六十九頁
との伽黄の言葉を聞いて悠はゆっくり駿来を見る。
「俺?」
駿来は自らを指差して首を傾げた。
「お前じゃない。侵入しているのは人じゃなくてだな。妖怪だ」
伽黄は辺りに視線を泳がせる。
「妖怪?」
素っ頓狂な声を上げた悠の隣では、駿来が真面目な表情を浮かべて口を開いた。
「普通、妖怪がこんな所まで入って来れないんじゃないんですか?」
「普通はな……」
伽黄は何か悩んでいるのか、ふっと黙り込んだ。
悠は駿来の服を引っ張る。
「ねぇ。今のうちに戻ったほうがいいんじゃい。巫女には一人で会いにいくからさぁ」
その言葉を聞いて駿来は微笑んだ。
「心配してくれるんだ。でも、大丈夫だよ。多分」
「いや。多分って」
っと突っ込んだ時、伽黄によって頭を叩かれた。
「声がでかい」
伽黄は周囲に視線を走らせて、直ぐに悠と駿来の方に視線を合わせる。
「しょうがない。ちょっとついて来い」
との言葉に悠と駿来は顔を見合わせて頷き、直ぐに伽黄の後に付いて走り出した。
伽黄が向かった部屋は掃除が一切されていないらしく埃っぽく、本来なら棚にある書物は無造作に床に広がっていた。それに加え、窓には黒いカーテンが張り付いている。王宮の一角とは思えないくらいの酷い荒れようだ。
「えー。入りたくないんですけど」
と言う悠の言葉は伽黄によって無視された。
伽黄は扉を閉めると、箪笥と見られる木の物体から服を引っ張り出す。
「いいか。お前はこれから俺の仕事を手伝ってもらう」
伽黄は駿来に服を差し出す。
駿来は服と伽黄を交互に見つめる。
「俺が?」
「そうだ。暇だろう。それに俺の弟子って扱いなら、試験に受かっていなくても王宮に出入りできるからだ」
「はぁ……」
駿来は困ったように息を吐く。
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