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守りたい

作者:洲本六文

野球部の練習が終わって、校門を出ようとしたら、野球部のマネージャーの佐藤梨沙先輩に「お疲れ様」と声をかけられた。
「あ、お疲れ様です。」と、僕が返事をすると、先輩はカバンを持ち直して、「途中まで一緒に帰らない?」と聞いてきたので、僕は「いいですよ。」と答える。
二人で校門を出て、2、30mほど歩いた時、先輩が口を開いた。
「今度の試合、頑張ってね。」
僕は数秒経ってから、小さく「はい…」と答えた。
先輩はその返事を聞いて、同じように数秒経ってから、「不安なの?」と聞いてきた。
僕は「まぁ…少し。」と少しだけ笑って見せてから、返事をした。
「なんで?水上君はいつも練習弱音吐かずに頑張ってるし、いいプレー出来ると思うよ。」と先輩が言ったので、「俺、実力無いんで。」と答えてから、続けて「中学と高校で野球の世界はまるで違いました。」と言うと、先輩は立ち止まって、こう言った。
「確かに中学の時、大活躍してた水上君にとって、高校に入ってからは大変だったと思う。うちのチームはみんな強いし…。でも、水上君はいまでも私にとってエースなのは変わりないよ。」
その先輩の言葉はなんだかとても重みがあった。
その時、小さい音だが、カシャっと言う音が聞こえて、小さな光が遠くで光った。
「なんだ?…」と、僕が呟くと、先輩は僕の方に駆け寄って来て、「私、最近変な人につけられてるの。いつも帰り道、カメラの音とかがして…。気のせいかなって思ってたんだけど…。」と先輩が言い終えた時、音の主らしきフードを被った男が電柱の陰から現れ、こっちに歩いてくるのが見えた。
ポケットに突っ込んでいる手には、恐らく、先輩をカメラで撮った携帯を持っているようだった。
僕はとっさに「走って!」と先輩の手を掴み、住宅街へと続く商店街への道へ駆け出した。
僕らは無我夢中で走った。
商店街を抜け、住宅街に入ったところで、一度止まって後ろを見たら、フードの男が息を切らしながら、数十m後ろで立ち止まり、僕らを見つけたところだったので、僕は再び先輩の手を取って、走り出し、数m走ったところで曲がり角を曲がると、誰かが置いていった自転車があったので、僕は先輩を掴む手を放し、その自転車のハンドルを持ち、こちらへ向かってくるフードの男に向けて、思いっきり押した。
自転車は一人でに男の方へ進んで行き、男の手前でゆらゆらとぐらつき、倒れた。
男はその自転車を見て、少し後ずさりしたが、すぐに追いかけて来たので、思わず「やっべえ」と言って、すぐに走り出した。
フードの男は中年なのか、息を切らしながらどんどん距離が離れていく。
次の曲がり角を曲がったった時、そこに先輩がいた「こっち!」と言って僕の手を掴み、家と家の間の細い道を僕らは駆け抜けた。
僕らはようやく先輩の家に辿り着いた。
玄関に入ってすぐ、僕は他人の家ということを忘れてその場に倒れこんだ。
目を開けると、先輩も横に倒れこんでいた。
僕はゆっくり身体を起こして、「家までバレてませんよね?」と聞くと、先輩は小さく「わかんない…」と答えた。
先輩は身体を起こすと、俯きながら涙を流し始め、次第に豪雨のように涙を流し出し、「怖い…」と言って、僕に抱きついてきた。
僕は必死に先輩にかける言葉を探しながら、先輩の肩のあたりにそっと手をやり、僕の胸に顔を押し付けて号泣する先輩に「僕が…守ります。」と声をかけていた。
先輩はしばらく泣いた後、落ち着きを取り戻し、「ごめんね。ありがとう。」と言って、リビングでお茶を出してくれて、更にはカレーまで作ってくれた。
「電話、繋がりました?」
「ううん、やっぱりまだ仕事中みたい」
先輩は仕事に行っている両親に電話したのだが、二人とも電話には出なかった。
先輩が凄く不安そうだったので、「親に許可もらったんでもうしばらくここにいていいですか?」と聞くと、先輩は小さく「うん、そうしてほしい。」と言った。
そんな会話をしている時、部屋の片隅にあった一本の竹刀に目がいった。
「先輩…あの竹刀って?」
先輩は竹刀の方を見て、「ああ、あれはお兄ちゃんが昔使ってたんだ。」と答えた。
「あの、もし、さっきの男がここに来たら、あの竹刀を借りてもいいですか?僕も兄貴が剣道やってて、少し教えてもらったことあるんで…。あ、えっと、もちろん守る為に使うんで。」と僕が言うと、先輩は笑顔で「いいよ。」と答えた。
その時だった。
ドンドンドン、ドンドンドンとノックの音が玄関からした。
僕はさっきの竹刀を手に取り、先輩に「ここにいてください。」と言って、玄関に近づき、廊下のモニターで来訪者の姿を確認した。
そこにはさっきの男が玄関のドアをノックしている姿が映っていた。
そして、モニターに映っているその男はゆっくりとポケットから鍵らしきものを取り出した。
僕の後ろでそれを見ていた先輩が思わず「嘘…。」と呟く。
モニターに映った男はゆっくりと鍵らしきものを玄関のドアに近づけ、同時に玄関のドアからカチャと鍵の刺さると音が聞こえ、ロックが解除されていく。
先輩は、静かに僕の腕を握った。
僕は竹刀を握りしめ、ゴクリと唾を飲み込み、高鳴る心臓の鼓動を必死で抑えながら、身体中から溢れ出る冷や汗に気づかないふりをして、恐怖から来る震えを武者震いと信じ、「先輩を守りたい」ただそれだけを考えようとしながら、玄関のドアを見つめていた。
そして遂に玄関のドアのロックが解除され、ゆっくりとドアが開けられる。
現れたフードの男はにやりと笑って、ポケットの中から刃物のような鋭いものを取り出し、「梨沙ちゃん、いま助けてあげるよ。」と呟き、こちらに向かって走り出した。
フードの男から突き出される刃物のようなものを弾き飛ばそうと振り下ろした竹刀は空を切って、僕の想いに答えようとしていた。
気づくと私は抱きしめられていた。
水上くんはフードの男の手から弾き飛ばされた刃物のようなもので少しケガをしたけどかすり傷で済み、フードの男は水上くんの気迫に怯え、逃げていった。
竹刀を手から落とし、ゆっくりと座り込んだ水上くんに「大丈夫?」と声をかけた時、彼は私のことを抱き寄せた。
後日、フードの男は警察に捕まった。
フードの男の正体は私が通っていた中学校の元教師で私が中学校を卒業した後、私に抱いていた好意を抑えきれず私の通っている高校を見つけ、ストーキングを繰り返していたらしい。
水上くんは試合で大活躍。
瞬く間にチームの主戦力になった。
水上くんは私にとってエース以上の存在になっていた。
「水上くん、君は私のヒーローだよ。」

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