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この作品には 〔ガールズラブ要素〕〔残酷描写〕 が含まれています。

私の最愛の世界に感謝を

作者:サウス・ジュン
私にとって、彼女だけが私の世界だった。
いわゆる幼馴染の彼女はいつも私の隣にいてくれた。

家が隣同士、学校もクラスも一緒。
席替えも彼女とは何故かいつも隣だった。
班行動も彼女と一緒、二人一組も彼女と一緒。

彼女が休むなら私も休む。
私が休むと彼女も休む。

いつだって一緒だった。

幸福だった。

他には何もいらなかった。

それなのに・・・・・


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


携帯のアラームが鳴る音で目が覚める。
眠い目をこすりながら、アラームを止めて布団から起き上がる。
時間を確認すると、6時ぴったり。

起きて、顔を洗って身だしなみを整えたら、台所へと向かう。
冷蔵庫を確認すると、昨日の夕飯の残りがあったので、それと少し作れば昼の弁当は大丈夫だろう。

簡単に頭の中で献立を組み立てると、私はとりあえず朝ごはんを作る。
今日の気分はパンなのでコーヒーをいれて、スクランブルエッグと、ベーコンを皿に乗っけて朝食は完成。

平行して、昼の弁当を作り、熱を冷ましている間に朝食をとる。
テレビをつけて、天気予報とニュースをぼんやりと見ながら、朝食をとる。

(つまらない・・・)

朝は特に思う。
寂しいし、つまらない。

私の世界はもうないのだと思うと気分はさらに沈む。

それでも、時間は過ぎていく。
私は急いで準備をすると、学校へと向かう。

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

ここ1ヶ月歩き慣れた通学路を歩く。

高校に入学して一月の間に一般的には人間関係の構築は終わっているのだろう。
とはいえ、もちろんそこに馴染めない人間もいる。

私もそんな一人だ。

何故かというと・・・

教室のドアを開けると、上から何かが降ってきて、私の頭を白く染める。

地面に転がったそれは黒板消しだった。
それを確認すると同時に教室内から笑い声が出る。
視線を向けると、クラスのトップカーストに君臨する女王様である、望月が取り巻きと一緒に私を指差して笑っていた。

「やっばい!ちょーうけるぅ!」
「さすがにそれに引っ掛かるとかどんだけだよww」
「笑いすぎてお腹いたい(笑)」

それをスルーして、私は頭のチョークの粉を払ってから席へと向かう。
机にはいつも通り、落書きがしており、それを一瞥するとスルーして教科書を鞄から出す。

(また、昼休みに綺麗にしなきゃな・・・)

そんな面倒なことを思いながら予習を始める。
望月達はまだこちらを指差して笑っていた。

その他のクラスメイトも半分くらいは笑っていた。
残りの半分は、こちらを憐れに思いながらも火の粉を怖れる者と、どうでもいいとスルーしているものと様々だが、概ね私の味方はいない。

(まあ、人間なんてそんなものよね・・・)

望月の嫌がらせは今に始まった話ではない。
私の世界が・・・幼馴染が去った5年前のからずっとだ。

望月と私は小学校から高校まで同じで、昔は幼馴染がいたから手は出してこなかった。
しかし、幼馴染が引っ越して私が一人になると、彼女は私に嫌がらせを始めた。

不快には思ったけど、私はそれよりも私の世界が無くなったことに心が挫けそうだった。
それでもなんとかやってきたのは、多分意地だと思う。

私の両親は仕事で家には帰ってこない。
幼馴染がいない今、私は完全に一人だ。

それでも・・・

そんなことを考えていると、チャイムと同時に担任が入ってきた。
この担任は今までの担任の中では当たりの方だろう。
若干のセクハラまがい言動はあるが、概ねクラスに無関心。

今までの担任は望月と一緒に私を責めるか、慰めるふりをして、セクハラをしてくるかがほとんどなので、無関心なのはありがたい。

「あー、今日は転校生がいるから紹介する。入ってこーい
。」

そう担任が言うと、前のドアから一人の美少女が入ってくる。
長い黒髪と、全体的にスラッとしたモデルのような体型に、整った顔立、そして、柔和な目元なのに、その瞳には強い意思を感じる美少女・・・

誰もが無言だった。
圧倒されていた。
あまりの美少女に望月でさえも見惚れている。

しかし、私はそれとは別に無言だった。
何故ならそれは私の知ってる瞳の強さで・・・

私が、驚いていると、彼女はこちらをみて微笑んだ。

「帰ってきたよ!ゆうちゃん!」

ーー私の世界が帰ってきたーー
そう心から思った。

彼女・・・さっちゃんは私に微笑んだ後で少し表情を冷たくして挨拶をした。

「水無月さつきと申します。よろしく・・・はしなくていいです。このクラスには恨みしかないので、私とゆうちゃんには関わらないでください。」

そう言ってさっちゃんはこちらへ、私の隣の空席に優雅に歩く。
クラスメイトは言われた言葉よりもその美しさに圧倒されていた。

ただ、一人、憤怒の形相を浮かべた望月だけはさっちゃんをにらんでいた。


さっちゃんは私の前に着くと、ゆっくりと私を抱き締めた。

「ごめんね・・・辛い思いさせて・・・これからは大丈夫だよ。私が一生守るから・・・」
「あ・・・・・」

耳元で囁かれた言葉に私は思わずさっちゃんの顔をみる。
彼女はどこまでも優しい表情でこちらをみていた。
どこまでも変わらない彼女のその顔をみて、私は思わず、長年の閉ざしていた心を開けて・・・

「さっ・・・ぢゃん・・・」
「うん。ゆうちゃん。」
「あ、あい・・・あいた・・・かったよぅ・・・」
「うんうん。大丈夫だよ。私はここにいるから。」

そう言って背中を優しくぽんぽんとたたくさっちゃんに私は涙が止まらなかった。

「ねぇ・・・いつまでその茶番続くの?」

黙って見ていたクラスメイトの中で一人だけ我慢の限界が来たのか、望月が声をかけてきた。

「今はホームルームなんだけど、茶番は他所でやってよ。先生も迷惑でしょ?」
「・・・・・・・」

望月の正論を聞いても、担任は黙ったままだ。
不思議に思ってそちらを向こうとすると私はさらに強い力でさっちゃんに抱きつかれた。

「あら?先生には許可は貰ってますよ?それよりも邪魔をしないでくれますか?」
「偉そうに・・・ほんとに変わってないわね!」
「あら?どこかで会ったことありましたか?」
「覚えてないわけないでしょ!望月よ!望月かなえ!」

徐々に声が荒々しくなる望月。
私はさっちゃんの胸に顔が向いていた回りは見えないけど、さっちゃんはどこまでも落ち着いていた。

「望月・・・申し訳ありませんが思い出せないわね・・・あなたみたいな影の薄い子いたかしら?」
「なっ・・・・!」
「それよりも、もう一度言いますが私とゆうちゃんの二人の時間を邪魔しないでください。迷惑です。先生には許可もらってるし、茶番に見えるなら見ないでください。」
「なにを・・・!」
「それとも、あなたの今までのゆうちゃんへのあれこれを全部ぶちまけると脅さないとダメかしら?」

私はその台詞に思わず顔を上げる。
さっちゃんは私に視線をあわせて、少し申し訳なさそうな顔をしていた。

「ごめんね。ゆうちゃんの状況は知ってたけど、準備に手間取って遅くなってしまったの。苦しいときに側にいれなくてごめんね・・・」

苦しそうな表情のさっちゃんに私は・・・

「さっちゃん。」
「えっ・・・・」

さっちゃんの頬に手を添える。

「さっちゃん。帰ってきてくれてありがとう。あと、おかえりなさい。さっちゃん。」
「ゆうちゃん・・・」
「さっちゃんがいれば他には何もいない。だから・・・」

そう言って5年前からしてない自然な笑みをさっちゃんに向けた。

「ずっと、側にいてね。さっちゃん。」

そう私が言うと、さっちゃんは少し顔を赤くしてから笑顔を浮かべた。

「もちろんだよ。ゆうちゃん。」

その笑顔はどこまでも可憐で美しく、クラスメイトを魅了した。
ただ、一人を除いて・・・

「いい加減にしろ!」

望月は思いっきり怒鳴った。

「いつまでも下らないことやってんじゃないわよ!突然戻ってきて何なのよ!あんたは・・・あんたはいつもそうやって・・・!」

望月はそう言ってこちらを睨み付けていた。
その時、丁度チャイムが鳴り、担任はそそくさと出ていった。

「ここだと再会を楽しめないわね・・・行きましょうか。ゆうちゃん。」
「授業は?」
「大丈夫よ。」

さっちゃんが大丈夫だと言うなら従うことにして、私はさっちゃんとともに教室を出ようとする。

「何よ!逃げるの!」

まだ、怒鳴っている望月をさっちゃんは一瞥したあとに、鞄から一枚の写真を取り出して望月へと投げる。
足元に落ちたそれを拾ってみた望月は途端に顔を青して驚愕の表情を浮かべる。

「あ、あんたどこでこれを・・・!」
「データはあるからあげるわ。もうこちらに構わないで頂戴。ああ、あと・・・」

さっちゃんは鞄から何枚か写真を出すと適当に辺りにばらまいて言った。

「今後、こちらに干渉したら、色々後はないと思ってね。」

そう言って教室を出ていくさっちゃんと私。
なにやら、教室が大騒ぎになってるようだけど、そんなことよりも私は繋がれた手に意識がいく。

記憶にあるよりもしなやかで柔らかなさっちゃんの手に私はドキドキしてしまう。

(どうしてこんな気持ちになるの・・・?)

胸の高鳴りは抑えられない。
そうこうしていると、さっちゃんは屋上まで私を引っ張ってきた。

「ゆうちゃん・・・」

こちらを向いて私を呼ぶ、さっちゃんの瞳には何か不思議な熱があった。
私はそれにさらに胸を高鳴らせながらさっちゃんの瞳を見返す。

「色々言いたいだろうけど、まずは言わせて。私は・・・」

そこでさっちゃん少し赤くなった顔を真剣にこちらに向けて言った。

「私はゆうちゃんが・・・好き・・・。」

どくん。と、その台詞に心臓がさらに高鳴り、鼓動が早くなる。

「この好きは、すべての意味だよ。友達として、同性として、家族として、そして・・・恋人として・・・」
「さ、さっちゃん・・・・」

真剣なさっちゃん。
知らない。こんな素敵なさっちゃん。
知らない。こんな甘酸っぱい気持ち。

「いきなりかもしれないけど、私はもうゆうちゃんを手放したくないの。だから親も説得したし、これからの未来も一緒にいれるように準備してきた。時間はかかったけど、ずっと一緒にいたいから。だから・・・」

そこで少し表情を緩めたさっちゃんは恥ずかしそうに、でも心から思っているような表情でこちらをみた。

「好きだよ。ゆうちゃん。ずっと一緒にいよう。」

その一言に私は思わずさっちゃんに抱きついた。

「ゆ、ゆうちゃん?」
「私も・・・」

やっと、わかった。
小さい頃から気づいてはいた。
でも、この気持ちはさっちゃんとは相容れないと思ってた。
女の子が女の子を好きになることはないって誰かが言ってたし、違うと思ってた。
でも・・・

「私も・・・さっちゃんが好き・・・大好きだよ・・・。」

私は勇気を出して声を繋げる。
今まで隠してた気持ちをこめて、私の特別に・・・

「私は、ずっと昔から、さっちゃんに恋してた。いなくなって離れてる間も・・・忘れようとしても出来なくて・・・私は・・・私は・・・」

怖かった。さっちゃんがいなくなってしまって。
一人になってしまって。
それと、ともに辛かった。
好きな人が側にいないことが。
だから伝える。

「さっちゃんとずっと一緒にいたい。さっちゃんの隣に未来永劫ずっと・・・死ぬまで一緒にいたい・・・だからその・・・」
「その先は大丈夫よ。ゆうちゃん。」

そこでさっちゃんに指で言葉を止められる。

「ようやく、通じたのね・・・ゆうちゃん。」
「さっちゃん・・・」

私とゆうちゃんはどちらからともなく、顔を近づけて・・・そっと・・・キスをした・・・。

「ん・・・・」
「ゆうちゃんの唇は柔らかいわね・・・」

軽いキスをしてからさっちゃんはくすりと笑った。
その表情に私は思わず頬を赤くしてしまう。

「ゆうちゃん・・・」
「さっちゃ・・・ん・・・ふぅ・・・」

深く繋がる。私とゆうちゃんはお互いを確かめあった。
そして、どちらからともなく笑いあった。

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


あれから、クラスでの私の嫌がらせはなくなった。
中には続けようとした輩もいたけど、そういう人はいつのまにかゆうちゃんが対処したのか転校していった。

望月はあれからこちらには手を出してはこなかった。

何度か突っかかってきたけど、それ以降は平穏だった。

そして、私たちも・・・・

「ねぇ、さっちゃん。」

私は手を繋いで歩くさっちゃんに笑顔を向ける。

「どうしたの?ゆうちゃん。」

さっちゃんも私に微笑んだ。
誰よりも美しい、私だけのゆうちゃん。
私は・・・

「好きだよ。さっちゃん。」
「私もよ。ゆうちゃん。」

幸せを感じて伝える。
もう一度出会えた奇跡に。

ーー戻ってきた、私の最愛の世界に感謝をしてーー


読んでいただきありがとうございます。
作者が百合を書こうとすると、どうしてもこうなる・・・

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