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第47話 親子

「次は俺の話を聞いてもらってもいいですか?」

「もちろんだとも」


 そう言ってもらったが、俺はわざとアーシャ達を見て言いにくそうにする。


「パパ、お茶をとってくるです」

「あぁ、頼んだよ」

「はいです!」

「俺達も手伝おう」

「なんで私まで」

「いいから行くですよお姉ちゃん」


 アーシャ姉以外は俺の意図を察してくれたらしく、自ら席を外してくれた。

 アーシャ姉はアーシャに連れていかれるようにして部屋を出て行った。


「それで? 2人きりで話したい内容とは何かな?」

「話というより、質問と言ったほうが正しいですかね。……何故3人はトゥーエル王国から命を狙われていたのですか?」

「どうして今になってそんなことを聞くのかな?」


 アーシャにパパと呼ばれていた男性は、笑顔そう言ってきた。


「アーシャ達はあからさまに聞かれるのを避けていましたから。それに先ほどの話とも関係してるんじゃないですか?」

「……本当に君は鋭いね。けれど少し違う。3人ではなく、2人だよ。レオ君は2人のお目付け役兼護衛だったんだよ」

「そうだったんですか。ですがお目付け役はいいとしても、護衛は力不足だったんじゃないですか? 結局俺が護衛として雇われたわけですし」

「そのことに関してはこちらの読みが甘かったとしか言いようがない。まさかディスペルタルまで動くとはね……」


 男性はそう言いながら頭を抱える。

 ディスペルタルが動かなければ、レオさんだけで対処できたということか。

 いや、アーシャ姉も数に入ってるだろうな恐らく。


「トゥーエル王国にそうまでして命を狙われる理由とは何なんですか?」

「…………戦争をしたいんだと思うよ」


 男性は必死に考えてから、意を決して答えた。

 だがその答えでは疑問が残る。

 なぜそんな危険な国に娘2人を行かせたのか?


「なぜそんな危険な場所に娘を行かせたのかと思ってるでしょ?」

「それはもちろん」

「そうだろうね。でもこればっかりはどうしよもなかった。外交上の都合があってね。どうしてもトゥーエル王国のある、アナトレー大陸に行かせなければならなかったんだ。それも護衛は1人までという条件で」


 この世界の外交ルールなんて、俺にはわからない。

 この人が言うならそうなのかもしれない。

 あるいはそうじゃないのかもしれない。


 その判断が正しかったのか間違っていたのかは別として、今はこの人の言うことを信じなければ話が進まない。

 それに、俺がまたこの町に来てほしい理由も説明がつくしな。


「いろいろ事情があったということですね」

「そうだね。君も気づいてると思うけど、この町はかなり特殊だからね」

「はい。俺は人間と亜人種は仲が悪いと聞いてましたから」

「それは間違っていないよ。確かに仲が悪い……いや、恐怖していると言ったほうが正しいね」

「恐怖ですか?」

「あぁ、最初に聞いたよね? 僕のことが怖くないのか、と。そして君は怖くないと答えた」

「はい」


「では恐怖とはどんな時に感じると思う?」

「……自身ではどうしよもない力に遭遇した時ですか?」

「間違いではないけど、正解ではないね。正解は、未知・・、だよ」

「未知ですか?」

「そう、未知だよ。圧倒的な力を持った物に遭遇した時、人はまず考える。どうしてそんなに強いのか? どんな技を使っているのか? 何をどうしたのか? そしてそれらのことが理解できなければ、人は恐怖する。なぜなら、わからないからだ。どんな行動をとるのか? どう対処すればいいのか? 自身はどうすればいいのか? 考えれば考えるほど、わからないことが増えていき、人は考えるのをやめる。自身ではどうしよもないと、諦め、恐怖する。だから、未知こそが恐怖の根源、知らないということは、それだけで恐怖になりえる」

「……」


 言っていることは理解できる。

 何をされるのかわからない、なぜこんなことをされるのかわからない、それらは恐怖でしかなかった。


「そしてその恐怖を乗り越えた者のみが、先に進むことができるんだよ」

「その結果がこの町だと?」

「そうだよ。怖がっていては先に進むことはできないからね。勇気を出して一歩、たった一歩進むだけで、状況は変わるものなんだよ。良い悪い関係なく、ね。ただこの町は良いように転んだ、それだけの話だよ。他には聞きたいことはないかい?」


 この町はということは、悪いように転んだ町も存在するということなんだろうか?

 だがそれを聞くのは流石に気が引ける。

 あまり聞かれたい話でもないだろうし。


「最後に一つ。アーシャが貴方のことをパパと呼んでいましたが、親子なんですか?」

「似てないだろ?」


 男性は笑いながらそう言ってきた。


「なんというか……はい」

「いいよ気にしてないから。でも正真正銘親子だよ。ミルドレットもアーシャも、母親に似たんだ。この町ではそんなに珍しいことでもないよ」

「そうなんですね」


 なるほど。

 アーシャもアーシャ姉も、人間と亜人種のハーフってことか。

 だからアーシャのステータスに、固有スキルの[咆哮]があったのか。

 それにしても人間の血をかなり色濃く受け継いでるんだな。

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