六頁
(夢。これは夢よ)
やっと思いついたのは、自分が歩いたまま寝てしまって夢を見ているというものだ。いくらなんでも歩きながら寝るなんて器用なこと悠にできるはずがない。でも、こんな状況夢でもないと説明できないのだ。
試しに頬でも抓ってみるかと、手を挙げた。
(でも、これで痛かったらどうすんの)
そう。これで痛かったら夢ではなく、現実ということになる。
(で、できない)
悠は自分の手をじっと見つめた。
夢ならいいのだ。覚めるのを待てばいいだけなのだから。だが、現実ならそうはいかない。原因を突き止め、帰らなければ。
これが、夢なら直ぐに助けが来くるはずだが、現実はそうはゆくまい。
(いや。だから、夢。これは夢なのよ。私)
と、言い聞かせるがあまり巧くいっていない。 悠は、両手で頭を抱えた。夢にしては、身にしみる寒さがリアルすぎる。
(いやー。このままじゃ給料がー)
帰ることより、給料のことを先に気にするのはいかにも悠らしい。
(うぅ)
夢なら早く覚めてくれと、悠は切に願っていた。
2
うずくまっていた悠は顔を上げて溜息をついた。
(いつまでもじっとしてもしょうがない)
それに、ずっとじっとしているなど性に合わない。悠は立ち上がって、辺りを見回した。
広大な畑が広がっているが、何も植えられていない。土が盛り上がっているから、かろうじて畑とわかるが、よく見れば雑草などが無雑作に生えていて荒れていた。もうこの土地は使われていないのかもしれない。
「んー」
土地勘もない悠にはどこに行ったら、人里があるのかわからない。適当に歩き出してもいいのだが、夜になる前には人がいる場所に出たかった。流石に野宿は嫌だ。
「ほう。これは珍しい」
と、後ろから声が掛かった。
悠が慌てて振り返ると、白髪の老人が立っていた。その老人は白い着物に白い羽織、白く長い鬚がまるで仙人のようだった。
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