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前作とはまるっきり設定が違いますが、予めご了承下さい。


二つの魂
作:Daisy Wig


 東京のとある場所に、櫻井 奈々子の家はある。
「ふわぁ・・・」
 と、ベッドに座ったまま両腕を上に伸ばして欠伸あくびをする奈々子。
コンコン──扉を叩く音が鳴り、普通の女性より背の高い人物が部屋に入って来た。
「奈々子、起きた?」
「起きてる」
 女性の名は櫻井 美穂さくらい みほ。奈々子の母である。
「ご飯出来てるから、早く降りて来てね」
 美穂はそう言うと、部屋を出て行った。
(今日から新学期。頑張らなくちゃ)
 と、奈々子がベッドから出ると、
「この歳でまた学校かよ。俺もう飽きたぜ」
 そう言って奈々子の横に現れたのは、全身半透明で二枚目の男だ。
「きゃあっ、急に出て来ないでよ。吃驚びっくりしたじゃない」
「そんな驚く事無えだろ。毎度の事じゃないか」
「そりゃそうだけど・・・」
 男の名は、櫻井 幹生さくらい みきお。奈々子が産まれる前に死んだ実兄である。
 彼女が物心ついた頃には、何故か一緒にいた。
 今は二人で一つの体を使っている。
「それより、時間無くなるぞ?」
 幹生は時計を見ながらそう言った。
 奈々子は時計を見ると、慌てて支度をして下に降りて行った。
「いただきます!」
 奈々子は食卓に着くとそう言ってご飯を食べ始めた。
 すると母がテレビのスイッチを入れた。
 それと共に音声が聞こえて来た。
「次のニュースです。今日、午前6時頃、提無逗川ていむずがわほとりで男性の水死体が発見されました。
 警視庁は、現場に残されていた遺留品などから自殺と見て捜査をして行く方針です」
「あら嫌だ。提無逗川って奈々子の学校の近くじゃない」
 と、その時、奈々子の表情が険しくなった。
「ごちそうさま」
 奈々子はそう言うと、鞄を持って去って行った。
「何あの娘?全然食べてないじゃない」
 と、呟きながら片づけをする美穂。

 杯土はいど大橋。此処は、提無逗川の東西を一つに結ぶ橋で、沢山の人々が毎日利用する。
 奈々子は今、その杯土大橋を渡っている。
「ちょっとお兄ちゃん!」
 と、奈々子の横に現れる半透明の少女。
「勝手にあたしの体使わないでよ!
 てか、学校反対方向だし・・・」
 半透明の少女がそう言うと、奈々子はこう言った。
「学校よりこっちの方が面白そうだ」
「こっちって、まさか事件に首を突っ込む気!?」
「そのまさかだ」
「ダメッ、今すぐ学校へ向かって!」
 と、少女は奈々子の前に出て通せん坊をした。が、奈々子は半透明の霊体である少女をすり抜けてしまった。
「残念でした」
 奈々子はそう言うと、橋を渡り終え、河原へ降りて行った。
 すると奈々子は、Keep outと書かれた黄色いテープで囲まれている一帯を見付けた。
「あそこが現場だな」
 奈々子はそう呟くと、その黄色いテープの前まで歩いて行った。
「通して下さい」
 と、奈々子が黄色いテープを潜ろうとすると、見張りの警官がそれを遮った。
「君、勝手に入っちゃ駄目だよ」
 すると奈々子は、ウルウルと涙目で警官を見詰めた。
 警官は困り果てた様子で、
「そんな顔されても通せないよ」
 すると奈々子はムスッとふくれ、
「どうして駄目なのよ?てかアンタあたしが誰だか分かってんの?
 名探偵櫻井 幹生の妹の奈々子様よ?な・な・こ・さ・ま!
 そのあたしを捜査に混ぜてくれないってどう言う事よっ!?」
 と、仕舞いには警官の胸倉を掴む始末。
「ちょっ、ちょっと放して下さい。公務執行妨害で逮捕しますよ?」
 と、その時、テープの向こうから女性がやって来た。
「一体何の騒ぎ?」
 その問いに警官は、
「この娘が放してくれないんです」
「あら、奈々子ちゃんじゃない?久しぶりね。元気してた?」
 その言葉に、奈々子は警官を手放して脇へ放り投げ、
「三塚井警部じゃないですか!お久しぶりですね。
 で、今日はどんな事件?川って事はやっぱり水死体?」
 女性の名は三塚井 小百合みつかい さゆり。警視庁捜査一課の警部である。
 その小百合が、奈々子にこう言った。
「その通りよ」
「警部、何捜査の状況話してるんですかっ!?」
 そう言ってやって来たのは、部下の木下 成一きのした せいいちだ。
「あら木下君、何か文句でも?」
「何か文句でも?じゃありませんよ!
 一般市民に捜査の状況を話すなって警部いつも言ってるでしょ。自分でそれ破って良いんですかっ!?」
「良いのよ、この娘は特別なんだから。と言うか別格。
 所で奈々子ちゃん、学校はどうしたの?」
「サボり。学校よりこっちの方が面白そうだから」
「って事は捜査に協力してくれるって訳ね?でも残念、今回は自殺よ」
 小百合はそう言って、遺書と書かれた白い封筒を取り出した。
 その封筒の中には、
『ごめんなさい、自殺します。』
 と、パソコンで書かれた一枚の紙が入っていた。
「でもさ、これパソコンで打ったのを印刷してるよね。って事は、誰でも作れるよね?」
「と言うと、つまり?」
「他殺の可能性もあるって事だよ」
 その言葉に小百合は、
「そう言われてみれば、そんな気がする・・・」
 と、軽く上を向いた。
「三塚井警部、彼の自宅へ行って下さい。
 恐らく、彼は自宅で殺されたのではないかと」
 小百合は頷くと、
「木下君!」
 と、彼の方を向いた。
「解りました!」
 木下はそう言うと、小百合と共に土手を登った所に停めてある覆面パトカーの下に向かった。
 奈々子はその様子を見つめながら、
(俺は置いてけぼりかよ、おい)
「良かった。これで学校に行ける」
 と、奈々子の横に例の少女が現れた。
「わっ、お前起きてたのかっ!?」
「起きてたわよ。
 それより、早く私の体から出なさい!」
 少女はそう怒鳴り散らし、奈々子を睨みつけた。
「しょうがねえな」
 奈々子がそう言うと、その体から幹生が抜け出し、入れ替わりに少女がそれに入った。


 提無逗川から少し離れた住宅地。
 小百合と木下は、ある団地の2階の奥田と書かれた扉の前にいた。
コンコンッ!──木下は扉を叩いた。
「どちら様ですか?」
 そう言って部屋から出て来たのは、被害者である奥田 哲夫おくだ てつおの妻だ。
 小百合はその女性に、
「警視庁の三塚井です」
 と、警察手帳を見せた。
「先程、貴方のご主人が提無逗川から遺体で発見されました」
 その言葉に、女性は顔色を変えた。
「そんなっ、哲夫さんが!?」
「ええ。それで、少しお話を伺おうと思いまして・・・」
「そう・・・ですか・・・。私に答えられるものがあれば何でも訊いて下さい」
 女性はそう言うと、小百合達を中に入る様促した。
 すると、小百合達はお言葉に甘え、中に入れて貰った。
「今お茶を入れますから先に席に座っていて下さい」
 女性はそう言い残し、お台所へと入って行った。
 その場へ残された二人は、部屋にソファを見付け、そこに座った。
「木下君、悪いんだけど、お風呂場を見てきて貰える?」
「えっ、でもまだ・・・」
「良いから!」
「はい!」
 と、木下は去って行った。
 それから暫くすると、女性が三人分のお茶を持ってやって来た。
「あの、男性の方は?」
「あ、彼なら電話が掛かって来てちょっと外に」
 と、慌てて言う小百合。
「刑事さん、嘘が下手ですね。目が泳いでますよ?」
ギクッ!──小百合は少し焦った。
「そ、それじゃあ先ず、貴女のお名前からお伺いしましょうか」
 と、メモ帳とボールペンを取り出す小百合。
 女性はお茶をテーブルに置くと、腰を下ろして名乗った。
 奥田 早百合おくだ さゆり。それが女性の名である。
「さて、ご主人の事ですが、死亡推定時刻が昨日の午後11時前後となっています。その頃、貴方はどちらにいらっしゃいましたか?」
 小百合がそう訊くと、早百合は慌ててテーブルをひっくり返し、ベランダに出て飛び降りた。
「待ちなさい!」
 と、小百合はテーブルを退かしてベランダに出ると下に目をやった。が、既に早百合の姿は無かった。
(逃げられたっ!?)
 と、力を抜いて座り込む小百合。
「警部、何処ですか?」
 そう言ってベランダに出て来たのは木下だ。
「あ、警部、そんな所で何してるんですか?」
「そんな所で何してるんですか?じゃないわよ!逃げられちゃったじゃない!」
 小百合はそう怒鳴って木下を睨んだ。


 赤い夕焼けが綺麗な午後の空。
 早百合が杯土大橋の上から流れる川を見つめていると、
「奥田さん?」
 と、少女の様な高い声が横で聞こえた。
 早百合がふと振り向くと、そこには奈々子が立っていた。
「奈々子ちゃん?」
 その言葉に、奈々子はニッコリと微笑むと、直ぐに表情を暗くした。
「さっき学校で聞いたんだけど、先・・・いや、哲夫さん、自殺をなされたそうですね」
 すると、早百合は俯いた。
「しかし私には、これがどうしても自殺には思えなくて・・・」
「えっ?」
 と、顔を上げ、奈々子を見る早百合。
「これを見て下さい」
 そう言って、懐から遺書を取り出して見せた。
「これは哲夫さんが持っていた物です」
「これが、どうかしたの?」
「何か妙じゃありませんか?」
「何が?」
「それ、パソコンで打たれているんですよ。
 と言う事はつまり、他の誰かがそれを作り、哲夫さんを殺害する事も可能って事なんですよ」
 と、早百合を睨み付ける奈々子。
「なっ、何が言いたい訳?」
「奥田さんも往生際が悪いですね。
 哲夫さんを殺害したの、貴方なんでしょ?」
 その問いに、早百合は軽く笑ってこう言った。
「面白いわね。聞かせて頂戴、貴方の推理を」
「では、昨夜の事を話しましょう。
 先ず、貴方は入浴中の哲夫さんの下へ行き、睡眠薬を嗅がせて眠らせ、彼の顔をお湯に浸けて溺死させた。
 その後、貴方は遺体に服を着せ、その遺体をこの杯土大橋まで車で運び、そこで予め用意しておいた遺書を彼のポケットにしのばせ、この橋から遺体を投げ捨てた。
 これが私の推理です」
 奈々子が話し終えると、早百合は膝を地面に着いた。
「全部、全部完璧だと思ったのに・・・」
 と、涙を垂らす早百合。
「動機は何なんですか?」
「借金よ。借金を返したかったから殺したの。それだけ。
 でも、もう返してる暇、無いわね・・・」
 と、ゆっくり立ち上がってフェンスを跨ぐ早百合。
「待てっ、早まるな!」
「良いのよ。どうせ檻に入れられるくらいなら、此処で死んで哲夫さんの下に逝くわ」
「無理だ。アンタは哲夫さんには会えない。
 何故なら、アンタは地獄に堕ちるからだ」
「バカみたい、そんなオカルトじみた事、ホントに信じてんの?」
 と、その時、強風が吹いて早百合は足を踏み外した。
「奥田さんっ!?」
 と、奈々子は早百合の手首を掴んだ。
「放してっ、私は死にたいの!」
 早百合がそう言った瞬間、奈々子の体に哲夫の霊体が重なった。
「「駄目だっ、死ぬなんて俺は絶対許さねえ!」」
 奈々子の口から発せられたその声には、哲夫だと思われる男性の声が混じっていた。
「哲夫さん?」
「「早百合、腹の子の為にも生きろ!
  そして罪を償え!」」
 そう言って、奈々子は渾身の力で早百合を引き上げた。
ドタッ!──奈々子は尻餅を突いた。
「痛っ!」
 と、涙目になる奈々子。
「哲夫さん!」
 早百合は奈々子に抱き付いた。
「哲夫さん、ゴメンなさい。私、アナタの事を!」
「「気にするな。俺はお前の事は恨んじゃいない。寧ろ、恨まれるべき人間なんだ」」
「哲夫さん、私、自首するわ。自首して罪を償う」
「「ああ、それが良い」」
 哲夫はそう言い残すと、奈々子の体から出て行った。
「どうでも良いけど奥田さん。恥ずかしいから放してくれません?」
 奈々子がそう言うと、早百合は慌てて彼女を放し、
「哲夫さんはっ!?」
 と、奈々子に訊ねた。
「哲夫さんは、逝くべき場所へ逝きました」
「そう・・・。
 じゃあ私はこれで」
 早百合はそう言い残し、奈々子の前から去って行った。
「良かったんだよね?これで・・・」
 そう言って奈々子の横に現れたのが、半透明の少女である事は、言うまでも無い。
「でもさ、まさかホントに奥田先生の魂連れて来るなんてね」
「その方が良いと思ったんだ。あの人を説得するにはね」
「ふうん。
 所で、何時いつまで入ってるつもり?」
 と、少女は奈々子を睨み付けた。
(ったく、もう少し良いじゃねえか)
 そう思いつつ、幹生は奈々子の体から抜け出た。


            To be continued...かな?




オカルトキタ━━━━━━(゜∀゜)━━━━━━!!













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