三頁
「はい。女の子の声で私を呼ぶんです。お姉さまって。私に妹はいないはずなのに変でしょ」
妹どころが、親がいないのだ。その声がお姉さまなどと呼ぶのは変だ。いや。そもそも女の子の声が聞こえることが可笑しな話である。
「そうですか。困りましたね」
おっとりとしている口調の灯葉は言葉と同じく困った笑顔を浮かべている。
全てもことに親身になって聞いてくれるのは嬉しいことだが、そんな声聞えるわけがないと言われた方が悠の気持ち的にいい。否定してくれたら、ただの疲れからくる気のせいだと思えるのに。
「すみません。悠さん。これではいけませんね」
と、灯葉は頭を下げた。
「いえ。そんな」
悠は慌てて手を振る。謝ってもらうところでもないし、何より生活支援者を困らせるようなことをしたくなかった。
「悠さんの疑問に答えてあげることは出来ませんが、一つだけ。どんな選択をしたとしても、私はここで悠さんの帰りを待っています」
と、いつものように微笑みを浮かべた。
だが、悠は灯葉の言葉に含みを感じて時計を見た。時計は七時半のところに針が来ていた。
「んー!」
悠は慌てて立ち上がった。
授業が始まるのは九時だが、八時四十分頃に朝のミーティングが始まるのだ。先生が遅い日は五十分頃始まるが、早い時は早い。目指せ無遅刻無欠席なので、急いで支度したければ。バスの時間もあるし。
「ごちそうさまでした」
悠は急いで食器をまとめて、台所の流しに食器をおいた。いつなら食器を洗う余裕があるのだが、今日はなさそうだ。
「食器お願いします」
灯葉の返事を待たずにそのまま部屋に駆け込んだ。どうも今日はゆっくりしずきてしまったらしい。
怒濤の勢いで着替えをすまし、玄関に行くと灯葉が待っていた。
「悠さん。帰って来たら、お話があります」
なにやら悲しげに灯葉が言うので、何か問題でも起こったのか不安になる。
悠が不安そうにしているのがわかってか、灯葉は直ぐに微笑みを浮かべた。
「大丈夫ですよ。ただ、お話がしたいだけですから」
「そうですか」
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