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二十九頁
「そう。ここが転光門です」
 伽黄は悠と駿来を見て微笑んだ。
「ここから龍斗市に行くわけですが、二人とも行ったことがないのでしたね」
「そう」
「ああ」
 と、悠と駿来は頷いた。
「では、この布を持ってください」
 伽黄が差し出したのは白い布だ。
「どうして?」
 悠はじっと白い布を見て尋ねる。
「迷わないためにですよ。この布を離した目的地に着けず永遠に彷徨うことになりますから、離さないでくださいね」
 伽黄はにこやかに言う。
 彷徨うって何処にっと聞きたい気もするが、なんだが怖くて聞けなかった。それに、どうせ説明されてもよくわからないのだ。ならば、聞かなくてもいいかと思う。世の中には知らない方が幸せって事がよくあるのだ。悠は疑問を頭の隅において素直に布を握る。
 駿来も同じく黙って布を掴んだ。
「さて。じゃあ、お願いします」
 伽黄は扉の外に呼びかけた。
 声の反応するように扉が閉められた。天井の穴から光が差し込み鏡によって、光が反射していく。やがて光は天井から漏れ出す水に集まり、水の中央部分にぽっかりと穴が開く。
「はい?」
 悠はがっぱっと口を開ける。悠がいた世界では考えられない現象だ。科学的に証明しろと言われてもちょっと無理だ。一介の学生ではできるはずもない。それに悠は理科が苦手だ。
「じゃあ、行きますよ。絶対に布を離さないでくださいね」
 伽黄はまるで近くのお店に行くほどの軽いテンションで進んで行く。
 絶対に進みたくはないが、ここで止まるわけにも行かず、悠は仕方なく足を進めた。とにかく、絶対にこの布だけは離さないようにしようと固く誓った。
 何も見えない真っ暗な空間をただ進む。目の前の駿来が見えないことよりも、この先に出口があるのか不安になる。確かなのは掴んでいる布の感触だけだ。頼りない布の感触だけに身を委ねるのは心許ない。
 不意に目の前が光で溢れる。眩しさに悠は目を閉じた。


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