七頁
「狐に化かされて来てみれば、清らかな乙女がおりおる」
その老人は笑った。
「あのここは何所でしょうか?」
色々突っ込みどころはあるが、それよりここが何所なのか知るのが先だ。
「ここかね。ここは龍記国朱雀省甲記村じゃ」
老人は鬚を触りながら言った。
(りゅうきこくすざくしょうこうきむらね)
と、悠は頭に叩き込んだ。
「じゃが、お前さんは知らんじゃろ。遠くから来たみたいじゃしな」
老人は興味深げに悠を見つめた。
「え?」
まだ何も言っていないのにどうして、この老人は悠がこの国の人間じゃないとわかったのだろう。
「そんな服装、この国の人間はせんのじゃよ」
悠は老人に言われて、制服を引っ張った。と言うことは、この国では着物が主流なのだ。
「あの。私、日本と言う国で暮らしているんですけど、さっき突然この場所に出てしまったんです」
悠が説明すると、老人は興味深げに頷いた。
「それは神隠しじゃ」
「神隠し?」
どこかで聞いたような気がするが、具体的な内容は思い出せなかった。
「綺麗な霊力をもっているようじゃから、神様に気にいれられて、この国に連れて来られてしまったんじゃ」
はた迷惑な神様もいたもんだと思いながら、悠は気になっていることを口にする。
「あの帰れるんでしょうか?」
「帰れるぞ。国帰るなら、連れてきた神様を探すか、項式寮の式術師に頼むかじゃな」
「えっ。ちょっと待ってください。こうしきりょうとかしきじゅつしってなんですか?」
「ふむ。そうじゃな。説明せんとな」
老人はそう言って、悠を手招きした。
悠は老人の前にしゃがみ込んだ。
同じくしゃがみ込んだ老人は、木の枝で何やら書き込んでいた。ひし形の形をした絵に、書き込んでいくのは線と文字だ。最後にひし形の上に龍記国と書いて、木の枝を休めた。
そこに書かれた地図を見て、悠はりゅうきこくの書き方を知った。
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