四十九頁
悠が文句を言う前に、目の前にある屏風から声が掛かった。
「え……?」
悠が驚いて声を上げると、屏風の裏から龍記国皇帝陛下である燕遼賢が出てきた。
「ああ。不思議そうな顔をしているね。この後ろにも扉があるんだよ」
遼賢は市井にいた時と同じような見た目質素な格好をしていた。
王様となれば、もっと動きにくそうな格好をしていると思っていた悠は、ちょっぴり拍子抜けした。
だが、隣の伽黄の反応は違った。
「着替えていらしたんですか」
声には明らかに不快感が現れている。
(え……?)
「まぁ、そう怒ることはないだろう。今回は私的な食事会だよ。官の誰も知らないのだから、問題はないよ」
と笑う遼賢に、伽黄の目は冷たい。
「そう言う問題ではないかと思われますが。王とは如何なる時も王であるべきです。それと再三申し上げておりますが、市中をお一人でお歩きになるのはおやめください」
(え?)
相手は王様だと言うのに、伽黄は容赦ない。いや。言っている事は確かに間違ってないのだろうが、そんな嫌そうに言わないでも。
悠の反応を見て、遼賢はくすりと笑う。
「ほら、彼女が困ってるよ。少なくとも私に王としての態度を求めるなら、君も家臣としての態度をとったらどうかな?」
「取っていますよ。少なくとも師よりは」
伽黄はふいっと顔をそらした。
「まぁ、いいよ。君たちにそんなの期待してないから。それに、他の家臣と同じ様な態度で来られてもつまらないだけだからね」
遼賢はそう言って、伽黄の前に座った。
悠はどうしたらいいのかわからず、視線を漂われると鷲鳳がいなくなっている事に気がついた。悠が疑問を発するよりも前に、遼賢が口に出す。
「鷲鳳なら、見張りに外にいるよ。誰も近付けるなって言ってるからね」
にっこりと笑みを浮かべる遼賢を見て、悠は内心で溜息をついた。
(目敏い)
いや。それとも自分がそれだけわかりやすいのだろう。昨日の昼間も駿来と鷲鳳に面白いと言われてしまった事を思えばたぶんそうなのだろうと、悠は自分を納得させた。
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