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あなたに送るチョコレート
作:井中かわす


「あ、あの、前から好きだったんですっ。それで、言いにくいんですけど…」
「え…」
「そのチョコください!!」
悟志(さとし)は、言ってしまった。
放課後の校門前、女の子が持つかわいらしいピンクの紙包みにくるまったチョコ。彼女は、目を丸くして悟志を見た。
「え…」
彼女は何度もその『え…』を繰り返す。彼の発言を確かめるように。
「あの、これ…8組の吉沢くんにあげたいんだけど…」
あちゃあ、と悟志は目を覆った。
「吉沢が好きなのかあ…」
その吉沢というのは不良。だがスポーツは得意で女友達も多い。
「でも、そこをなんとか」
「え、意味がわからない…」
「わかるよ。俺が佐倉さんのこと超好きなんだから意味わかるよ」
悟志は説得する。
「俺2組の前野っていうんだけど、廊下で君が歩いてるの見たことあってさ。すっごいかわいいと思って。近くで見ると目もすごいきれい」
「…ありがと。でも急にそんなこと言われてもこっちも…」
「あ、うん。それはわかるよ。突然告られてもテンぱるよね。それは、謝るから。でもそれ吉沢にあげないで。どうしても俺にほしいんだ」
「そんな無茶苦茶なこと言われても…」
困り果てる彼女。悟志もそれに気づいて肩を落とす。
「どうしても…だめかな」
「うん、気持ちはうれしいけど」
「…俺、こんなに人を好きになったの初めてなんだ」
ぽつりと話し始める悟志。
「なんかさ。夜も眠れなくて、毎日胸が苦しくってさ」
「それは私も好きな人に対してはそんな気持ちになるよ」
「友達とかに相談してもやめとけ、無理だって言われるし…」
「私もこのチョコ吉沢くんにあげるって言ったら、友達にそう言われたわよ」
「やっぱ叶わないもんなのかな…恋って」
「…そうかな。私は叶うと思うな。ほんとに好きで、だーい好きで、この人って思ったらきっとがんばれば報われると思う」
「ええっ!?だって佐倉さん、さっき俺の告白断ったじゃん。俺キミのことめちゃめちゃ好きなんだよ?」
「それは…えっと」
彼女は考え込む。
「じゃあさ」
彼女が始めて悟志に笑顔を向けた。
「あなたもがんばればいいじゃない。私を振り向かせるように」
「キミを…振り向かせるように?」
「うん、気持ちはきっと伝わるよ?」
「…そっかな。がんばった方がいいかな」
「あ、」
彼女のふくれっつら。悟志はそれもかわいい、と思った。
「あなたの私への気持ちはそんなもんだったんだ」
「えっ、いや違うよ!俺佐倉さんのことすっごい好きだし。もうやばいぐらい」
「じゃあ、どれぐらい好きか言ってみてよ」
「え〜?どれぐらいって…」
悟志は考える。
「こんぐらい好きだよっ」
両手でめいっぱい大きな円を形どる。
「ちっさくない?」
「じゃ、じゃあ宇宙ぐらい!いや銀河か!?…んん?宇宙と銀河ってどっちがでかいんだ?」
真剣に悩む悟志。彼女がぷっと笑った。
「おもしろいね、前野くんって」
「…そう?」
「うん」
うれしそうにする彼女を見て悟志もうれしくなった。
「じゃあさ、俺今度のホワイトデーにキミにチョコ作るよ」
「手作りで?」
「うん、俺けっこう料理とか好きだし。俺の気持ちいっぱい入ったチョコ、キミにあげるよ」
「受け取るか、受け取らないかは私の自由よ?」
「ええっ!?そんな…」
「あはっ、前野くんってリアクション大きすぎ。大丈夫、ちゃんと受け取るよ?なんかおいしそうなの作ってきてくれそうだし」
「ほんと?じゃ、俺今からレシピの本探してくるよ」
「うん」
約束だよ、と。
悟志は帰ることにした。吉沢が歩いてくるのが見えたからだ。
「行ってくるね」
彼女は悟志に手をふって駆けていく。悟志はそれ以上は見ないように足をすすめた。

帰り際、待ち構えていた友人がにやにやしながら悟志に寄ってきた。
「おい、どうだった?…って聞くまでもねっか。いねーよな、ふつう。バレンタインに逆に告るやつなんてよ」
「気持ちってさ」
「あ?」
「伝わるんだね」
「…は?」
「見れるといいなあ」
悟志はうれしそうに言った。
「何をだよ」
「佐倉さんの笑顔」
「はあ?」
「あ、怒った顔もかわいいよ」
「だから知らねーって」
ふと目の前に赤焼けの空が広がっていた。
「おいしいって言ってくれたらいいなあ」


最後まで読んでくださってありがとうございました!
井中でしたw













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