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アインクラッド
再会4
 ログハウスの周り、木が生えてなく、草原とも言えるような場所で、俺とインシュヴァルツは対峙していた。
 インシュヴァルツは、俺が見ている中でウィンドウを操作し、あの壮麗な長剣、≪エクスキャリバー≫を取り出した。そしてそれを手の中で数回ほど回した後、ピタリと俺に剣先を向けた。
 その圧倒的な威圧感は、少し前にデュエルしたヒースクリフのものと同等、いやそれすらも凌駕していたかもしれない。
 俺の背中を、冷たい汗が一筋滑り落ちた。
 だが、ここで臆するわけにはいかない。俺は、一度鞘に収めていた二本の剣を抜き取り、インシュヴァルツの方へ構えた。
 そのとき、アスナの俺への声援が入った。
「キリト君、頑張ってね」
 今の言葉で俺の力は三倍である。やっぱり持つべきものは好きな人だな、とか少しのろけていたのだが。
 次のアスナの言葉で俺は盛大にずっこけた。
「インシュヴァルツさんも頑張ってくださいね」
「……おい」
 そいつを応援してどうするんですか、アスナさん。
 しかし、そんな和んだ空気も一瞬で吹き飛んだ。インシュヴァルツから、デュエルの申し込みのメッセージが届く。もちろんすぐに受諾する。
 次の瞬間には、デュエル開始までのカウントダウンが始まった。
 俺は体が熱くなってくるのを感じる。一人のゲーマーとして、強敵と勝負するときの高揚感はなんともいえない心地よさがある。
 俺とインシュヴァルツは一度たりとも互いに相手から視線を逸らさなかった。
 ウィンドウに【DUEL】の文字が煌いた瞬間、二人とも地を蹴った。
 
 初めに仕掛けたのは俺だった。ヒースクリフと戦ったときにも最初に繰り出した技、二刀流突撃技、≪ダブルサーキュラー≫。
 俺は高速でインシュヴァルツに突っ込みながら、体を回転させ、まず右手の剣を下から相手の胴に切りつける。予想はしていたが、それは難なく奴の剣に阻まれる。だが、このソードスキルはこれで終わりではない。次の瞬間には、左手の剣がインシュヴァルツの喉元に接近する。
 しかし、さすがはインシュヴァルツ。右手の剣を防いだ勢いで自分の剣を回転させ、左手での攻撃も受けきった。
 だが、こんなものはまだ挨拶代わりにすぎない。俺は次の攻撃に移るために、剣を構えなおす。
 と、次に動いたのはインシュヴァルツだった。
「はっ!」
 剣を水平に構え、掛け声とともに俺に突撃してくる。だが、予想していたより攻撃が軽い。俺は片方の剣でそれを受け止めきることができた。
 しかし、次の瞬間、インシュヴァルツの剣が金色に発光する。どうやら俺がまんまと奴の思惑に嵌ってしまっていたらしい。もし、俺の剣が一本だったならば、受け止めた剣にそのまま弾き飛ばされていただろうが、俺の剣は二本ある。
 俺はインシュヴァルツの単発重攻撃を、二本の剣を重ねることで防ぎきった。多少ダメージは受けてしまったが、総HPの一割程度。大した数字ではない。
 俺に攻撃が防がれたと分かった瞬間、インシュヴァルツは後ろに飛び、俺から距離を取っている。
 少しの硬直状態が続いた後、仕掛けたのは俺だった。二刀流単発技、≪ダブルトラスト≫。二本の剣による、同時の突き。しかし、完全にインシュヴァルツの体をとらえていたその突きは、虚しく空を切った。
「っ!」
 さすがに目にするのは二度目。何が起こったかは理解した。これはインシュヴァルツのユニークスキル、≪陽炎≫だ。
「悪いがもう3人だということは分かってるぜ」
 俺は後ろに向かって声をかけながら、振り向いた。案の定、そこには3人のインシュヴァルツが俺に剣先を向けてきていた。
「3人といっても2人は実体がない。一回でも攻撃を当てれば偽者だと分かるからな。今回は負けないぜ」
 俺の言葉に、3人のインシュヴァルツが同時に口を開く。
「それはどうかな?」
 そう言い終わった瞬間、3人が同時に俺に切りかかってきた。だが、今の俺には脅威にはならない。
 一人目の攻撃が当たるか、という瞬間に、俺は現在習得している中で最強のソードスキルを放った。二刀流最上位剣技、≪ジ・イクリプス≫。
「うらあああ!」
 俺の超高速で繰り出される27連撃が3人のインシュヴァルツの体に吸い込まれていった。
 微妙にタイミングをずらしてきているせいで、一つの実体を消すのに、6撃ほどを要したが、16撃目、俺の剣は確かに奴の体をとらえた。
 が、その剣は宙を舞った。3人目のインシュヴァルツも陽炎となって消えていったのである。次の瞬間、俺は本能的に17撃目を体を回転させ、後ろへと叩き込んだ。
 俺の直感が正しかった。振り向いた瞬間、インシュヴァルツはすでに俺に肉薄していた。かろうじて攻撃が間に合い、俺の連撃が≪エクスキャリバー≫とかち合――――わなかった。4人目のインシュヴァルツも実体は無かったのである。4人目に叩き込んだ連撃数はちょうど10。残る攻撃は一回だけ。
 俺は最後の突きを、前を向いたまま、本能で上へと突き上げた。結果的には俺の瞬間的反応は間違ってはいなかった。
 しかし――――リーチが足りなかったのだ。俺の突きがインシュヴァルツの体に当たる前に、奴の剣が先に俺の体に突き刺さった。


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