ガキィィィン! という音と派手な真紅のライトエフェクトを迸らせながら俺の片手直剣ソードスキル、≪ヴォーパルストライク≫がトカゲ型のモンスターに直撃する。
しかしさすがにイベントボスを倒すことによって攻略できる隠しダンジョン。そのレベルは並大抵のものではなかった。
出てくるモンスターは最前線のモンスターと比べてもその強さに遜色はない。
≪ヴォーパルストライク≫一撃では当然HPをゼロにすることはできない。
しかも俺はソードスキル発動によって硬直時間を課せられており、目の前にそれを好機とモンスターの鍵爪が迫っているのだが、今はそれに恐怖を全くと言っていいほど感じなかった。
「スイッチ!」
後ろからその声が聞こえるからだ。
俺とモンスターの間の距離が一メートル弱になったとき、後ろから飛び込んでくる影がある。
そう、謎のプレイヤー、インシュヴァルツその人だった。
もし俺一人で攻略に踏み出していたら攻略し終える前にダンジョンから脱出せざるを得なかったかもしれない。
だが、このインシュヴァルツというプレイヤーは俺の予想よりはるかに強かった。連携プレイというものをよく理解している。
スイッチするタイミングを一度たりとも逃さず、俺が硬直したときや、モンスターとの間合いが開いた瞬間飛び込んできて、的確に攻撃を当てて、モンスターを屠っている。
そのおかげでこのダンジョンに入ってからダメージらしきダメージを俺は受けていない。それはインシュヴァルツも同じではある。
今もインシュヴァルツの剣がモンスターの体を捉え、モンスターは断末魔の声を上げながらポリゴンとなって爆散し、この世から去った。
しかしどうも腑に落ちないことがある。
インシュヴァルツが持っている剣、両手剣なのだが、どう見ても両手剣スキル及び筋力パラメータがかなり無いと持てなさそうな重さの剣である。
プレイヤー自身のスキルを見てみても、このプレイヤーは攻略組のレベルだ。しかもその中でも上位に食い込むほどの腕前だろう。
なのになぜ、この男は迷宮区の攻略、さらにはボス攻略にに参加してこないのだろうか。
最前線に出てくるモンスターは強い代わりに、倒せば多くの経験値を入手できる。
だからこそ攻略組のレベルは高いのだ。
だがこの男の姿を迷宮区で見たことはない。
それなのにどこで経験値を稼いでいるのだろうか。
まさか他の誰も知らない高効率のファーミングスポットを知っているのではないか、とまで考えてしまう。
もしそうならば、この男がそこで得られる経験値を独占しているわけであり、もしかすると最前線できついレベリングをしている俺よりも効率よく多くの経験値を稼いでいる可能性がある。
いや、それはただの妄想か。
俺としても、攻略組に所属していない……つまり俺がまったく知らない、しかもレベルがはるかに上の剣士が存在するという可能性は否定できないとは思っている。
しかしそれは否定できない、というだけで可能性が低いことは事実だ。
「キリト君」
いきなり声をかけられたから驚いた。
「な、何?」
と冷静を装って返事をした俺に、インシュヴァルツはため息をつきながらこう言った。
「少しは手伝ってくれないと、俺も疲れるんだけどね……」
その言葉を聞き、俺はインシュヴァルツのことを考えている間、剣を全く振るっていなかったことに気が付いた。
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