表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
55/58

第51話 軽い手合わせ

「よろしかったのですか、主」

「別にいいよ、それほど急いでた訳じゃないから」

「かしこまりました」


 俺とセバスは今、アーシャの家の一室に居る。

 勇者達はアーシャの父親と話をしている最中だ。

 この町ならとりあえず、忍者の危険はないだろうからな。

 この町に留まれるかは勇者達次第だろうけど。


 そして俺とセバスがなぜアーシャの家の一室でくつろいでいるかと言うと、セバス達の話をゆっくり聞くのと、俺のMP回復のためだ。

 正直予想していた以上にMPが減っている。


 旅をするのに魔法が使えないのはかなり不便になるだろうからな。

 野営とかいろいろなところで。

 だけど今は、来客の話を先に聞くことにしよう。


「少し出てくるよ」

「かしこまりました。お気をつけて」


 俺はセバスの言葉に頷きながら、部屋の扉を開ける。

 すると扉の外にはレオさんが立っている。

 先ほどから扉の前で入りにくそうにしてたから、こちらから出ることにしたのだ。


「どうしたんですか、レオさん?」

「少しいいか?」

「えぇ」

「助かる。……ついてきてくれ」


 レオさんはチラッと部屋の中を見てから歩き出した。

 もちろん俺はレオさんについていく。


ーーーーー


「この町には、後どれぐらい居るつもりなんだ?」


 前を歩くレオさんについて行きながら町の中を歩いていると、レオさんが急にそんなことを言ってきた。

 どんな表情で言ったかはわからないが、とりあえず聞いてみたような感じの言葉だった。


「そうですね~。……大体五日ぐらいだと思います」


 俺は自身のMPの回復量を見ながらそう言った。


「五日……そうか、五日か」

「それがどうかしたんですか?」

「……いや、何でもない」


 レオさんはそう言うとまた黙り込んでしまった。

 何か言いたいことがあるんだろうけど、言いにくいって事か?

 とりあえずレオさんが言いたくなるまで待ってみるか。


 それから数分、レオさんは特に何かするわけでもなく、ただ町を歩いていた。

 俺はそんなレオさんの後ろを、離れることなく歩いていた。

 しかしながら余りにも暇だったので、人間観察ならぬステータス観察をしていた。


「……ヨウ、部屋の中に居たのはお前の仲間か?」

「え……えぇ、そうですよ」


 余りにも唐突だったのと、ステータス観察に集中し過ぎていたため少し嘘っぽく言ってしまった。

 そのせいか、レオさんがチラッと俺の顔を見てきた。


「そうか。部下や手下ではなく、仲間なんだな?」

「はい、仲間ですよ。それがどうかしたんですか?」

「やはりそうだったか」


 レオさんはそう言いながらその場に立ち止まり、空を見上げながら大きなため息をついた。

 そして、何かを決意したかのように力強く振り返り、俺を見てきた。


「ヨウ。俺と本気で手合わせをしてくれないか」

「……いいですよ」

「ありがとう」


 何が目的なのかは全く分からない。

 ただなんとなく、断らない方が楽しそうな気がしただけだ。

 決してMPが使えなくて、いろいろ試せなくて暇だからってわけじゃない。

 楽しそうな気がしたからだ。

 

ーーー


 レオさんと共に町を出て数分、少しデコボコした場所にたどり着いた。


「ここは俺がよく訓練に使ってる場所だ」


 レオさんはそう言いながら腰からレイピアを抜き、左手で構える。


「ヨウ、お前も得物を構えろ」

「わかってますよ」


 俺はそう言いながら、2本の刀を抜く。


「それじゃぁ始めるか。バンク。この銅貨が地面に落ちたと同時に開始でいいか?」

「えぇ、俺は構いませんよ」

「そうか。本気で頼むぞ」

「わかってますって」


 俺がそう言うと、レオさんは苦笑いしながら銅貨を空中に投げた。

 俺は空中に投げられた銅貨を目で追う。

 なぜかゆっくりと時間が流れているように感じながら。

 そして銅貨が地面に落ちたと同時に俺は動き出す。


「きえ……参った」


 レオさんはそう言いながら、深くため息をつく。

 俺は今、レオさんの後ろに居る。


 そして右手の刀は、レオさんの首の右側に。

 左手の刀は、レオさんの腰に当たっている。

 もちろん当たっていると言っても、刀の峰だ。


「まさか動きを見ることすらできなとは」


 レオさんは後ろを振り返りながら言う。

 

「手を抜いた方が良かったですか?」


 俺は冗談気味にそう言った。


「いや、本気できてくれて助かった」

「それで? 結局何だったんですか?」

「お前に頼みたいことがあったんだが、一撃でも攻撃を当てることができれば頼もうと思っていたんだ」

「何ですか、頼みって?」

「もういいさ。それに仲間も居るみたいだしな、あまり無理に引きとめるわけには行かないさ」


 なるほど、アーシャ父と同じような頼みってところかな?

 それならあまり聞いても、俺がめんどくさくなるだけだな。


「そうですか」

「あぁ、そうだ。それよりも部屋に居た仲間も、こんなに強いのか?」

「どうでしょう? 少し離れて行動してましたから、弱くはないと思いますが」

「ヨウからして弱くはないか……心底敵じゃなくてよかったと思ったよ」


 俺が顎に手を当てながら答えると、若干引き攣ったような笑顔でレオさんはそう言った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ