風紀委員長と生徒会長。
男前(?)平凡×クール男前。
多分。
ある日の事。付き合っていた幼馴染み(男)から、
「やっぱり、平凡な静雪より格好いい人の方が良いや。だから、僕と別れてくれる?」
「って言われたんだけど、どう思うよ生徒会長。」
「そもそも何でアレと付き合った風紀委員長。」
幼馴染みに別れを切り出され関係を終わらせた翌日。風紀委員長である俺、嵩原 静雪(平凡)は、生徒会室で黙々と仕事を片付けている生徒会長、王泉寺 叶雨(超イケメン)に、ちょっかい、もとい話し掛けていた。
「いや、あいつ曰く「僕、男同士ってよく分からなくて。知らない人より静雪と付き合ったら少しは慣れると思うんだ。」らしくて。だから?」
「棒読み・・・。しかも付き合い出した一週間後に他の男に乗り替えてんじゃねぇか。結局。」
「まぁ、あいつミーハーな上にぶりっこだからなー。平凡の俺に食指が動かなかったんだろうよ。」
「それ以前にお前の好みの真逆じゃねぇか。」
王泉寺の言う通り、幼馴染みは俺の好みの対極にいる。
俺の幼馴染み、森河 姫更はプラチナの髪と翠の大きな瞳を持つお人形の様に綺麗な顔立ちの美少年で、先月この音衡学園に転入してきた。
別に学園に来たのはいい。理由もあいつの両親が海外出張とかで両親の友人であり俺の叔父の理事長に頼んで此処に転入させたんだろう。そこには何も言うことはない。
俺が気になってるのは、学園の人気者達を次々に虜にしていることだ。
転入初日に姫更を迎えに来た副会長の似非笑顔を見破り惚れられ、双子の会計と庶務を見分け惚れられ、ワンコ書記の言葉を理解し惚れられ、同室の不良を手懐け惚れられ、同クラスの爽やか君に元気よく話し掛け惚れられ、親衛隊もビックリの姫更ハーレムをいとも簡単に作り上げた。
これを見た俺の友人兼部下の風紀副委員長が、
「王道キタ━━━━!!」
と、叫んでいた。ただしアンチ王道というものらしい。
ハーレムを作る事は同じだが、スケープゴート(親衛隊除け)として平凡で大人しい気弱な生徒を自称"親友"に仕立てあげ、その生徒が親衛隊に制裁されている間にハーレム化を作った本人は取り付きにぬくぬくと守られるのだと。
普段無表情な癖に声だけ明るい微妙なギャップを持つ友人が、その日だけは長い付き合いのお陰か慣れている俺が引くほどテンションが高かった。(声だけ)
ただ、その情報があったからこそ"親友"にされていた生徒を保護出来た。
その生徒はその後、何故か養護教諭(ふんわり綺麗系)といい感じになっているが。
姫更の取り巻き化した生徒会役員は仕事を放棄し、姫更にベッタリくっつき、残された仕事は唯一惚れなかった生徒会長の王泉寺が一人でやっている。
幸い風紀の人間は姫更の事はどうでもいいらしく、真面目に仕事をしている。その為余裕があったのでさぁ、そろそろ王泉寺を手伝うかーと思っていた矢先の事。
「男同士付き合うのって僕わかんない。だから僕と付き合ってよ静雪。」
これである。
俺は男に気持ち悪いくらいの猫撫で声でぶりっこしてるくせに(イケメン限定)今更とか、付き合うなら取り巻きの中から選べよとか色々言いたいことがあったが、コイツも退かなかったから仕方なく付き合った。
俺の好みからかけ離れてるし、たとえ取り巻きが何かしてこようが返り討ちに出来るし、幼馴染みの頼みならまぁいいかと思っていたのに。
「別れてくれる?」とか、コイツ舐めてんのか。
や、確実に俺を下に見てるんだろ。取り巻きを撃退してる時、あいつは心底驚き信じられないと口に出しやがっていた。どんだけ弱いと思われてんだ俺は。これでも学園内の生徒を全員潰せるくらいには強いわ。だからこそ風紀委員長に選ばれたんだし。
ていうか、姫更の次のターゲットが俺的には嫌なんだけども。
「お前の好みは可愛いや綺麗より、格好いい、男前の方だろ。」
「だって、可愛い子なら男より女の子選んだ方が普通に良いだろ。何でわざわざ女の子みたいな男の子と付き合うのか解らん。」
「嵩原は変なところで拘りがあるな。」
「コレ拘りか?あ、そうそう。王泉寺さー。いま姫更に狙われてるから気を付けろよー。全力で避けろ。逃げろ。」
「・・・は?」
王泉寺に姫更について忠告すれば、綺麗な男前の顔をポカンとしながら俺を見る。
そんな顔をしていてもイケメンとは、さすが美形。
平凡な俺とは違うなー。
「・・・・・・何故俺がアレに。興味がない。」
「嫌そうだなー(笑)。学園内一イケメンのお前があいつに靡かなかったからだろ。自分大好き、自分が一番に愛されてないと気が済まないあいつがこの状況を嫌ってるからな。お前があいつに落ちるまでつきまとわれるぞ?」
「・・・・・・・・・(嫌)。」
「勿論俺が守るけどさ、そんなに嫌なら恋人でも作れば?」
何気なく発したその言葉に王泉寺がピタッと止まり、目を見開いて俺の方を見る。かくいう俺も王泉寺の珍しい表情に固まる。え、何か変な事言ったか?
「・・・恋人?」
「え、あ、おう。恋人。それさえ作れば少しは姫更への牽制にはなるし、その恋人に守ってもらえるだろ?あ、けど好きでもない奴と付き合うなよー?ちゃんと好きなや、つと・・・。」
「・・・っ。」
王泉寺には、ちゃんと好き会う同士で付き合ってくれればいいなー。王泉寺が幸せでいてくれれば俺もそれなりに幸せかもなー。とか思ってたら途中でブレザーを引っ張られた。案外強く引っ張られたので服が伸びると抗議しようとして王泉寺の方を振り向くと、思わず息を飲んだ。
何故なら、先程まで涼しい顔して大量にあった書類をクールに片付けいた王泉寺は今、
普段の王泉寺とは思えぬほど瞳を潤ませ泣きそうになりながら俺を見ていた。
「・・・王泉寺?どうした?」
「・・・っ。お、前は・・・。お前は俺に恋人が出来たらどう思う?」
「どう思うって・・・。」
「俺は・・。俺は嫌だ。お前に恋人が出来たら、俺以外の男がお前の隣に立っていたら、俺は間違いなく発狂する。」
今度は俺が目を見開いてしまった。それではまるで、
「王泉寺、お前まさか・・・。」
「っ。好きだ嵩原。初めて会った時からずっと。・・・嵩原、もう一度聞く。俺に恋人が出来たらお前はどう思う?」
未だ潤む瞳と真顔で問う王泉寺に俺はとうとう我慢が出来ずに抱きついた。
「っ!た、嵩原?」
「あー!もう!俺だって好きだバカヤロー!!」
「!!!」
俺のヤケクソな告白に顔を真っ赤にする王泉寺に気にせずヤケクソなまま叫ぶ。恥とかあるかバカヤロー!!
「なんなのお前!人がせっかく緩やかに諦めようとしてるところでいきなり告白とかっ!」
「え、は?あきっ」
「俺は平凡だし家柄だって今は一般家庭だしあんな面倒くせぇ幼馴染みがいるし良いとこなんかありゃしねぇだろ!そんな俺が顔も家柄もスペックも超一流のお前に惚れてるって事になったら、親衛隊がうるせぇし何よりお前に迷惑掛けるだろ!どうしてくれんだこの野郎っ。」
「・・・っ。・・・っ。」
ヤケクソに放った本音をぶち撒ければ只でさえ真っ赤だった王泉寺の顔が更に赤くなり俺の肩にグリグリと頭を擦り付けていた。なにコレくそ可愛い。
「俺の恋心を暴いた責任ちゃんと取って貰うからな?覚悟しとけ。」
「・・・っ!当たり前だっ。お前こそ俺を取り逃がすな。」
「ふっ。上等!」
何だか予想外な方向に向かってしまったが、とりあえず俺は満足なので良しとしよう。
姫更に取られたくはねぇしな。
さぁて、どうやって姫更を潰そうかなー。
この後静雪くんは幼馴染みを叶雨くんに近付かせないためにあらゆる手段を使います。
権力万歳。
静雪は「今は一般家庭」 と言っていましたが、彼は元々父親の実家である音衡の後継者で、色々な所から狙われているために母方の苗字を名乗り一般生徒として学園に通っています。
叶雨の実家と同格の上、叶雨が次男坊な為割りと祝福されている。
叶雨は静雪大好き。一目惚れした後は一途に好いていました。幼馴染みが学園に来てからは少々不機嫌になったり、静雪と幼馴染みが付き合ったと聞かされた時は泣きそうになっていた。(静雪本人から好みが違う発言を聞いたので泣かなかった。ギリギリ。)
ヤケクソ気味の静雪の口調が悪いのは、本来の喋り方がそちらだから。
姫更に巻き込まれた影響があの口調なので普段は猫被ってる。
特に叶雨に対しては愛しさが入るので殊更優しい。
とりあえずバカップルになりそうな予感。