気がついたら転移してました
初投稿です。読みにくい部分等あるかもしれませんが温かい目で見守ってくれるとありがたいです。
俺の名前は飯綱 雅風。まぁ、どこにでもいる平凡な高校二年生だ。
成績は中の上。身長は170程度。部活には入っていないが筋肉も多少ついているし、顔立ちもまあまあ。自分で言うのもなんだが、中学生の頃は少しはもてた。
しかしそれも過去の話だ。俺は高校に入ってすぐ虐めを受けた。
理由はいたってシンプル。「気に食わない」だ。
クラスメートの誘いなどを片っ端からことわってしまったからだろうか?
仕方ないじゃないか、バイトがあったんだから。
そのうち誘いもなくなり、ついには虐めが始まった…。
そしてたった今も虐めを現在進行形で受けているところだ。
「ほら、さっさと立てよ!!!」
バキッ! ドカッ!
「ハハハッ!健ちゃんやりすぎだって、こいつもうフラフラだぞ。」
こいつらは俺を虐めている主犯格ってところだ。
見た目が完全にジャ○ア○な杉本 健二を筆頭に、クラスで中心となって俺をいじめている4人組だ。
「なんの役にも立たねえカスをサンドバックとして使ってやってるんだ。やりすぎもクソもねーだろ。」
「ハハッ!違いねぇな。」
「「ギャハハハハハハハハッ!!!!」
こいつらはいつもこの調子だ。毎日、昼休みになると体育館裏に俺を呼び出して暴行を行い、笑いながら教室に戻っていく。
俺は杉本たちが戻っていくのを見届けてから一人ゆっくりと教室に戻っていく。
「まったく、人をサンドバック扱いしやがって…」
そんなことを言いながら廊下を歩いていく。すれ違うやつらはそんな俺を見てクスクスと笑っている。ひどい連中だ。
やっとのことで教室についてもクラスの大半は俺を見て笑っている。
しかし、ボロボロの俺を見て心配してくれるやつもいる。
「またひどくやられたな。大丈夫かよ雅風。」
「大丈夫?飯綱くん。」
木下 歩と横山 結衣だ。歩は俺より少し身長が高めで髪型は坊主。野球部に入っていてクラスのムードメーカーだ。
横山は身長160くらいで黒くツヤのある髪を腰のあたりまで伸ばしている。その整った顔立ちから思いを寄せている男子も多いクラスのマドンナ的存在だ。
どちらも、数少ない俺の友人たちだ。
「ああ、こんなもんただのかすり傷だ。」
「そうなの?でも、一応保健室に行ったほうがいいんじゃない。」
「大丈夫。でもありがとな横山。そんなに心配してくれるのは横山くらいだよ。」
本当に横山はよくできた子だと思う。
「そ、そんなことないよ。」
「おーい。お二人さん、俺のこと忘れてないか?」
「えっ、いたのか歩?」
「流石にひどくないか!?」
「冗談だよ。ありがとな歩。」
「おう!」
歩と横山。この二人がいたからこそ今も学校に通学できていると言っても過言ではないだろう。本当にいい友達を持ったものだ。
「はい、みなさん席についてください。」
国語科の中島 先生が教室に入ってきた。
「おっ!そろそろ午後の授業始まるぞ。」
「そうだね。準備しなくちゃ。」
「歩。授業中に寝るなよ?」
「失敬な!俺が授業中に寝るとでも?」
「「うん。」」
「二人揃って言うことないだろ!!!」
俺はこんな高校生活がまだしばらく続くと思っていた。虐められてはいるが、俺のことを思ってくれる友達もいる。この調子であと一年と少しを乗り切ろうとそう思っていた。
そのときだった。教室の床に突如として光り輝く謎の紋章が現れた。
「キャッ!何?」
「ウォッ!何だ何だ?」
クラス全体がパニックになった。先生も突然のことに驚いたのか何もできていない。
そんな中一つの声が聞こえた。
〈聞こえていますか?異世界の勇者様。〉
「「「「ッ!!!!!!!!!!!」」」」
その頭の中に直接響くような声によりクラス全体が静まった。
〈色々と聞きたいことはあると思いますが、今はわたしの話を聞いてください…。勇者様には私たちの世界に転移してもらい、魔神を打ち倒して欲しいのです。〉
その声の真剣さから嘘ではないのだろうと思った。それは俺だけでなくここにいる全員が思ったことだろう。
〈私たちは今、一刻を争う状況に置かれています。そのため、このまま勇者様にはこちらの世界に来ていただきます。あと5分ほどで召喚魔法を使用します。その際、中央にある円の中に入っていてください。もし、円に入っていない状態で召喚魔法が発動した場合命の保証はできません…。勝手なこととは百も承知です。しかし、私たちはあなたたちにすがることしかできません。どうか、私たちの世界をお救いください。〉
そして、頭の中に響いていた声は消えた。しばらく教室にいる全員が黙っていた。
それはそうだろう。急に異世界へ行って魔神を倒してこいと言われたのだ。教室全体に沈んだ空気は漂い始めた。
「ふざけんな!!!誰がそんな危険なことするかよ。やってられるか!!!」
静かになった教室に杉本の声が響いた。だが、彼が言っていることは間違いでない。見ず知らずの人々の為に異世界に行こうなど普通考えないだろう。だが、彼女は違った。
「杉本くん!!!そんなこと言ってはいけません!
助けを求めているんですよ?それに応えないであなたは人として恥ずかしくないのですか?」
先生正義感が強く、1つのことしか考えていない。と言うよりも先を考えずに行動をしてしまうのだ。それが良い方向に働くかもとあるが今回はどうだろうか。世界を救う、人の為に動くのは当たり前、そう言った考えで彼女の頭の中はいっぱいだ。異世界がどれほど危険なのか、俺たちが無事に帰れるのか、そう言った事など思いついてもいないのだろう。
「うるせぇ!!!そんなこと知ったこっちゃねえ。俺は帰るぞ。いくぞお前ら!!!」
「あ、ああ。」
そう言っていつもの4人組で教室から出て行こうとしたが、
「ッ!!!」
「? 健ちゃんどうしたんだよ?」
「開かねえ…。」
「えっ!?」
どうやら俺たちはこの教室から出れないらしい。しかしそのあと教室から出れないことを考える余裕がなくなった。中央にあった円が光り始めたのだ。そう、召喚魔法が始まったのだ。
それからの全員の行動は速かった。我先にと円に向かって走り出した。
俺も円に入ろうと走り出そうとした。しかし、それは叶わなかった。先ほどまでドアのそばにいた杉本たちが俺をつかみ、その反動で円まで向かった。掴まれた俺は後ろに転んでしまった。
「ッ!!!雅風ッ!!!」
「飯綱くんッ!!!」
歩と横山の声が聞こえた。俺は諦めず円に向かった。しかし、それは叶わず、俺が円に入ることなく召喚魔法が発動した。