第二話-剣と魔法と学園モノ?!-(前半)
第二話ー剣と魔法と学園モノ?!ー(前半)
「こっちよ! はぁっ!!」
姉の会心の一撃が敵にクリティカルヒットする。あまりの威力に敵はすぐにノックアウト。次の敵に備える。
「うりゃあ! これでも喰らえっ!」
俺も負けてはいられない。
武器屋で改造し、威力を増した片手剣が、敵の集団をなぎ倒す。
背後に回った敵に、勢い余ったスピンアタックを決めてやる。
「良い感じね! このまま突っ走るわよ!」
へっ、ねーちゃんに言われなくてもわかってらぁ!
今日の俺はいつもにも増して絶好調なのだから!
何故だろう、身体がいつも以上に軽い。まるで鳥にでもなったかのよう。何をしても疲れない!
何から何までが冴え渡っている!
「うおおおおりゃあ!!!」
俺とねーちゃんはラストダンジョンへと足を進める。
ここは魔王の居る王座。
まさに俺たち二人は、魔王とご対面しているわけだ。
「ふむ。汝らがここまで来た事については、賞讃しようぞ...くくく!」
不気味な笑みを浮かべながら拍手をする魔王。
俺らはそれをじっと見つめる。
「……だが、汝らは不幸であったな……! 」
「何を言っているんだ!」
「この部屋は我が情報制御下にある……! 故に、余のさじ加減で汝らはどうとでもなるのだ……くくく!! はははは!!」
耳を劈くような奇声を挙げて笑う魔王。
冒険を始めた頃の俺たちなら、確実にこの声だけでやられていた事だろう。
「弟くん……今のうちに……」
「おっけー……わかった!! たぁっ!!」
ねーちゃんが使っていた両手剣を借り、渾身の力で魔王に振りかざす。
「ふっ……もう遅いわ……ふん!!」
「うわぁっ!!!」
ブッツン……
「「……?」」
一瞬、何が起こったのか理解できなかった。
俺の目の前には一面真っ黒い空間。
先ほどまで付いていたテレビは、
黒洞々たる闇に包まれ、リモコンのスイッチを押すも、全く反応がない。
「………」
暗闇に包まれた部屋で、姉と顔を合わせる。
この間わずか10秒。二人のしばらくの沈黙が続く。
先に口を開いたのは姉。
「て、停電?」
この頃には、ようやく俺の思考回路も復活してきた。この状況を冷静に判断する。
「て、停電かな?」
「えっと、懐中電灯……いってっ!」
姉が明かりを探そうとしたのだろう。その拍子に、なにかにぶつかってしまったようだ。
メキッっという不吉な音がする。
「もうなにやってんだか……俺が探してくるよ」
「頼んだ弟くん……! いてぇぇ」
どこをぶつけたんだよ...それより灯りがないと何も出来ん。
「ごごごごめんなさーい!!」
姉の研究部屋から助手と思われる人の謝罪をする声。
犯人は麻美さん?
「ブレーカーあげてください!」
ブレーカーは姉の研究部屋にある。
俺が行くよりも、麻美さんの方が近いと思った俺は、麻美さんにブレーカーをあげるよう頼んだのだ。
「えっと、カチャッと……」
うぃぃーんという何かの機械の作動音と共に電気が付く。
Win7やらピーS3やらの起動音が鳴り響くこの部屋で、先ほど姉が踏んだと思われる物体を確かめてみることにした。
「うげっ……」
そこには、不吉に曲がった音楽プレイヤーが転がっていた。
電源をつけると……
Oh……綺麗な空模様……
縦に入った黒い亀裂の横に緑や赤や白の星が浮かび上がる。
画面をよーく見ると、うっすらとS○NYのマークが浮かび上がって見える。
「オー マイ リトル デーモン!!」
ショック!!
「もー! 麻美ちゃんん~! どうしてえ~!」
「いやあれはさっき先輩がぁ~……」
姉はびっこ引きながら自分の研究部屋に戻って行った。
麻美さんと姉の声が聞こえる。
この部屋に残されたのは俺一人。
この壊れた音楽プレイヤーと共に。
スピーカーからは元気良くミクねぇの声が聴こえてくる。
「はぁ……」
夜ももう遅い。テンポの良い曲が流れている液晶画面星空の音楽プレイヤーの電源を切り、就寝する事にした。
はぁ……なんというか、今日も大変な一日だった気がします。
次の日の朝……
チュンチュン……
小鳥の囀りが聞こえてくる清々しい朝。
「起きなさい……私の可愛いアキラや……」
誰かに揺り起こされる。
「起きなさい……わたしはこの日のためにあなたを立派な勇者に育てたつもりです」
ん? ん?
俺はゆっくりと体を起こす。
体を起こすと、俺の母親と思われる人が横に立っている。
これは一体……?
「さあ。今日はあなたが魔法学校に通う登校初日ですよ。準備していらっしゃい」
そういうと、その人は部屋から出て行ってしまった。
しばらく、いつもの俺の部屋ではない『俺の部屋』を散策する。
部屋を一面見渡してみれば、元『俺の部屋』の時とは物の配置が随分と変わっている。
それに、あったはずの文明の利器はなくなっており、代わりに『剣や盾や魔道書』と思われる『RPGモノ』に出てきそうな装備品が飾ってある。
「ん……?」
今まで俺が寝ていたベッドの毛布の中を調べると、液晶画面星空の音楽プレイヤーと、我が愛機ピーSピーが転がっている。
もっと他に何かないか調べてみると、高校生の必需品、携帯電話があった。念の為、電波の本数を数えてみる。
案の定、携帯電話の待ち受け画面は、姉のちゅー画像(画像を変更出来ないように改造された)がでっかく表示されているが、画面右上の表示は、圏外になっている。
これだから$○ft♭ankは……
などと愚痴をこぼしていたら、鳴るはずのない携帯電話がブルブル震えた。
着信は……姉……
「ふっふっふーようやくお目覚めかね、弟くんっ」
「遅いぞ。俺はもうとっくに起きてたよ」
ふっふっふーと姉が笑った後
「どう? そっちの世界? 面白くなりそう? むふふ~」
電話の向こうから麻美さんらしき声で、「本当に出来たんですね!」みたいな声が聞こえる。
っつーことはあのマッドサイエンティストめ……別世界へ飛ばせるような装置を作りやがったな……!
薬だけでなくハイテクな物まで開発しやがって!
「おいこら! こっから出せよ! 変な世界に俺を放り込んでるんじゃねーよ!」
自分で言ってみてなんだが、このセリフ、ヤンデレに監禁された男みたいなセリフだなと思う……
「まあまあ、いいじゃない。少しこの世界で遊んでもらうだけだから!」
「本当にちょっとだけだぞ……?」
どうせ嫌だって言っても無視されるだけだし……
「うひひ! よぉ~くわかってんじゃん! さっすがあたしの弟くんっ! そいじゃ、ちょっとじっとしててね?」
「え?」
すると、電話の向こう側から麻美さんの「何をするんですか?」という声が聞こえる。
ここで姉から逃げたいのも山々だが、この前下手に逃げようとして失敗して嫌な思いをした事があるからな……(第一話参照の事……)
今は黙って運命を受け入れるしかない。
しばらくすると、向こう側も何やら準備が整ったらしく、姉のもしもしの声が聞こえる。
「今から制服に着替えるの面倒でしょ? だからあたしがこのボタン一つで一瞬にして着替えさせてあげるっ!」
そのボタンってのは俺には見えないんだけどね……
「ふむふむ。『そのボタンってのは俺には見えないんだけどね……』か~。確かに弟くんには見えなかったねっ! こりゃあ失礼!」
おわぁ?! 心読まれてるしっ?!
「読心術くらい、私とて身につけている。常識ではないのかい?」
残念ながら常識じゃありません。どっちかというと人間の常識範囲では読心術が使える人というのは…………って! 俺になに解説させてんだ! これ違う人のセリフだし!!
「冗~談だよっ! ふっふっふ~弟くんっ! 聞いて驚けよっ! 実は弟くんが今いるそこは、『ゲーム』の世界なんだよっ!」
「はぁ?! ゲーム?! 信じられる訳ないだろ!」
だってさっきみた俺の『お母さん』は立体的だったし、現に今見えてるすべての物もちゃんと立体的に見えるぜ?
「そりゃあ本人がゲームの世界に居ちゃあ信じられないか。じゃあ今からこんな事を……ポチッと!」
ボンッ! という音と共に一瞬にして服装が変わった俺。
しかも今まで着ていた服は律儀にハンガーに掛けられていて、一つのしわもない。
「さあさあ、これで信じて貰えたよね? これからもう少しすると『お母さん』が来ると思うから、ちゃーんと着いて行くんだよっ! そんじゃ! じゃね~」
「あ! おい!」
ブツッ……
電話の向こうからはツーツーという音しか聞こえて来ない。
あんにゃろ……よくも……
それにしても一瞬で制服に着替えられちゃったし……やっぱりここはゲームの世界なのか……?
トントン……
「アキラや、準備は終わったかい? お母さんここで待ってるから、準備が出来たら出ておいで」
これ以上考えても何も解決策は見つからないだろう。
今は何にも対抗せず、流れに沿って進んでいくか。
「もう準備終わったからそっち行くよ~」
そして準備を終えて……
「さあ、私に着いてくるんですよ」
着慣れない制服に着替え(させられ)た俺は、言われるがままに『母親』に着いて行く。
畳の代わりに絨毯、MP3プレイヤーの代わりにレコード…… ヒーターやストーブの代わりに暖炉……
あまりの家の代わりように家の中をキョロキョロするものなので、『母親』が「どうかしたの?」と聞いてきた。変に思われても嫌なので、適当な事を言ってその場は誤魔化した。
そうこうして、俺たちは外へ出た。
扉を開けるとこれもまたびっくり!
レンガ造りの家にタイル張りの地面、遠くを見れば教会の鐘が見え、真っ正面には目が青い人や、金髪や青髪の人がいる。
金髪はまだいいけど青髪って...
それによく見ると赤い色した目の人もいる。しかもみんな美人。
本当にゲームの世界に来ちゃったんだなぁ……
なんて思っていたら、もう学校に着いてしまったようだ。
「さあ、学校に着きましたよ。ちゃんと先生にご挨拶して、みんなと仲良くするんですよ」
なんとまあ決まったセリフだこと。
それはいいとしてよくないのはその学校の大きさ!
Harryポッターを思わせるブリタニア風な作りの校舎!
どでかい噴水がある中央広場!
Libraryと書かれた建物……
日本の常識じゃ考えられないものばかりがそこにあった。
所で、入学式って事はクラス表があるはずだよな……
そう思って人だかりの方へ足を運んだ。
(えっと、俺の名前はっと……)
文字はすべて英語だった。
そこには"Leaf"やら"Sofia"やら...
なんというか、こう、精霊みたいな名前が多い。
クラス表の真ん中辺りに、"Akira Kudou"という俺の名前が。
この世界だと、俺の名前が変わった名前に見えて来るから不思議だ。
"Maria"や"Losaly"や"Jony"等の名前が並ぶ中で"Akira"だもんな。
と、俺の感覚では変わった名前が多いこの学校の広場を抜け、生徒がとても多い校舎の中へと、吸い込まれて行った。
この後、ゲーム的要素が起こるのは、今は秘密である。
「Welcome to Crosstiny Cumpus!!」
ガヤガヤ……
日本の一般高校の体育館とは訳が違う、とても大きな聖堂へ連れて来られた生徒一行。
イメージを持って貰うとしたら、クラシックを演奏するような大きなホールを想像して欲しい。
さらに内装は白ベースで、ステンドグラスには聖母マリアを思わせる絵が描かれている。更にとても高い天井を見ると、大きな十字架が彫られている。
やがて、大きなパイプオルガンをバックに、どうどうと姿を現した学園長が話を始める。
「我がクロスティーニ学園へようこそ! ここにいる皆は冒険者を目指して我が学園へ足を運んでくれたのだろう。存分に学び、存分に何事にもチャレンジしてくれ! では、皆の活躍を期待してるぞ!」
生徒たちの盛大な拍手を背に、学園長はこの場を後にする。
その後は他の先生方の話を聞いたり、この学園で生活する上での注意などを聞かされたりした。
その後は、これまた大きな教室へ戻った。
この学園は寮生となっており、家が遠い人たちは皆、寮で暮らすそうだ。(中には外国から来た人もいるらしい)
「はじめまして! ぼくアルベルト! よろしく!」
「あたしリーフィアよ! よろしく!」
はい、なんでこんな普通の会話をこうして取り上げたかというと、理由は沢山ある。
まずはその彼らの容姿だ。
一方は犬みたいな姿をした少年、もう一方は背中に羽が生えた少女だ。
周りを見渡せば、角がある人や、猫耳が生えてる人(デジャブ!)等が沢山いる。
え? え? どういうこと?
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ピンポンパンポーン♪
はぁい~またここでお姉さんからの豆知識♪
もう皆さんは知っての通り、弟くんは今ゲームの世界に居ます。
え? 全くそんな風には見えない?
やっぱりそう思われる方がいらっしゃっても仕方が無いですよね。
では説明します!
今弟くんがいるゲームの世界とは……!
『この学園は寮生となっており、▽』
『家が遠い人たちは皆、寮で暮らすそうだ。▽』
ドゥーユーアンダースターンド?
因みにこれ ▽ は、「矢印」です。
お使いのブラウザや環境によっては、普通に選択肢っぽく見えるはずです。
そう、なんと! 弟くんはノベルゲームの世界に居るのだっ!
普通のRPGゲームじゃつまらないと思ったので、ノベルゲームとRPGを掛け合わせてみました♪
「え? 今何をはなし……」
それじゃあまた! この世界をお楽しみください!!
「え? ちょっと先ぱ……」
ブツッ
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なんかデジャブ……天から姉のような声が聞こえたぞ……(麻美さんの声も……)
「なーに目の前でマンボウが死んでるみたいな顔してんだー?」
「ひゃい?!」
いきなり後ろから声を掛けられたのでびっくりして変な声を出してしまう。
「あっははは! なんだよその返事! お前面白いな!」
俺の変な返事に大笑いしているその少年は、頭に角が生えており、肌の色も俺とは少し違う。(ちょっと青っぽい?)
その少年に親しみを込めて、少しお喋りしてみることにした。
「そうかな~。俺は普通だと思うんだけど……でさ、ちょっと聞きたいことがあるんだけど……」
「ああ! なんでもいいぜ!」
胸をバンと叩き、「任せとけ」みたいなポーズをしている。
「まずは俺の名前から。俺は工藤暁。色んな理由があってここに来たんだ」
無難な自己紹介をする。
「ほうほう。俺はディアボロスのディーノ! こう見えても、魔法とか得意だぜ!」
? ? 聞き慣れない単語が出て来たぞ……? 「ディアボロス」?
なんじゃそりゃ?
「よろしく……あの、つかぬ事をお聞きしますが……その、"ディアボロス"ってなんでせう?」
ディーノはキョトンとした顔で答える。
「は? "種族"の事だよ。アキラは見たところ……ヒューマンかセレスティアか?」
「ふぇ?」
種族? なんだそれ? 俺は普通の人間でそれで……あれ?
「お前……自分の種族も知らなければ、自分以外の種族も知らないってのか?! いいか、この世の中にはな、色んな"種族"の人間が居るんだ。俺みたいに角生やしてる奴も居れば、天使みたいな奴も居る。そんな奴らが冒険の心得を学びたくてここへやって来たんじゃないのか?!」
なるほど、よく分かって来たぜ。
この世界には俺とは違う、別の種族の人間が居て、みんなそいつらと仲良くしている訳か。おっけーおっけー。よーやくわかったよ
「所でアキラ、お前の名前随分と変わってるよな? どっから来たんだ?」
それは……
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お姉ちゃんパワー発動♪
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「俺は"ジパング"ってとこから、冒険の修行をするために引っ越して来たんだ!」
?! 口が勝手に?!
「あのジパングか! へぇ~そりゃあすごいや! わざわざセントシュタインへご苦労な事!」
あはは……とりあえず話が繋がって良かった……
と、二人で話し込んでいると、先生が入って来た。
「みんな居るなー? よしすわれー」
生徒は皆、先生が来た事に気付き席へ座る。俺たちもお互いに「また後で」と言って、所定の位置に戻った。
「座ったな。よし、まずは出席をとる。まずは"アッシュ"……」
出席確認を終えたら、今度はそれぞれの自己紹介をさせられる。
俺は無難な自己紹介をしようと席を立った。
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お姉ちゃんパワー発動♪
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ガタッ
「ジパング出身、工藤暁。ただの人間には興味ありません。宇宙人、未来人、異世界人、超能力者が居たら、俺の所に来い! 以上!」
静まり返る教室。一斉に降り注ぐ痛々しげな目線。恥ずかしくて早く席に座りたいが、なぜか体がいう事を聞かない。
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お姉ちゃんパワー発動♪
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一斉に俺に降り注ぐ視線。それは皆が俺に期待しているからであろう。
教室の隅から隅まで見渡してみる。めぼしい人物がいないかどうか。
しかし、どいつもこいつも俺の事をアホ面下げて見ているだけだ。その口にチョークを突っ込んでやりたい。
ついでに美人な女の子を探してみるが、姉に勝るほど美人な娘はいなかった。
むしろ大根にひじきが生えたような奴ばかりだ。「ちょっと先輩なn」それに引き返え姉と言ったらいつも俺に良くしてくれるし、頭もいいしルックス最高だし、悪い所と言ったら可愛すぎてみんなから嫉妬される所くらいだろう。
俺は今ここで宣言する。俺は姉のことが「これ以上は弟さんがかわいそ」おっといけない。この愛の叫びを今は心の奥へ閉まっておいて、姉の前で語ろう。
姉の喜ぶ顔が目に浮かぶぜ……
とりあえず、期待できそうな人材はいなかったので、ドカンと席に座った。
「……えーでは次…………」
ちょ……待ってくれよ。
今のなんだよ……
変な事を口走った挙句に変なナレーション入れられちまって……
恥ずかしさのあまりに机に突っ伏した。後でこれは……
皆の一通りの自己紹介が終わり、ちょっと時間が空いた所で、俺は慌てて席を立ち、イタズラの張本人に電話を掛けてやる。
「ぁああああねぇぇぇぇきぃぃぃぃぃぁぁぁあああぁぁぁあああ!!!!」
周りの視線は気にしない
「弟くんは……お姉ちゃんの事、大好きなんだねっ……ポッ」
「変な事言わせたのお前だろうがぁぁぁ!!!」
「でも、心から思ってないとあんなカッコいいセリフなんて言えないよ?」
ちげえだろ!
「だったら途中の鍵かっこはなんだ?! 誰か全く別の人の言葉が入って…………
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お姉ちゃんパワー発動♪
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いや、なんでもねえ。今の電話はただの気まぐれだ。姉貴よ、また後でな……アイラブユー……」
「え~何かな~! 楽しみ! それじゃっ!!」
ブツッ……
や ら れ た
またしても周りからの痛々しげな目線。
もうやだこんな生活……
「なんつーか……その、個性的だな……あはは……」
一生懸命『気にしないよ』素ぶりをしてくれるディーノ。
お前はいい奴だ!
「ま、誰にだってああいう事はあるよな。うん」
マイフレーーーンド! って叫ぼうとした所、先生が俺たち二人の元へやって来た。
「なんつーか、その、お前たち二人のあの自己紹介には驚かされた。流石だよ。それでだな、お前たち二人に伝言がある」
ん? なんだろう? 入学式早々何か俺たちやらかしちゃった...?
それを見抜いたかのようにこう続ける先生。
「いや、別にそういうわけじゃないんだ。自己紹介の事を学園長に話したらな、お前らの事えらく気に入ったらしくて……」
「え?! 俺のあんな自己紹介で?!」
今度はディーノが目の前でマンボウが死んでるみたいな顔をしている。
お前のも十分凄かったぞ。
こいつ急に『宇宙人』みたいな踊りを俺たちに披露するんだから...
第一印象は大切にと言うが、あれはインパクトあったぜ。(俺のも不本意だけどすごかったと思うけどな!)
「急に踊り出すからな……びっくりしたぞ……で、伝言だ。『君達に頼みたい事がある。後で校長室まで来てくれ』だそうだ」
「俺たちに……何か?」
二人して顔を見合わせる。
「学園長が生徒をここまで気にいるのは初めてだ。くれぐれも失礼のないようにな」
「わかりました!」
これが、今回の物語の幕開けだったのかもしれない。
前半終了です。
この後、後半へ続きます。