付与術師の特技
ここには〈付与術師〉の特技より特徴的なものを抜粋してみた。もはや説明するまでもないが、直接ダメージを与える能力は12職中最低である。〈付与術師〉の特技の多くは「敵の行動を阻害する」特技と「味方の能力を底上げする」特技に大別でき、その2点だけ見れば他職の追随を許さない性能とバリエーションを誇るといえるだろう。ただし、それは落とし穴でもあり、威力の高い攻撃をしていればパーティに貢献できる職業と違って、どの場面でどの特技を使うのが有効なのかを判断する難易度が非常に高くなってしまっているのだ。
かくして、うまく性能を発揮できない〈付与術師〉が溢れ、「いるだけ職」とくさされてしまっているわけだが、きちんと特技を使いこなせる〈付与術師〉と組んだ経験が1回でもあれば、その評価はたやすく覆るに違いない。
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◆付与術師の特技
〈パルスブリット〉
攻撃魔法_小型の光弾を撃ち出し、敵を攻撃する魔法。射出速度も高く、連打も可能であり、ヘイト上昇率も低く、けっして悪い特技ではないのだが、攻撃職としては情けなくなるほどダメージの低い呪文である。発射音も軽く、光弾の弾道もまっすぐ飛んでいくがなぜか着弾より手前でお辞儀をするなど、エフェクトはかなり地味、かつしょっぱい。そのため他プレイヤーから「お辞儀玉」「しょっぱ玉」「攻撃するふり魔法」などといわれ、揶揄の対象となってきた。実際に再使用規制時間が短く、便利に連射していけるために鍛えればダメージ出力の主軸になり得る(それにしても連射をしてやっと、という話ではあるが)。
〈キャストオンビート〉や高額なレイド装備による詠唱時間短縮などをくみあわせて、短時間ながらも1分あたり30以上の詠唱などをおこなうビルド〈スプリンクラー〉では、本職の〈妖術師〉に匹敵するダメージをたたき出せることもあると噂されるが「そんなに高額な装備をつかって一芸特化」「何やってるか判らない」「所詮は付与術師」などとイメージアップの役には立っていないようだ。
〈ソーンバインドホステージ〉
攻撃魔法_設置型と呼ばれる特殊な単体攻撃魔法。命中すると瑠璃色の茨のような輝きが対象にまとわりつく。命中しただけではダメージが発生しないが、命中した対象がその後に別の攻撃を受けたとき、そのダメージに連動してダメージを与える。付与術師の魔法としては高いダメージソースとなる魔法である。また、通常の攻撃魔法と比較して、味方の攻撃と全く同じタイミングでダメージを与えることができるため、敵の回復魔法によるリカバリーがされにくいという利点もある(たとえば施療神官の反応起動回復を想定した場合、通常の攻撃魔法1回と味方の攻撃1回を行えば2度反応起動回復が発動するが、〈ソーンバインドホステージ〉と味方の攻撃の連携に対しては1度しか発動しない。敵が神祇官であればダメージ遮断障壁を張りなおす暇を与えずに済むし、森呪遣いの脈動回復中の相手であれば、1度目の攻撃と2度目の攻撃の間の回復量を無視できる)。
もっとも、設置と起爆の2手順が必要なため速効性に欠ける難点や、他職との比較で「妖術師が普通に攻撃魔法を打ち込んだ方が手っ取り早く強い」などと言われがちだったりするなど、さほど評価が高い特技ではない。
〈ナイトメアスフィア〉
攻撃魔法・状態異常攻撃_指定地点を中心とした範囲に半透明の精神雷撃を投射し、範囲内の敵に精神属性ダメージと、移動力低下のバッドステータスを与える魔法攻撃。透き通った球状の力場が数回、周囲に広がるようなエフェクトを発生させる。系統上位特技になってもダメージはあまり伸びないが、移動速度の低下率が大きくなり、レベル90の付与術師ともなれば実に80%以上の低下率となる。また、バッドステータス付与確率は習熟位階に応じて上昇するため、効果的に運用するならばある程度の秘伝書強化は必須といえる。
〈アストラルヒュプノ〉
攻撃魔法・状態異常攻撃_敵を眠らせて無力化する魔法。使用すると効果時間の間対象にZZZと記載されたアイコンが表示される。眠りの間はあらゆる行動がとれないが、持続効果は短く最長で十数秒。しかも、効果中にダメージを受ければ強制的に目覚めてしまう。しかし、睡眠中に再び〈アストラルヒュプノ〉を着弾させれば、睡眠時間を延長することも可能。〈アストラルヒュプノ〉の再使用規制時間は5秒であるために、腕利きであれば、2体の敵を完全に無力したまま維持できる。これは専門用語で「MezKeep」「すやすや拘束」などとよばれる。習熟位階や装備の選択によっては3体~4体の敵を拘束し続けることも可能だが、魔法が抵抗されたり何らかの事故でプレイヤーの操作がミスしたりすればすぐさま目覚めて襲いかかってくるためにその難易度は決して低くはない。
レイド装備を身につけた付与魔術師のスタイルのひとつ「FREEZER」は、この〈アストラルヒュプノ〉および行動阻害魔法に特化したビルドで、その名前通り、敵の集団の行動を凍てつかせる。
〈マインドボルト〉
攻撃魔法_魂と肉体に同時にダメージを与える青白い燐火を放って敵を攻撃する精神属性の単体攻撃魔法。与えるダメージは低いが、命中すると対象のMPをわずかに減少させる付属効果がある。
付与術師の攻撃魔法としてはまずまずの性能を誇るが、付属効果が地味で、「これを使うなら他の支援系魔法を」と期待される場面が多いために影が薄い特技。
〈ブレインバイス〉
攻撃魔法・行動阻害_その名の通り脳を万力で締め付けるかの如き強烈な精神攻撃を行う精神属性の単体攻撃魔法。対象の足元に瞳を模した魔法陣が発生し、立ち上る黒い光の柱が包む。この魔法が命中すると、対象が使用する遠距離を対象とした攻撃(魔法、武器による射撃、ブレス攻撃など)の命中率が著しく低下する。また、ヘイト上昇と消費MPが多い付与術師の魔法の切り札で、他の付与術師の攻撃魔法と比較してダメージが比較的高い(もっとも妖術師の攻撃魔法と比較すると標準的なレベルになってしまうが)。事前に対象の行動パターンを把握していれば相手の封殺も可能だが、初見の敵やPvPでは利用価値がひどく下がる。付与術師の特技の例に漏れず、癖の強い強烈さを持つ魔法の一つ。単体型のレイドボスは遠距離攻撃を使わないことが稀のため、この特技が重宝がられることは多い。
〈マインドショック〉
攻撃魔法・状態異常攻撃_対象の精神に衝撃を与える紫色の光弾を放つ精神属性の攻撃魔法。光弾は地面に着弾すると爆発し、周囲を巻き込む。範囲を対象に低いダメージを与え、命中率や回避率の低下を引き起こす惑乱のバッドステータスを与える。ダメージ源としては心もとないが、相対的に味方の攻撃力や防御力を増加させるのと同等の効果が期待できるため、乱戦における出会い頭の一撃に使用されることも多い。再利用規制時間は180秒ほどで、1戦闘中に多発できる特技ではない。
〈エレクトリカルファズ〉
攻撃魔法_対象に継続ダメージ(効果の持続時間中、単位時間あたりに一定のダメージを与え続けること)を与える電撃属性の単体攻撃魔法。効果時間の間、放電する雷の弾丸が敵にまとわりつく。発動的にチャージが可能で単位時間あたりのダメージを増強することもできるが、妖術師や召喚師の魔法と比べると見劣りする。支援魔法を使い終え、大技の再使用規制時間が終わるまでの暇潰し、という意味合いで使われることも多い。
なお、対象からは継続ダメージ発動ごとに特徴的な音と光が放たれるため、〈大災害〉後は敵の位置を乱戦や夜闇で見失わないようにするためのマーカーとしての利用がされるようになっている。
〈キャストオンビート〉
その他・補助技_高速詠唱や詠唱短縮による魔法の連発を行う自己強化特技。使用者が使う魔法系特技の使用後硬直時間と再使用規制時間を短縮する。効果時間中はMPと詠唱時間の制約はあるものの、魔法の高速連続使用が可能となる。支援系魔法は複数の種類を重ねがけすることが期待される場面が多く、強力な特技である。そもそも再使用規制時間などが〈キャストオンビート〉を前提に設計されているために、付与術師は日常からこの特技を多用する。しかし、いかんせん地味であり、付与術師以外が意識することは少ない特技でもある。
〈フォースステップ〉
攻撃補助魔法_1分間、味方1人の特技再使用時間のタイマーを加速させる(実質、再使用時間が減少する)と同時に、次に行なう攻撃のダメージが微増する補助魔法。効果を受けた仲間には加速する時計のエフェクトアイコンが表示される。効果量は90レベルの〈付与術師〉が秘伝級の〈フォースステップ〉を使用した場合でタイマー加速20%、ダメージは+10%。一見大きな数字に見えないが、レイド戦闘など長時間のバトルではトータルダメージに如実に差が出る。パーティを陰から支える〈付与術師〉らしい支援魔法といえる。〈フォースステップ〉自体は比較的多用できる特技のために、味方にどんどん使っていける。しかし、使いすぎると『こき使いやがって』という心象を与えるので中の人へのケアも忘れずに。
〈マナチャネリング〉
その他・補助魔法_パーティ全員のMPをすべて吸収し、平均して返す。使用するとパーティ全体を黄色い光の帯が繋ぐエフェクトが発生する。回復魔法と比較して「リソースを回復するわけではない」魔法であるため、使いどころが理解しづらい特技として知られている。だが、パーティにおけるリソース消費ペースの調整を個々のプレイヤーのテクニックに依存せず行えるため、高難度クエストに積極的に参加するプレイヤーからの評価は高い。「戦士職や回復職ばかりMPを使い尽くして、魔法攻撃職や武器攻撃職のMPはまだたっぷり残っているのに回復や防御が追いつかずに全滅」といった事態を避けることができるこの特技の価値は、ぎりぎりの戦いでこそ輝くのである。
〈マナトランス〉
その他・補助魔法_自らのMPを時間差でパーティーの仲間にうつす呪文。熟練度が低い場合転移量の30%ほどがロスになるが、熟練度を上げることでロスは軽減される。詠唱時間は短く、再使用規制時間も90秒とさほど重くはないために、その気になれば常用できる。付与術師の最大MPは12職でも最大に近いため供給を受けた側は急場をしのげるが、調整する側の付与術師は先を見通す戦術眼が要求される。
〈インフィニティフォース〉
その他・補助魔法・必殺技_対象の味方1人の能力リミッターを解除し、ごく短時間(15秒ほど)の全体的なステータスアップと同時にMPを無制限に使用できる状態にする。妖術師であれば強力な魔法を連打可能だし、暗殺者や盗剣士も同様に大きな火力を発揮できる(もっともヘイトは通常どおり発生するので、倒しきれなければ手痛い反撃が待ち構えているが)。効果中は身体の中から金色の光があふれるように湧き出すエフェクトが表示される、通称「スーパーモード」。再使用時間が40分と長い付与術師の切り札的魔法。
〈大災害〉以後、この特技を使用後は激しい疲労に襲われることが判明したため、使用に二の足を踏むものは少なくないようだ。
〈キーンエッジ〉
攻撃補助魔法_味方単体の武器の攻撃力を上昇させる補助魔法。上昇量は系統上位特技を習得するにつれて強化される。効果を受けた武器はうっすらと白い光を放ち、切れ味(威力)が増したように見える。また持続時間が長く、一度使えば数時間持続するのも特徴。こういった戦闘前にあらかじめ準備しておく系統の呪文を数多く習得するのも付与術師の職業特性といえる。
〈アキュラシィサポート〉
攻撃補助魔法_味方1人の命中率を上昇させる強化魔法。「命中率」というのがミソで、近接攻撃に限らず魔法攻撃にも効果がある。系統上位特技になっても上昇数値は据え置きではあるが、僅かな命中率の差が明暗を分ける高難度戦闘においてはその効果がはっきりと出てくるだろう。効果時間は非常に長いので一度かけてしまえば数時間持続する。
〈エリクシール〉
回復補助魔法_味方単体の回復系特技の効果を上昇させる補助魔法。上昇量は系統上位特技を取得するにつれて強化されていく。回復職のいないパーティではほとんど意味を成さないが、1人の回復職が多数をカバーするレイドコンテンツなどでは回復能力の底上げが部隊全体の耐久度を格段に引き上げるため、大規模ギルドに所属する付与術師はこの特技を重点的に成長させている者もいる。逆に言えばそうでもない限りあまり日の目を見ない特技である。
〈リフレックスブースト〉
防御補助魔法_味方単体の回避力を上昇させる補助魔法。上昇量は系統上位特技を取得するにつれて強化されていく。〈大災害〉後は回避率ステータスに比例した自動回避動作はなくなったが、攻撃を意識してから体が動くまでの反応速度に補正があるようだ。
〈ゲインイミュニティ〉
防御補助魔法_味方単体の抵抗力を上げ、特定のバッドステータスにかからなくする補助魔法。長い効果時間を持つため、一度かければ数時間効果が持続する。防止できるバッドステータスにはレベル制限と持続時間制限があり、専門職である回復職に遠く及ばない。とはいえ、回復職が一般的にあつかう「バッドステータス回復魔法」とは違い、「事前の手が空いているときに使える」柔軟性がある。敵の使用するバッドステータスがわかっていれば、回復職の負担を軽減できるだろう。ただし、既にかかっているバッドステータスを回復する効果はないため、初見の相手には役立てることが難しい。
〈アストラルチャフ〉
ヘイト操作魔法_気配を遮断する銀色の靄で味方を包み込み、敵からの注意を逸らす補助魔法。効果中、対象が取得するヘイトは減少する。相対的に後衛職の火力や回復力を上げることに繋がる、縁の下の力持ちとでも言うべき特技。雑魚戦ではその分直接的な支援をした方が効率がよいが、レイドなどでは後衛への事故が減るために感謝される。
〈ヘイスト〉
その他・補助魔法_味方1人の行動スピードを加速させる魔法。これも持続時間が長いため戦闘前にあらかじめ使用しておくのが一般的な運用法となっている。ただしパーティ全員を常時加速させるには少々MPの消費が大きいため、攻撃の手数がほしい武器攻撃職や魔法職に優先して使用されることが多い。系統上位特技の習得で加速度が上昇し、90レベル時で約20%ほど詠唱時間、オートアタックの速度が上昇する。
〈オーバーランナー〉
移動補助魔法_効果時間中、対象の移動速度を増加する。その他のステータスは上昇しないが、対象の攻撃範囲から移動で逃れることのできる可能性も増加することから、間接的に被ダメージを低減させる効果も期待できる。一方で、使われた側が加速した移動速度に慣れていないと混乱を引き起こすため、辻支援で使うには向かない。使用すると効果時間の間対象に長靴型のアイコンが表示される。
〈カルマドライブ〉
回復補助魔法_効果時間中、対象の攻撃がクリティカルすると、対象のMPが大きく回復する。MP回復手段の限定されている〈エルダー・テイル〉における〈付与術師〉の特異性を象徴する特技の一つ。使用すると効果時間の間対象に四葉のクローバー型のアイコンが表示される。
〈アストラルバインド〉
補助魔法・行動阻害_目標にした敵を拘束し、移動を制限する魔法。魔法職は高火力によって敵を殲滅するDDであると同時に、敵の能力を制限して味方の戦闘を有利にするCC機能も少なからず有しているが、〈アストラルバインド〉はその基本であり、細部のディティールは異なるものの3職それぞれに用意されている。
この特技によって敵を足止めしている間に戦士職が前進して前線を構築する戦術はパーティ連携の基礎とみなされており、さまざまな場面で出番のある魔法。使用すると、魔力の輝く糸が相手をリング上に締め付ける。
〈メイジハウリング〉
攻撃補助魔法_自身の魔法を強化する補助魔法。効果時間中に唱える魔法に追加ダメージを付与する。この追加ダメージは敵の防御力を無視する特性があり、ヒットさえすれば元の魔法でダメージを与えられなかったとしても効果がある。もちろん、単純な火力の底上げとしても有用で、特に1回のスキル使用で連続ヒットが発生する魔法と併用すると追加ダメージが複数回発生し、効果が跳ね上がる。使用中は、使用者が魔法をヒットさせた直後に火花が飛び散るエフェクトが追加される。
〈ディスペルマジック〉
補助魔法_無色無音の魔力の波動(さざ波のようなエフェクトが発生する)を放ち、対象にかかっている魔法を解除する特技。解除できるかどうかはその魔法をかけた術者と〈ディスペルマジック〉の使用者のレベル差によって判定される。敵のかけた強化魔法を無効化する、味方にかけられた妨害魔法を取り除くといった用途のほかに、魔法的な原理で作動する罠を解除することもできる便利な特技である。
〈フリップゲート〉
移動魔法_屋内のゾーンのみで使用可能な、パーティ全体をスタート地点(ゾーンに入った場所)へ戻すことができる瞬間転移魔法。形勢不利な時の立て直しのほか、複雑なダンジョンの奥まで行った後に戻るのが面倒な時にも使われる。使用すると銀色に輝くドアのようなオブジェクトが設置され、クリックすることでそのゾーンの入り口に戻ることができる。ゲートの使用人数に制限はなく、通りがかりの人でも使用できるため、大型のレイドなどでは重宝される。
おつきあいありがとうございました。
今回で一端の資料集は終わりです(>_<)
二次創作向けに有用な資料があれば、また更新したいと思います。
では今後とも、ログホラをお楽しみ下さい!