終章 そして、振り出しに戻る
あの騒動の三日後、ようやく伽黄が屋敷に戻ってきた。
王宮に侵入した賊が、見つかったと言う報は聞かないから、多分見つかっていないのだろうと駿来は考えていた。それに、あの件については口止めされたし、駿来にこれ以上、関われる事ではなかったから、特に気にしない事にした。きっと、動くべきところが、動いているだろう。
伽黄の帰宅を鈴明から聴いた駿来は直ぐに伽黄の元に向かった。帰ってきた伽黄は相変わらずの不機嫌そうに机に向かっている。駿来が挨拶をするが、ただ黙って頷くだけだった。
「それで、悠は?」
との駿来の質問に伽黄は面倒そうな表情を浮かべる。
「とりあえず、この家で預かる事になった。国外追放だのはない。元々、本人もここに留まっているつもりもないみたいだしな」
「そうですか」
駿来はほっと息をつく。
「で?」
と、伽黄は駿来に尋ねる。
「え?」
駿来は驚いたように伽黄を見る。
「話はそれだけか?」
伽黄の言葉に駿来は首を横に振る。
「いえ。あります。伽黄様にお願いがあります」
駿来は真剣な表情で伽黄を見つめた。
伽黄は黙って聞いていた。
「俺、いえ。私を伽黄様の弟子にしてください。もう諦めろと言われるかもしれませんが、どうしても俺は諦められないんです。帰れる可能性が低い悠も帰る事を諦めたりはしなかった。だから、俺も諦める事できない」
ずっと皆から帰る可能性が低いと言われてきた悠だが、一度として帰るのを諦めたりはしなかった。そんな悠を見て、自分が早々と諦めて他人に嫉妬しているだけの自分が馬鹿らしい。力が弱いなどと所詮は諦めるための言い訳に過ぎない。確かに、このまま目指し続けても家族に迷惑が掛かるだけだ。だから。
「俺の家は裕福ではありませんし、このまま粘るのも馬鹿らしいとも思います。だから、これが最後です。次に落ちたら、俺はきっぱり諦めます。俺に式術を教えてください。お願いします」
と、駿来は頭を下げた。
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