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フェアリィ・ダンス
三人の出会い6
 あまりにもおいしいものだから、カロリーのことなんて全く考えずに美月は食事を食べ終わっていた。
 皿が下げられ、シェフが十数種類ものデザートが乗っているワゴンを持ってきたとき、うぐ、と胸を押さえたが時すでに遅し。
 すでにこの店の味を知ってしまった美月は、とてもデザートを食べないなんていう選択肢を選ぶことは出来なかった。
 隣の夏樹が何の迷いも無くデザートを取ったことには落胆したが、目の前の直孝が大量にケーキだのアイスクリームだのをワゴンから取ったことには驚いた。大人の男の人というのは総じて甘いものが好きではないと思っていたのだ。
 それを直孝に言ってみると、男が甘い物好きで何が悪い、と一蹴された。彼曰く、
「糖分は頭の働きに欠かせないよ」
 ということなのだが、恐らく好きなだけだと美月は思う。
 ほどよい苦味が口にとろけるような甘美さを与えてくれるガトーショコラを食べながら、美月はまたも思い出してしまった。
 インシュヴァルツが紋白直孝だと聞いたとき、現実味を帯びてきてしまった彼が生還者という推測を。
 聞いたところで答えてはくれないだろう。美月はその情報をかけた勝負で見事に彼に敗北したのだ。聞く権利すら持っていない。
 でも、もしそうならば知りたいのだ。どうしてそんな事件を体験して、尚VRゲームをプレイし続けることが出来るのか。
 だから、一言だけ聞いてしまった。
 美月の視線に気付いた直孝が、ん? と首をかしげたときに。
「あなたは……あの世界に行っていたの?」
 と。
 直孝は案の定、答えてくれなかった。別に期待していたわけではない。美月が落ち込むことも無かった。だが、彼はこう言った。
「もし、ALOの中で俺の目的が達成されれば、そのことを話してもいい」
 驚いて眼を見開いた美月に対し、直孝はさらにこう言った。
「まあ一つだけ言っておこう。キミの考えていることは概ね真実に近いだろう。本当の意味での真実にはほど遠いのかもしれないが」
 今言えるのはそれだけだ。そう言って直孝は再び口を閉じた。
 今の一言をもらえただけで美月にとっては十分だった。もともともらえないはずだった言葉だ。少し聞けただけで僥倖だろう。
 夏樹が彼について何をどう考えているのかが少し気になったが、わざわざ聞くほどのものではない。
 三人がデザートを食べ終わった頃、
「もうこんな時間か……」
 直孝の呟きが美月に聞こえた。その声につられて腕時計を見ると、すでに十時を少し回っている。
 そこそこ店をでる頃合だろうか、と美月は思い、直孝も同じことを思ったらしい。
「一旦解散しようか。十二時にはプーカの領を出ないといけないんだ。時間は余裕を持っていたほうがいい」
 そう言いながら直孝は近くにいたウェイターを呼び、クレジットカードを渡す。カードを渡されたウェイターは、すぐにレジに行って支払いを済ませた。
 直孝はカードを受け取り、美月と夏樹を出口へと促した。
 店から出てエレベータに乗り込み、一階のボタンを押す。
 ドアが閉まり、エレベータが動き出してからすぐに夏樹が口を開いた。
「今日は本当にありがつございました。すごくおいしかったです」
 夏樹の言葉に続けて美月も頭を下げる。
「ええ。本当においしかった。しかも有名人に知り合えたし」
 美月が直孝に微笑みかけると、彼も口元に少し笑みを浮かべた。
「いえいえこちらこそ。可愛い女の子二人に囲まれてうれしかったよ」
 本気で言っているのかお世辞なのか判断しかねる口調だったが、それでもうれしかった。
 それはほんの少し頬を赤らめてた夏樹も同じなのだろう。
 エレベータが一階に着き、三人がロビーに出ると、直孝は財布から一万円札を二枚取り出した。
 そしてその二枚の札を美月と夏樹に差し出してくる。
「タクシー代。取っといてくれ」
 そこまでは受け取れない、と二人とも断ったのだが、俺の無茶に付き合ってくれるお礼、と半ば無理やりに受け取らされてしまった。
 本当に紋白直孝という人は素でこういうことをやってるんだろうな、と美月は思う。
 金持ちだから、と一括りにすることは簡単だろうが、ただ金があるから、ではなく相手のことを思ってやっていることが分かっていたから、美月の中に嫌な気持ちは出てこなかった。
 じゃあ、領主館で待ってるよ。
 直孝の言葉に、美月と夏樹は手を振って応える。
 直孝の姿が駐車場に消えた後、残った二人も、一度会釈して別々の方向へと分かれた。
 体は別々の方向に行こうとも、これから三人の心が行く場所は一つ。だからこそ名残惜しいという気持ちは無かった。
 
いつのまにやら50万アクセス突破。
まさかここまではやるとは思いませんでした、この二次創作w
SAOという作品にあまり長編の二次創作が無いからですかね?

なんにせよ、この小説を読んでくださっている皆様のおかげです。

さて、そろそろインシュヴァルツとサクヤ、アリシャ・ルーの邂逅ですが、今まで通り原作を崩さないように書きますので、これからもよろしくお願いいたします。

ちなみに。
たまには彼も負けないといけませんよね、と思っていたりw


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