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九十頁
「ああ。いいよ」
 とのあっさりとした答えに駿来は慌てて顔を上げる。
「いいんですか?」
「ああ。元々、そう師匠に頼まれたたからな。あの手紙には悠の事と、お前の事が書かれていた。だから、お前が頼んできたら受けると決まってたんだよ」
 伽黄はそう言って溜息をついた。
「面倒だが、俺もそろそろ教わる立場から教える立場に回らないとならない。だから、お前の存在はある意味では助かるな。悠にお前か。まぁ、厄介事ばかり回ってくるのが、黒の君の一派だからしかたない。お前もそれを覚悟しておくんだな。嫌なら、ちゃんとした人を紹介してやるがどうする?」
 と、伽黄は可笑しそうに尋ねる。
「いえ。俺は黒の君一派でいいです。それに、悠の事も気になりますから」
 駿来はくすりと笑った。
「そうか」
 と、伽黄が頷いた時、どたどたとして足音が部屋に迫って来た。勢いよく扉が開いて、悠がきっと伽黄を睨んだ。
「って。結局、ここで居候じゃない。いつになったら帰れるのよ」
「知らん。俺に聞くな」
 伽黄はふいっと顔をそむける。
「知らんじゃないでしょ。全く、どいつもこいつも。こうなったら」
 悠はぐっと手を握り締める。
「悠。お帰り」
 駿来はひょいっと悠の前に顔を出した。
「あっ。ただいま……って、そうじゃないでしょう。そうじゃ」
 駿来に雰囲気にそのまれそうになった悠は首を振る。
「ああ。そうだ。俺、伽黄様に弟子入りしたから、しばらく一緒に住めるよ」
「へぇ。そうなんだ。よろしく……って」
 再び脱線しそうになった話を元に戻ろうと、伽黄を見る。
「で、ちゃんと見つけてくれるんでしょうね」
「まぁ、俺はやらないが、巫女様はやってくれるんだろう。だったら、見つかるはずだ」
 伽黄は素っ気なく言う。
「ぐっ。それは……」
「大丈夫だよ。巫女様が見つけてくれるって言うんならすぐ見つかるって」
 駿来はにっこりと笑って答える。
「……まぁ、ねぇ」
 なんだか納得できないが、悠はとりあえず頷いた。この国に来た時よりは色んな事がわかったが、日本に帰る手立ては見つかってはいない。双子の妹である結花が神様を見つけてくれると言っていたが、本当に見つかるのか。それに、全てを他人任せにするのもどうも落ち着かない。だが、神の見つけ方など悠は知らないし、神が存在していると分かってはいるものの、それを実感できてない現状もある。
「うー」
「まぁまぁ。俺も何か手伝える事があったら、手伝うからさ」
 駿来は一人唸っている悠の肩をぽんぽんっと叩きながら言った。
「お前は人の事よりも自分の事を考えろよ」
 伽黄は呆れたように溜息をつく。
 かくして、三人の同居暮らしが始まったのだった。

                                     (終わり)
書き直しました。と言っても内容は変わってないのですが。ずっと変更したくうずうずしていたので、思い切って変更してみました。
『龍記国物語-鏡の巫女-』楽しいで頂けましたでしょうか。この話をここまで読んでくれた方に感謝の気持ちでいっぱいです。
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