

 「………(ガタガタ)」

 ついさっきまで少女たちの談笑や歌声、踊りなどで盛り上がっていたこの会議室もその盛り上がり以上にアルコール的な意味で盛り上がっていた。

 「やっぱ日本酒ねっ! この身体の奥底から一気に芯までくる熱い感覚がなんとも…ッ! ビール? ワイン? ウイスキー? 白酒?(中国酒) マッコリ?(朝鮮の醸造酒) テッキィィーーラッ?! そんなもんすっとこどっこいっ! 日本酒が世界一ィィィィッッ!!!」

 豪快に日本酒を飲み干し、ドンッ!と酒瓶を置く長門。その顔はトマトのように真っ赤であり、眼はトロンとしていた。明らかに酔いまくりである。

 さっきの微笑みもどこへやらという長門の豹変ぶりに神龍は身を縮めて頭を抱えてずっと怯えていた。

 ちなみに周りで顔を紅くして倒れている少女たちは長門の付き合い(強制的に)に呑まされて全滅した面々だ。

 「あー……」

 酒瓶ごと中身の液体を喉の音を鳴らしながら飲み下し、一息濃い息を吐き出す。

 正にここに古参日本戦艦艦魂参謀長・長門のもうひとつの隠された姿が晒されていた。

 「(これは……)」

 神龍はガタガタと身を小さくして震えつつ、あたりを見渡す。さっきまで元気に食べたり呑んだり歌ったり踊ったりと、自分を祝してくれていた少女たちは全員同じ表情で統一し、ピクリとも動かない。自分もああなる末路なのかと危惧し、神龍はとりあえず四本足の草食動物の如く抜き足差し足でゆっくりと長門のそばから離れていった。

 「あ〜ら〜? どこに行くのかし〜ら〜……し〜ん〜りゅ〜う〜……」

 ひゃっくりと時々しながら、座った眼でビクリと震える神龍を捉えた。

 「えっと……ちょっと厠に……」

 「なに言ってるの〜……。私たち艦魂がそんな行為するわけないじゃ〜な〜い〜……ヒック。…あなたは、主役〜〜〜な〜〜ん〜〜だ〜〜か〜〜ら〜〜」

 ユラリと忍び寄る影。神龍は逃げたくても腰が抜けて動けなくなってしまった。ぺたんと尻餅を付きながら、迫る彼女から離れようと後退する。しかし壁に追い詰められ、逃げ場はなかった。

 「…嫌……ッ」

 手をわきわきさせながらデロンとした瞳で迫り来る長門の姿は恐怖以外の何者でもない。

 正に別人。

 そして彼女と被って見えるのはまだ会ったことがない荒い息遣いをしている女の姿。

 「あぁもう、神龍は可愛いなぁ〜〜〜〜。え〜〜〜〜い」

 「きゃあああああっっ!!」

 神龍の高い悲鳴が、どこまでも星空の下で響き渡っていた。



 あの酷い目にあった騒ぎに騒いだ宴会の長かった夜が明けた朝。

 その日の横須賀港に停泊する艦艇のある二隻の戦艦以外すべての調子が原因不明の不調を起こして整備員や工兵たちを悩ませる一日のはじまりとなった。

 そして……

 「ごめんなさい神龍ッ!」

 呆気に取られる神龍の目の前で手を合わせ深々と頭を下げる長門に、目を丸くする。

 「昨日のことは本当に……ッ! いくら謝っても謝りきれないよ……」

 「い、いえ…。長門さん、頭を上げてください…っ」

 ずっと年上の参謀長が自分なんかに頭を下げていることなど関係なく、ただ自分に頭を下げている【ともだち】として神龍は慌てて首を横に振って手をあわあわと振っていた。

 ちなみに一番呑んでいたはずの長門は二日酔いに至らず、ただ後悔に頭を痛くしているだけ。神龍は結局一滴も酒など飲んでいない。

 「本当にごめんなさい、神龍〜〜〜っっ。 わ、私……あなたに対してあんなことやこんなこと……あぁぁ……危うく無垢で純粋なあなたを汚してしまうところだったぁぁ……」

 嘆きに嘆いて頭を抱える長門のそばで、昨夜の身に降りかかった不幸を思い出して、神龍は顔を青くして笑顔を引きつらせた。

 「き、気にしてませんから……だからその…」

 「私ね……お酒が入ると人が変わっちゃうんだよね…。昔からよくああなの。……昔はいつもああやって榛名にくっついてたからなぁ……」

 榛名が避ける理由が明かされた瞬間だったが、神龍はまだこの時それを知らなかった。

 「はぁ…」

 「こうして私はアルコールに犯されともだちをなくしていくんだ……」

 すっかり重い雰囲気に包まれ手で「の」の字を書いてうな垂れている長門を見て、神龍は見るに耐えられない気持ちだった。

 「長門さん……」

 神龍はぶつぶつと呟き低くした背を向けている彼女を見詰める。

 昨夜の宴会は彼女が自分のために開いてくれたものだ。まだ右も左もわからない自分を暖かく迎え入れてくれた彼女。

 神龍は胸に手を添え、きゅっと手を握る。そして意を決するように、一歩前に踏み出した。

 「長門さんっ」

 凛と通った張りのある声に、長門は初めて聞いたそんな声にすこし驚くように振り返った。

 「…なに?神龍」

 「私は昨日はとても楽しかったですっ」

 神龍は首を傾げ、にっこりと柔らかく微笑んだ。

 「え…」

 「だから……本当に、楽しかったですから。長門さん、ありがとうございますっ!」

 ぺこりと頭を下げる神龍の長い黒髪がサラリと揺れた。その髪の艶は綺麗でさらさらと流れていた。

 頭を下げ、そして次に上げて見せてくれた神龍のその表情は、とても微笑ましく輝いていた。

 長門はその瞬間、女神を見たような感じがした。

 そしてどこか―――今は亡き妹に似ている気がした。

 「……ふふっ」

 しかし彼女は彼女。似ていると思っても妹ではない。自分の大好きな妹はここにいない。

 本当に純粋で、素直な子だなと心のうちに呟いて、長門も優しい笑顔で微笑んだ。

 「神龍がそう思えたのなら、良かったよ」

 「はいっ」

 「そうそう。神龍、上でおはぎでも食べない?」

 長門は懐から葉に包まれたおはぎの包みを神龍に見せた。

 「わぁっ。美味しそうですね」

 「今日烹炊所に砂糖の配給が届いてね。ちょっと失敬して久しぶりにつくってみたの」

 「い、いいんですかそれ…?」

 「いいのいいの。さて、外は意外とヒンヤリしてて気持ちいいよ。冬だからって中にひきこもってばかりじゃ身体に悪いからねっ」

 そう言って、長門は駆け出した。

 「あっ。待ってくださ〜いっ!」

 神龍も慌てて追いかける。

 似たような二人の少女が、本当の【ともだち】のように暖かい光の中で無邪気な笑顔を振りまいて走っている。そんな光景が確かにそこにあったのだった。



 ある冷えた日、冬もそろそろ終わりを迎えようとする移り変わりの時期に入る二月の末。

 戦艦『長門』の上甲板で、横須賀港に停泊する全艦魂たち列を成して集結し、その少女たちの視線は一点に集中している。

 少女たちの視線が集中するその一点、そこには正面に向き合う神龍と長門の二人がいた。

 冷たい潮風だけが吹きわたる沈黙の中、すこし緊張した面持ち、しかし瞳はどこか寂しげな神龍が一歩静かに前に出た。

 一歩、正面に立つ長門との位置を縮めると、長門はにっこりと口もとを緩ませた。

 しかし神龍は寂しげな表情だった。

 「神龍、向こうでも元気でね」 

 長門の優しい言葉が神龍に胸に溶け込む。

 「…はい」

 横須賀海軍工廠で竣工、『長門』と並んだ戦艦又は特殊な戦艦として佇んでいた『神龍』は横須賀とは別の日本有数の軍港、呉にいよいよ回航することとなった。

 敵の空襲も少なく、呉には壊滅した連合艦隊の生き残り、最後の希望である艦艇たちが多く停泊している港としても有名だ。

 先日、大和型三番艦だった航空母艦『信濃』も呉に向かったが不運なことに撃沈されている。そういうこともあって、制海権は敵の手に握られており、港を出れば即敵地だ。油断は禁物であり、覚悟して進まなければならない。途中で敵に遭遇する場合も充分在り得るのだ。

 しかし神龍のその表情は恐怖からでもない、ここで別れるという寂しさからなるものだった。長門はそれを諭し、フッと微笑んだ。

 「大丈夫。呉にはもっと大勢の子たちがいるから。大和や榛名たちによろしくね」

 「…はい。手紙も必ずお渡ししますっ」

 神龍は懐に収めた手紙にそっと触れた。

 それは呉への回航が決まり、出港前日に長門から貰い受けたものだった。あの絶景を見渡せる防空指揮所で、彼女が告白していた自分のまだ知らない想いと、教えてくれたこれからの自分を待っているであろう未来。あの時の長門の言葉を思い出し、神龍は未来への第一歩を踏み出す決意を固めることにした。

 その手紙は長門から榛名宛のものだが、それは神龍についてのことが書いてあり、後に神龍と榛名が本当の姉妹のようにお互いを慕うきっかけとなるものでもあることを神龍はこの時まだ知る由もなかった。

 「あともうひとつ、渡したいものがあるんだ」

 「はい…?」

 長門は襟の階級章をはずし、それをそっと神龍に手渡した。

 それは日本海軍の中将を示した階級章。そして―――

 「これより本官は貴官に対して昇級を言い渡す。今から貴官は大日本帝国海軍軍人の中将、すなわち日本海軍の統制に重要な役割を占める参謀長に任命する」

 長門の潮風とともにあたりに届き渡った言葉に、周りからは一瞬のざわめきが起こった。

 手の平に階級章を渡され、状況に追いつけない神龍はただ呆然と立ち尽くして長門を見ていた。

 長門の表情は柔らかく微笑み、しっかりと頷いていた。

 「今日からあなたがみんなの参謀長よ」

 神龍はようやく自分の置かれた状況を理解して、震え上がってから驚愕の声を張り上げた。

 「え、ええええええっっっ!?」

 神龍の初めて出した驚愕の声にも長門はびくともせずにニコニコと笑顔を振りまいている。

 「な、え、……わ、私が…ッ?! そ、そんな…ッ」

 「落ち着いて神龍」

 「だ、だけど…ッ!」

 生まれてまだ年端もいかないような自分がいきなりそんな大役を任されれば動揺もする。自分はこの日本海軍で上に立つ存在にならなければならなくなる。

 動揺を隠し切れない神龍の肩にそっと手を置き、長門は落ち着くよう優しく促した。

 「ごめんね、神龍。あなたにいきなりこんなものを押し付けるみたいで……。でもね、あなたは大和に次ぐ戦艦。私たちの……いいえ、日本の希望なのよ」

 「私が……希望…?」

 「理由になってないかもしれないけど、これはあなたに渡したほうがふさわしいの」

 「そ、そんなことないですよ…。これは長門さんが――」

 「――たぶん私はもう二度と榛名たちと会えないかもしれない」

 「ッ?!」

 「……向こうに着いたら榛名たちによろしくね。あそこには私たちの司令長官である大和もいるんだから。大丈夫、きっと伊勢や榛名が教えてくれるから安心してくれていい」

 「………」

 「あなたはこれから私たちの参謀長。そして日本の希望なの。だから―――」

 長門は雪のように白く輝くような、笑顔を見せた。

 「頑張ってね」

 「………」

 肩に彼女の触れる手の温もりが伝わる。とても暖かくて心地よい。そして目の前にある彼女の笑顔も眩しいくらいだった。

 神龍の瞳は寂しげに揺れるも、やがて瞳を閉じると、次に開いたときには既に変わっていた。

 「私は……私がどんなものかまだよくわかりません。ですが……」

 神龍の小さく、しかしよく通るように言葉が紡がれる。

 「精一杯―――頑張りたいと思いますっ」

 「うん…。よく言ってくれたね、神龍。ありがとう……」

 肩に置かれた温もりが、自分の背に移り、そして全体に温もりが伝わった。

 それは長門が神龍を抱き締めたからであった。

 冷たい潮風が二人の長髪を揺らし、しかし二人のその空間だけは暖かった。神龍は全身を包み込むような柔らかさと温もりに触れ、そして耳元の彼女の声を聞いた。

 「ばいばい……神龍。元気でね。私の大切なともだち―――」

 透きとおるような優しげな言葉に、神龍は不意に表情を微笑ませていた。



 やがて『神龍』は出港の時刻を迎えて碇をあげた。

 「錨あげーっ! 機関、主機エンジン始動ッ!」

 兵の号令によって『神龍』の艦内は出港準備に兵たちが走り回り、慌しくなった。

 『長門』の甲板から移って、『神龍』の甲板にも大勢の長門をはじめとした艦魂たちが神龍との別れを惜しんでいた。

 しかしそれでも別れ、少女たちは次々と自艦へと光となって戻っていく。最後に残ったのは長門と回航する『神龍』を護衛する少数の艦魂たちだけだった。

 その中から一人の少女が前に出た。

 「参謀長」

 数瞬遅れて自分だと気付き、神龍はすこし焦ったように応える。

 「な、なんですか?」

 早速参謀長と言われるとやはり焦るものだった。慣れるにはまだ時間が必要のようだった。

 神龍に声を掛け、前に現れたのは水兵服を着た小柄な身体のわりに首に大きなマフラーを巻いた少女だった。神龍の前に出ると一礼をする。

 「…勝手ながら失礼させていただきます。私は伊号第五八潜水艦の艦魂。名を榎深かなみといいます。以後の航海のお供をさせていただきますことをご承知の上に」

 「え? あなたも一緒に…?」

 「彼女は金剛隊の一員で元々は呉にいたのよ。この機会にまた呉に帰ることになったの」

 金剛隊とは人間魚雷・回天特別攻撃隊のことだ。彼女自身、日本海軍が誇る巡潜乙型潜水艦である伊五四型潜水艦の一隻で、回天特別攻撃隊金剛隊に選ばれた潜水艦の一隻だ。彼女が特攻兵器を搭載してこれまでに幾度も出撃し戦場を潜航してきたことを、そして金剛隊と回天とは何なのかを、この時の神龍は無知すぎて知っているはずもなかった。

 「そうですか。よ、よろしくお願いしますねっ」

 神龍は白い手を差し出した。

 榎深と名乗る潜水艦の艦魂である少女はジッと神龍の手の平を見詰め、それからふと視線だけを長門に移した。

 長門はそんな彼女の視線に気付いて、にっこりと微笑んで頷いた。

 艦名とは別の名前を持つ不思議な少女―――榎深は、おずおずと遠慮がちに神龍の広げた手の平に自分の小さな手を触れた。

 チラリと上目遣いで神龍を見上げる小柄な少女は、ゆっくりと神龍の手を小さな力できゅっと握った。

 それは本当に小さく、すぐにでも消えてしまいそうな力だった。

 「…よろしくお願いします」

 しかしやはり彼女には彼女の温もりが確かにあった。

 


 離れていく一隻の巨人艦――彼女に向かって、長門たちは軍帽を手に振りつづけた。

 そして同じく、少数の護衛を率いた護衛戦艦『神龍』でも、神龍が軍帽を手に持って振りつづき、別れを惜しんでいた。

 長門と少女たちが旭日旗と軍帽を振りつづける中、その巨艦は水平線の先にある夕日の中へとその形を徐々に小さくしていった。

 護衛戦艦『神龍』は少数の護衛である駆逐艦数隻と潜水艦一隻を引き連れて夕刻に横須賀港を出港。浦賀水道を経て、日本近海の太平洋を夜間の間に慎重な航行を進めていた。

 同じく横須賀から呉に回航途中だった航空母艦『信濃』が敵潜水艦に撃沈された前例もあるためより一層の緊張があった。日本の目と鼻のすぐ先まで敵の手が迫りつつあり、完全に制海権・制空権は敵側が握っているのだった。

 日本の内庭である日本海にまで敵潜水艦が出没する始末。最早日本は敵に囲まれ、孤立しているのは一目瞭然だった。

 実戦も訓練さえ経験がない神龍は高鳴る鼓動を胸に緊張を抱えながらも慎重に波揺れる海を見詰め続けていた。自分の巨艦によって揺れる大きな白波。そして時に穏やか、時に荒れることがある大海原はどこまでも広すぎて、どこに敵が潜んでいるのか全然わからない恐怖があった。

 時々護衛の艦魂たちが自分を励ましたりしてくれるが、神龍は彼女たちに感謝の気持ちを頂きながらもやはり様々な初めてのことに不安と恐怖を取り除くことはできるわけがなかった。

 そして横須賀から出港して数日―――

 

 ―――伊五八。


 黒色の艦体に書かれた文字。

 水上にいる状態での排水量で潜水艦を一等から三等の3種類に分け、このうち一等を伊号、二等を呂号、三等を波号と呼んだ。

 つまり『伊』というのはイロハのイにあたる。

 意味は特にない。そして伊号潜水艦とはすなわち日本海軍の最大級の潜水艦であった。

 中には艦載機を数機積んだ航空兵力を備えた潜水母艦というのも存在する。

 そしてこの伊五八は竣工時期が遅かったために艦載機は積んでいないが、その代わり22号電探を1基、逆探1基を新造時より装備している日本海軍潜水艦の中で最先端の装備を備えていた。

 そして―――この戦争で最も主力となる悲しみの象徴となる特攻の具現化した兵器も搭載されていた。

 〜〜♪ 〜♪

 潜水艦の艦内は暗くて狭く、ジメジメとしている。しかしそんな艦内でこの世界とは別物のような存在の軽やかで美しい音色が響いていた。

 それは小柄な身体のわりに大きなマフラーを首に巻いた居座る少女。瞳を閉じ、ただフルートを咥えてそこから美しいハーモニーを奏でている。

 潜航中であるなら音を出すなんてもってのほかだ。何故なら潜航中に目立った音など漏れれば同じく潜航して耳を済ませている敵潜に見つかってしまう。

 しかし今は伊五八も海面を滑るような水上航行をしていた。

 まぁ…そもそも限られた者にしか見えない艦魂が奏でる音なら普通の人間には聞こえないはずだ。

 伊五八――榎深。

 『エノキ』――東アジアに分布する植物。

 日本人には江戸時代からの親しみがある植物の名を持つ彼女は戦中に生まれ育ち、淡々と作戦と戦闘をこなして来た冷静沈着の深海の狙撃者ハンターとしても艦魂たちの間では有名だった。

 作戦に忠実で最も軍人らしい彼女の唯一の趣味という楽しみが、艦長橋本少佐から譲り受けたフルートだった。

 そして……この自分が奏でる音色を聞いてくれるただ一人の人物――少年がそばにいた。

 「―――来る」

 「え?」

 途端にフルートの音色が止まり、心地よく聴いていた少年は瞳を開いた少女に問う。

 「なにが……って、まさか…」

 少年は青ざめ、相反して彼女は冷静に凛と通った声で言った。

 「敵―――ッ」

 伊五八の艦魂――榎深は立ち上がり、真剣な面持ちになる少年のそばで首に巻いたマフラーをきゅっと締めた。

 「急速潜航ッ!」

 艦長の号令により伊五八は直ちに慌しく海中に潜航を開始した。

 そして『神龍』を囲む護衛の駆逐艦も対潜戦闘準備に入り、警報が鳴り響いた。

 「な、なんですかっ?!」

 慌しい艦橋で状況に戸惑う神龍のそばに、駆けつけた伝令が持っていた紙を読み上げた。

 「報告しますッ! 八時方向に敵潜水艦を確認ッ! 距離約一五〇マイル!」

 神龍はその報告を聞いてぞっとした。

 やはり敵が現れた。こちらが発見できたことというだけが救いだがそれも本当に救いになるのかは自分たち次第となる。

 見張り兵の報告によると潜望鏡が確認されたという。

 『信濃』の二の舞はごめんだという意気込みで『神龍』は護衛の駆逐艦に囲まれるように護衛され、伊五八も潜航して敵潜水艦に向かっていった。

 その頃、『神龍』をはじめとした小規模の艦隊を潜望鏡を凝視する敵潜水艦は静かにゆっくりと潜航していた。

 「……デカイな」

 アメリカ海軍バラオ級潜水艦アーチャーフィッシュ。その潜望鏡がじっと『神龍』を見詰めていた。

 ジョーセフ・F・エンライト艦長はあまりの巨大な姿に玉汗を浮かばせた。

 「艦長キャプテン、前方から敵潜探知。本艦に向けて接近中です」

 「敵側も我々に気付いたようだな。…前のようにはさせてくれないということか」

 潜水艦アーチャーフィッシュは空母『信濃』を撃沈したばかりだった。日本本土空襲を実施するB29乗組員の救助任務を帯びたが空襲は実施されていないという報告が入った日の夜、アーチャーフィッシュは出港した『信濃』を発見し、数時間の追跡の末、魚雷六本を発射、うち四本を命中させ世界最大の空母だった『信濃』を轟沈した。

 まさに『信濃』の仇がアーチャーフィッシュだった。

 『信濃』を鋭利な水鉄砲で撃沈したテッポウウオ(に因む艦名)はまた獲物を撃ち抜くために日本近海をさ迷っていたのだった。

 「馬鹿でかい戦艦だが……。こいつを沈めたとして果たして特があると思うかね?アーチャー」

 彼のすぐ隣に立っていたアメリカ海軍水兵の服を着た、鼻の上にソバカスをかけたいかにも田舎の女の子という感じの金髪碧眼の少女、アーチャーフィッシュの艦魂、アーチャーはすこし困ったような表情で口をつぐんでから答えた。

 「敵を一隻でも沈めることは戦果に変わりありません」

 「…だがそれも書類上の戦果として残ることはない可能性もある」

 「…前の空母のことですね」

 アーチャーフィッシュは確かに『信濃』を撃沈し、乗員である彼らは世界最大といえるほどの非常に大きな空母を攻撃したことは認識していたが、撃沈の確信を持つことは出来なかった。また米軍はB29からの偵察写真に『信濃』が写っていたのにもかかわらず、当時『信濃』の存在を把握していなかったため、アーチャーフィッシュの報告も半信半疑の扱いであった(当時世界最大の空母を撃沈したと知るのは、戦後のことである)。

 そのためせっかく巨大な敵空母を撃沈したのかもしれないというのに司令部は信じず、戦果としても残らず栄誉も与えられない。栄誉を与えられることはアメリカ軍人として、アメリカ人としても最大の誇りなのだ。

 「もちろん撃沈するつもりで攻撃する。ただ私はあのまたしても巨人艦を沈めたとして我々の功績が認められるときが来てくれるのかと不安なのだ」

 「艦長、私はあなたの指示でしか動けません。艦長の判断にお任せします」

 世界最大の空母を撃沈<しただろう>した潜水艦とは思えないくらい小さくて普通すぎる田舎娘のような少女。故郷に置いてきた娘とそっくりだと出会ったときから感じていたジョーセフ艦長はそんな少女の表情を見て迷いを吹っ切った。

 「敵潜、本艦にて距離を縮めています!」

 「…よし、いこうか。まずは目の前の障害物を排除し、本命の敵戦艦を狙う」

 水上艦艇を攻撃する前に潜航中の潜水艦同士の対決とはいきなりハードな問題である。

 アーチャーフィッシュはいつものように獲物を仕留めようと静かに海中を突き進んだ。

 

 同じく伊五八もアーチャーフィッシュに接近していた。

 「ここは行かせない……」

 榎深は自分のずっと背後の先で護衛の駆逐艦に囲まれながら海域を離脱しようと急ぐ『神龍』にいる我らの生まれたばかりの護るべき参謀長を思い浮かべ、ぐっと拳に力を込めた。

 「信濃参謀のようにはいかせない…。これ以上は……」

 敵が発射した魚雷をわが身で防ぐと覚悟するほどの気持ちを宿した潜水艦伊五八はアーチャーフィッシュと対峙し、緊迫した潜水艦同士の長いせめぎ合いが開始された。

 


 「榎深さんっ!」

 神龍は鉄柵から身を前に乗り出し、敵と彼女が潜航しているであろう揺れる波を不安げに見詰めた。

 「参謀長ッ! 何をしておられるのですかっ?!」

 突如現れた護衛の駆逐艦の一人である少女が鉄柵から身を乗り出している神龍を見つけて驚愕しながら神龍を抑えこんだ。

 「は、離してくださいっ! 榎深さんが……」

 「榎深殿は参謀長のために敵を食い止めていますっ! その間に参謀長は呉に急ぎましょうっ!」

 「私だけが逃げるなんてできませんっ!」

 「参謀長はまだ死なれては駄目なのですっ! 参謀長は我々の希望なのですから…! 彼女の意志を無碍にして良いのですかっ?!」

 「――ッ!!」

 一瞬の隙を狙われ、神龍は遂に抑えられて転倒してしまった。

 「申し訳ありません、参謀長。お辛いのはわかりますが、先を急ぐしかないのです…!」

 「そんな……ッ! ――ッ!」

 神龍は完全に抑えられ、もう二度と立つこともできなかった。悔しさに歯を噛み締め、瞳からぽろぽろと涙をこぼした。

 なにもできない無力な自分が悔しくて仕方なかった。こんな自分のなにが希望なのだろうか。戦闘が行われているかどうかもわからない穏やかでしかしどこか荒れているように見える海面は静かで、『神龍』は護衛の駆逐艦に護られながら一度も攻撃されずに無事海域を離脱した。

 そして横須賀出港から日が経ち、『神龍』は呉港に入港した。

 碇を下ろした瞬間、『神龍』は無事、横須賀から呉への回航に成功したことを知らしめたのだった。

 伊五八――彼女の安否を聞けることはなかった。


 

 神龍が呉に訪れてから一週間以上が経ったある日。

 日課となり始めた参謀長としての仕事を伊勢や榛名たちにそれぞれ教わりながら片付けているとき、神龍のもとに尋ね人が現れた。

 ――コンコン。

 山のような書類の前で筆を進めていた神龍とその隣にいる榛名の二人のところに、ノックが小さく響いた。そして開いた扉から雪風のふわりと揺れた長髪の次に見せた童顔が丸い瞳で部屋を覗き込むように見詰めていた。

 「あの…。と、取り込み中でしたか…? でしたら後で失礼させていただきますね……」

 雪風の頭がゆっくりと引っ込もうとした途端に、神龍が制止の声をあげた。

 「あ、あーっ。雪風。いいですよ、どうぞ」

 「………」

 隣で榛名が訝しげにジッと神龍を横目に見詰めていたが神龍は苦笑して知らないことにした。実はかれこれ5時間も休憩なしに榛名のスパルタ教室を受けていたのだ。さすがに勝手に休みを取っても罰は当たらないだろう。たぶん。

 「えっと、失礼します…」

 遠慮がちにいそいそと入室する雪風。彼女は神龍の側近のような一人であり、いつも矢矧と二人で自分を支えてくれる良き部下であり親友だった。

 天使のような笑顔で迎えてくれる神龍とは別腹に、神龍の隣で恐い顔をしている榛名にビクリと震えながらも必死に用件を述べた。

 「そ、そのっ! 参謀長に面会人ですっ! そのかたが参謀長との面会を希望されておりますが……」

 神龍が返事を返そうと口を開いた刹那、榛名のスッと横から入り込むように通った声がそれを制した。

 「私が代わりに会って話を聞こう」

 「ちょ、ちょっと榛名姉さんっ?」

 「その…。榛名参謀……。面会人のかたは参謀長との面会は希望されてまして……」

 「だから私が代行で話を聞いてやると言っているのだ」

 榛名の頑固な言葉に二人は戸惑うしかなかった。

 「神龍」

 首に巻いた日の丸のスカーフを翻して振り返った榛名は神龍に指をさした。

 「神龍は残りのものを全て片付けておけ。私が代わりにその者と面会している間は仕事を続けるが良い」

 「は、榛名姉さん…ッ!」

 「貴様はまだ仕事が残っているだろう。 私が教えたことをもう忘れたのか? 参謀長足る者、常に帝海軍人としての誇りを持って節度を厳守し、与えられた役割と仕事は己の力で最後まで果たすことだっ!」

 ビシッ!と指をさされると同時に強烈な威圧感が襲い掛かり、神龍はビクリと震えて身体を小さくする。

 厳しい榛名とシュンと落ち込んでしまっている神龍という二人の光景に雪風はおろおろとするがどうしようもなかった。

 「さて、どこの誰だ? 日本海軍艦魂の二番に会いたいという無礼な顔面はどこにいる?」

 スカーフを揺らした榛名が雪風のところまで歩み寄る。と、その時、別の声が雪風の背後の開いた扉から聞こえた。

 「榛名ったらもう」

 「ッ! い、伊勢…!」

 珍しい驚愕の表情で歩を止めてついでに一歩後ずさった榛名の前に、大和撫子の字が似合う和服を着た女性、伊勢が立っていた。

 開いた扇子で口もとを隠し、伊勢は溜息を吐いた。

 「神龍のこととなるといつもこうなんだから…。会わせてあげたらいいじゃないの。彼女をあまり待たせちゃ駄目よ」

 「だ、だから私が代わりに話を聞いてやると言っただろう。というか伊勢……貴様、日向と少尉のところで茶会をしていたんじゃなかったのか…」

 「だってあれから何時間経ってると思ってるの? 私が二人のところに出かけた時間帯はちょうどあなたが神龍への担当に向かった時間だったじゃない。 5時間も経てばとっくにお茶を済ませて帰ってくるわよ。 まっ……正しくお茶をゆっくり飲んでいたのは私だけだったけどね…」

 「……それでわざわざ様子を見に来たというわけか」

 「だって出かけたときから始めているはずなのに私が帰ってきてもまだやってるって聞いたのよ? あなたのことだから休憩なしに神龍にみっちり教え込んでると思ったからね。 あまりやりすぎると駄目よって注意に来たのよ。元々ね」

 「むぅ…」

 「さぁ、お入りなさい」

 伊勢に促され、ずっと小さい背丈の少女がゆっくりと部屋に足を踏み入れた。

 「…失礼します」

 「え…?」

 その聞いたことのある声に反応して神龍は椅子からガタリと立ち上がった。

 そしてそこには、自分を護るために危険に身を乗り出し、消息不明だった小さな彼女がそこに立って自分を見詰めていた。

 そして柔らかく口もとを微笑ませ、可愛らしく首を傾げた。

 日本海軍の水兵服を着た小柄な身体のわりに、首には口もとを隠す大きなマフラーが巻かれている。

 首に巻いた大きなマフラーが、揺れた。

 「…お久しぶりです、参謀長」

 「榎深さん…ッ!」

 それは自分を逃がすために敵潜水艦と対峙して安否がわからなかった伊五八潜水艦の艦魂――榎深だった。

 気がつくと、駆け出した神龍が榎深の小さな身体に抱きついていた。

 ある者は不機嫌に、ある者は微笑ましく、ある者は驚いたようにそんな二人を見詰める。

 抱き締められた小さい少女は丸い瞳を見開き、僅かに頬を朱色に染めたが、やがて自分も神龍の背に小さな手をそっと添えた。

 「良かったです…ッ ご無事で……」

 「…いえ。参謀長もご無事で何よりでした……」

 二人はこうして、お互いに一度しか触れたことがなかった温もりを再会したことによって再び感じあっていたのだった。

 彼女の言うことによると、『神龍』を絶対に敵の攻撃を浴びさせずに逃がすために敵潜水艦の進路を阻んだ。いつ魚雷が発射されても彼女の盾になる思いで絶対に敵潜水艦をそれ以上行かせないようにしていた。

 敵潜も長い間伊五八と睨み合いを続けて両者は緊張状態だった。ただコォン…コォン…という互いの音を探知する聴音だけが不気味に響き渡り、静寂な暗海の中、二匹の鯨がどちらともなく攻撃を仕掛けることなく対峙し続けていた。

 やがて、遂に敵潜が魚雷発射管を開いた音を伊五八が察知し、伊五八も魚雷の発射準備に入った。その際に搭載した特攻兵器・人間魚雷回天を使用するか通常の酸素魚雷を使用するかで揉めたときがあったが艦長の判断によって酸素魚雷を使用することとなった。

 しかし互いが魚雷を発射する前に、突如、二隻が対峙する海の上空に航空機が飛来した。

 それを探知した二隻はその航空機がどちらの味方なのかと息を呑んでいた。

 そして、先にその場を離脱したのは―――敵潜水艦のほうだった。

 飛来したのは日本本土から巡回に飛び立った対潜装備を備えた観測機で、それをいち早く察知した敵潜は急いで爆雷を受ける前に尻尾を巻いて逃げていった。

 結局緊迫した睨み合いが続いただけで、両者とも魚雷を発射することなく、幸運にその場を回避することができた。

 そしてつい先日、彼女も呉に入港したらしい。

 「…私はまた点検と整備を整え次第に呉を出港する予定です」

 「そうですか……。また会えて嬉しかったですけど、またお別れとは寂しいですね…」

 「…光栄です。私はまだやらねばならないことがたくさんあるので……」

 「たぶん、私もあると思います…。……ねぇ、良かったらひとつ教えてくれませんか?」

 「…どうぞ。ひとつといわずにふたつと聞いてください」

 「…何故、あなたは私のためにあそこまでしてくださったんですか……?」

 神龍はあの時、海に乗り出しかけたときに抑えられて聞いた少女の声を思い出す。

 ―――『参謀長は我々の希望なのですから…!』―――

 ――希望。

 生まれたときから聞いていたが、何故自分はここまで希望だとかそういう類の言葉を聞かされるのだろう。それは自分という【護衛戦艦】に鍵があると思うのだがよくわからないままだ。

 じっと真剣な表情で待つ神龍に、榎深はすこし間を置いてから視線を神龍の瞳に移した。そして大きなマフラーから口を出し、その口が小さく言葉を紡いだ。

 「……あなたをお護りしたかったからです」

 「……護、る?」

 「…そうです。護るということが私を動かしました。…それを参謀長は、きっといつか、必ずわかるときが来ることでしょう。なにかを護りたいという気持ちに……いつか知ることができるはずです」

 「なにかを……護る…」

 その言葉が染みて不思議な感覚が生まれた胸に、そっと手を添えた。

 「私も……いつか、護りたいものを護りたい。そういう気持ちを持てるんでしょうか…」

 「…はい。それは誰にだって知ることができるものです」

 「……護る、か」

 神龍はその日、何度もその言葉を口ずさんで繰り返すこととなった。

 

 彼女があの時言っていたように―――自分にも護りたいという気持ちが生まれるのだろうか。

 そして護りたいものとはなんなのだろう。

 やっぱり今はよくわからないけど、きっといつかわかるときがくる。

 それを信じてみよう。

 私も――いつか、護りたいものを護るための力を持って、護ってみせたい……。

 私はそう――心に誓った。



 そして月日が経ち、自分がたった一隻ひとりの護衛戦艦という日本海軍の戦艦であり護るべき祖国と仲間を自覚し、より成長した少女はある日、彼女の歯車を大きく動かすことになる全ての物語を紡ぎだす糸を、その想いとなる、自分を初めて視てくれる三笠菊也という少年と出逢った。

 「私はこの護衛戦艦『神龍』の魂が具現化した姿。それが私。神龍ですっ」

 「あんたが……この『神龍』の艦魂だって?」

 「はいっ!」

 彼彼女―――二人は、出逢った。

 それは生まれてからずっと問いかけてきた、さがし続けてきたものの答えだった。

 「よろしくお願いします、三笠二曹っ!」

 「ああ。よろしく、神龍」

 自分のその誇りに気付き、その気持ちに気付くこととなるすべての始まり。

 そして護りたいものを護るための彼女と、そして彼と二人での戦いが始まる。


 彼女は彼と出逢い、交わい、様々な運命が交叉して遂に知った。

 

 ―――護りたいものがそこにある―――

 

 その気持ちに……。

 こうして彼彼女の歯車が大きく軋みだし、二人から始まった物語の糸が複雑に紡がれていき、世界は護りたいものを護るための戦いに動かされていった―――

伊勢「伊勢と〜」

日向「日向のぉ」

伊勢・日向「艦魂姉妹ラジオ外伝版番外編〜〜〜っっ」


――本番組は、北は樺太、南は台湾まで、全国ネットでお送りいたします―――

――大本営・海軍省・大日本帝国海軍支援協会・艦魂同盟の提供で、お送りいたします―――


日向「また会ったわね。ぱー…ぱーそなててぃの日向よ。よろしくね。噛んでなんかないわよ?いいから黙りなさい。平伏せ愚民ども」

伊勢「乱暴な妹とは大違いの姉である伊勢でぇす。皆さんにまたお会いできて本当に嬉しいです」

日向「ていうかまた性懲りもなくこんな番組(?)やりやがって…。ていうか長門や榛名、姉さんが出てきたのに私だけ出てないってどういうことよっ!」

作者「ただ単に執筆の都合上文字に出てこなかっただけです……(ガタガタブルブル)」

日向「ただ単にっていう理由で私が出てこないなんてふざけんじゃないわよぉぉぉっっ!!」

作者「ひえええええ」

日向「本編でも外伝でも出番少なくて、私が活躍できる場といったらこのふざけたラジオしかないじゃないのーっ!」

作者「性懲りも無くとかなんとか言ってたくせに…」

日向「死なすッ!」

作者「ぶほぉぁっ?!」

伊勢「相変わらずねぇ…。まぁこの二人は置いておいて、今回のゲストさんをお呼びしますか。神龍と長門です。どうぞ〜」

神龍「皆さんお久しぶりです〜っ!神龍ですっ」

長門「長門よ。また会えて嬉しいな」

伊勢「本作は本編のメインヒロインと外伝一作目のメインヒロインがタッグで中心だったって感じがしましたね」

長門「言われてみればそうかもね」

伊勢「あなたの豹変ぶりには驚かされたわ」

長門「いや、伊勢…知ってるでしょ。私がお酒入るとすごく人が変わるってこと……」

伊勢「そういえばそれで榛名に嫌がられてたわね」

長門「あの時のことは反省してるんだけどなぁ…。まぁやっぱり榛名も女の子だってことだね」

神龍「い、いったいどんなことが長門さんと姉さんの間に起こったんでしょうか……」

日向「しかもあんたまで同じ目に合いそうになったってことなんだからね」

神龍「………」

長門「知らないほうがいいこともあるんだよ」

伊勢「あなたがそれを言いますか…?」

日向「まぁ今回は神龍と長門が中心で、でもやっぱり神龍の過去話的な感じだったわね。ていうかそれ」

神龍「でも榎深さんも結構重要なかただったと思いますけど…」

長門「なんだか今後出てきそうね」

日向「そこんところどうなのよ馬鹿作者」

作者「いてて…。う〜ん。実は榎深……伊五八の物語は書こうかなとは考えてましたが、結局彼女がヒロインの外伝は断念してこの話にせめて登場させてみました」

日向「は?じゃあ彼女もう出てこないの?」

神龍「えぇっ?! な、なんでですか〜っ!」

作者「いや…。伊五八の物語は既に黒鉄先生が外伝として書いていますし。ただでさえ榛名たちや雷の話を書くことが決まっていて被っているのに、これ以上被らせたら悪いなと思って……」

日向「扱うのが日本海軍の艦艇だから被るものが出てくるのは当然だとは思うけど……まぁ仕方ないと考えれば仕方ないのかもね」

作者「その代わり潜水艦の艦魂の話は外伝として書くつもりですよ。伊五八とは別の潜水艦の話」

伊勢「潜水艦の艦魂といえば、流水朗先生の伊四〇〇……絹海さんの物語がありますね」

作者「それとも別の潜水艦の話を書きたいと思っています。伊五八でも伊四〇〇でもない潜水艦の話。まぁ潜水艦なんていっぱいありますけどね」

神龍「うぅ〜…。ざ、残念ですが……。えっと、どんな潜水艦の話ですか?」

作者「まだ秘密。しかも当分先になると思うからしばし待たれよ。その前に葛城や榛名たちの話も先に書きたいし」

伊勢「では、次回の外伝はどんな艦魂の物語なんでしょうか?」

作者「はい。次回は〜〜〜〜葛城がメインの話ですっ!葛城が復員船として復員輸送に従事する際の話を書いてみようと思っています。というわけで皆さんお楽しみに」

神龍「次回は葛城さんですか〜。どんな話になるんでしょうね」

長門「戦争は終わってるわけだから戦いはないんでしょう?」

作者「まぁ戦後の復員輸送ですからね。こういうタイプの小説は初めてなので頑張りたいと思います」

日向「じゃ、ちゃっちゃと書きなさいよ」

作者「わかってますよ…。でも相変わらず書く手遅いんで更新はまたいつになるかわかりませんが……」

日向「いつも思うんだけどそこんところ書き手としてはどうなのよ…」

作者「だから頑張りますってばぁ…」

日向「さっさと私が出てくる物語も書いてほしいわね。こんなところでしか出番ないんだもの。日向ファンが首を長くして待ってるんだから。ほら、こんなに「日向マダー?」「日向を出して」っていう手紙メールがこんなにも……」

作者「あ、電話だ。もしもし。あ、葛城ー? うん。今収録場。 え? 三笠とのラブラブ話を書かないと殺すって? マストに逆さまにして吊るして包丁を数本投げつけるって? おいおい冗談きついよー。 はっはっはっ」

日向「人の話を聞けぇぇぇぇっっっ!!」

作者「ひゃああああああっっ?!」


ズドォォォォォォォォンッッ!!!


伊勢「最近こんな爆発オチ系が多いわね…。どこの影響かしら…」

長門「日向の三十六センチ砲も健在ねぇ〜」

神龍「え、えっと…。と、ということで皆さんっ!ここまで読んでくださり本当にありがとうございました!これからもウチの作者さんは外伝を書き続けるつもりですのでどうかよろしくお願いしますっ。ご意見感想待ってます。ではまたお会いしましょう〜っ」

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― 新着の感想 ―
[一言] 面白いっ!! 神龍って、過去にこんな事があったのか・・・
[一言] こんにちは、流水郎です。 読ませていただきました。 伊五八……榎深殿の言葉が、神龍のその後に大きな影響を与えたわけですね。 彼女がこの話の第二の主人公かもしれませんね。 俺の方は水上攻撃機搭…
[一言] 霜月「『神龍』の外伝第一作を読ませていただきました。近頃、訳あってパソをいじっておらず、感想が遅れてすみません。」 宝鶴「まったく、このダメ作者というものは‥‥。前にあんだけ大口叩いてたくせ…
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