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序章 巫女の誕生
 その日は酷い嵐だった。雷鳴は轟き、降りしきる雨はまるで矢のように大地に突き刺さる。
 国の重要な巫女の誕生を前にして、周囲は慌ただしく動き回っている。五色の一人である自分も本来なら、鏡の間に赴くべきだった。だが、どうしても拭えぬ嫌な予想のせいで動けずにいた。
 一度だけ会った巫女の母上は若く健康そのものだった。それでも、出産には危険が伴うものだ。亡くなる可能性は十分ある。
 いや。不安なのはそこではなく、巫女のことだ。別に男子であっても何の問題はない。過去に男子が生まれ巫女になったことがある。
 基本的に巫女に必要な素質は霊力の高さであって、男子も女子も関係はない。自分が危惧しているのは別のことだ。

「紫の。生まれたぞ」

 自室に入ってきた同僚はもの凄く慌てていた。
「どうした。赤の」
「そ、それが」
 同僚は口ごもる。そんなに大変なことが起きたのか。

「こ、子供は、双子だったんだ」

 この龍記国は双子を忌むべきとする伝統がある。農民や商家などではあまり気にされてはいないが、皇族や巫女では気にしないわけにはいかなかった。
 きっと霊力の高さが測られた後、どちらか一方は殺されるだろう。
 そして、その宣言をするのは五色の長である自分だ。
 罪もない生まれたばかりの赤子のどちらかを殺すなど、自分にはできない。だが、誰かがやらなくてはならないのだ。
 嫌な予想が当たってしまった。当たらなければよかったものを。
 だが、もう遅い。もう子供は生まれてしまったのだから。


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