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八頁
「この龍記国は四つの省と皇帝陛下直轄地、流星省に別れておる。でじゃ。ここが朱雀省甲記村」
 老人はこつこつと甲記村を叩いた。
 甲記村の北に行くと白虎省があり、東には流星省があった。西には何も書かれていないから他所の国なのだろう。
「項式寮とは式術師を統轄する機関のことじゃ。式術師は星を読み世の流れを知り、式神を操り、怨霊や妖怪から人を守るもの達のことじゃ」
 老人は地面に漢字を書きながら、説明してくれた。
 式術師とはまるで陰陽師のようだ。もしかしたら、名前が違うだけでしていることは同じなのかも知れない。
 悠は真面目に聞いていたが、神だとか妖怪だとかそんなもの信じてはいなかった。昔あんなに神に祈ったのに、神は悠の願いは聞き入れてはくれなかったのだ。神なんて存在がもしいるなら、悠は独りぼっちではなかっただろう。
「どうしたのじゃ?」
 老人に言われて、悠は首を振った。つい自分の考えに没頭してしまった。今はそんなことよりも、現実に向き合わなければ。
「あ。いえ。何でもないです。その式術師とは、どこに行けば会えますか?」
 やはり、神なんてよくわからない存在を探し出すよりも、人間を探し出す方が断然簡単だ。悠が尋ねると、老人は少し悩むように首を傾げた。
「ふむ。ここからならどちらでも行けるが。まぁ、朱雀省の方がいいじゃろう」
「あの」
 悠は戸惑ったように声をかけた。
「あぁ。すまんのう。朱雀省の桜鈴市に項式寮の朱雀省支部がある。そこを訪ねるといいじゃろ」
 桜に鈴と書いておうりんと読む字を見つめて、悠は首を傾げた。
「どれくらいで着きますか? あっ。それと項式寮の特徴を教えてください」
「ふむ。桜鈴市までは四日くらいかの。項式寮、朱雀省支部の建物は朱雀が描かれている門と赤い屋根が目印じゃ」
 老人はそう言って溜息をついた。
「だが、おまえさん一人で行かせるのはのぅ。とりあえず、わしが紹介状を書いておくから項式寮の方は何の問題もないが……」
 そう言って黙り込んだ老人を見て、悠は首を傾げた。そう言えば、この老人のことを悠は何もしらなかった。親切にこの国のことを教えてくれるのは 助かるが、この老人は何者なのだろう。項式寮に紹介状を書くと言うのだから、この老人は式術師なのかもしれない。


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