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禁断の個人授業をいたしましょう

作者: すず

ホモっぽいけどホモじゃないです。

「やあ瞳真くん! 今日もすべすべで美しいなっ」


「⋯⋯」


「無視してるの? 瞳真くん無視してるんだ。そっか無視かぁ。でもツンツンしてるところも素敵だから問題なしさ! 瞳真きゅぅん、はやく一緒に授業したいよ。瞳真くんもでしょ?」


「うるさいジジイ。失せろ」


「えぇ? でも失せたら瞳真くんと話せなくなっちゃうだろう?それは困るな」


「オレは別に困らないんですけど」


「この照れ屋さんめ♡」


「早く死なないかなこの人⋯⋯」


「え、なになに?何か言いましたぁ?」


「⋯⋯」



いかんな最近。また今日も瞳真くんにフラれてしまった。一体私の何がいけないのかが分からない。常に紳士な態度を心がけてるし、瞳真くんに好まれる程度には顔も整っているはずなのだが⋯⋯。


「あぁなるほど。瞳真くんはイケメンがあまり好きではないのかな?」


私は仕事帰りに百円ショップに寄って、鼻眼鏡と黒ペンを買った。

次の日、出かける前に顔に大量のヒゲとほくろとイボをペンで描き込んで、鼻メガネをかけて出勤した。妹が引き気味に私を眺めてきたが、それほどまでに私は今不細工になっているという事だから、それはむしろ喜ばしい事だ。


瞳真くんの登校をわくわくしながら待つ。一体どんな反応をしてくれるだろうか?もしかしたら好かれてしまうかもしれないな。いやはやそれは参ったな。そしたら今夜にでもお持ち帰りコースで、そのまま私だけの物にしてしまおうか。


「まずい、笑みがこぼれてとまらんぞ」


瞳真くんはバス登校だ。今、やっとの思いで到着したバスから、瞳真くんが降りてくるのを待つ。学校の玄関に入ったところで、瞳真くんの前に勢いよく飛び出す。


「グッドモーニング瞳真くん! 今日も一段とかっこいいね。こんなにも醜い私とはやはり格が違う!」


「その顔でオレに話しかけないでください白石センセー。知り合いだと思われたくないので」


「え? あれ? もしかしていつものイケメンの方が良い?」


「マシってだけ。てか、どうやってもキモいから話しかけんな」


急ぎ足でスタスタと過ぎ去っていく瞳真くんを見送ってから、私は職員室に戻った。国語の「牛ババア」から説教を受け、瑠衣の担任の「レッドゴリラ」の馬鹿でかい笑い声を浴びせられた私は、正直に言うとイラついていた。

手洗い場で顔を洗った後、私は机の引き出しに入れていたタバコを持って、足早に中庭に向かった。

私が中庭に着くと、そこにはすでに2つの人影があった。1つは私の妹の白石瑠衣。もう1つはなんとなく見覚えのある男子生徒だ。私は瑠衣に手を振りながら近づいた。


「おぉ、瑠衣じゃないか。⋯⋯と、隣はまさか彼氏か? やるなぁ瑠衣」


「お、お兄ちゃん。顔、元に戻したんだ⋯⋯キモかったから良かった。⋯⋯あ、あのねお兄ちゃん。この人とはそういうのじゃないから。ただの友達だよ」


顔を真っ赤にして必死に否定する瑠衣。ういやつめ。やはり私の妹だけあって可愛さは折り紙付きだな。ふふふ。ふと思い出し、私は男子生徒に尋ねた。


「⋯⋯ところで、瑠衣のお友達の少年よ。まさか君は瞳真くんの弟の涼くんではないかね?」


「⋯⋯あー、はい。そうです⋯⋯」


「やはりそうか⋯⋯! 確かに瞳真くんと似て可愛らしいお顔をしているな。私は瑠衣の兄で、数学担当の白石鈴之助先生だ。よろしく。瑠衣とも是非仲良くしてやってくれ」


「お兄ちゃん⋯⋯気持ち悪いからあっちいって」


「えっ」


な、なんという事だ。瞳真くんからだけでなく、瑠衣からも拒絶されてしまった。涙がこぼれそうだ。


2人と少し離れてから、取り出したタバコに火をつける。

さて、瞳真くんのことだが⋯⋯。次の作戦を考えなければならないようだ。

今度時間がある時にでも、弟の涼くんに色々聞いてみよう。瞳真くんの好きなものなどが知れるかもしれないからな。


♦︎


「さて、問3の問題だが⋯⋯愛須瞳真。黒板に出て答えろ」


「チッ⋯⋯」


4時間目の数学。私は2年の瞳真くんのクラスで授業していた。怠そうに立ち上がって黒板まで歩いてくる瞳真くんを眺める。うむ⋯⋯やはりプリティだな。


「よし⋯⋯正解だ。席に戻れ」


「へいへーい」


瞳真くんはスタスタと自分の席に戻った。椅子に座ったのを見届ける。驚いたことに、なんと瞳真くんは速攻で居眠りしようとしていた。


「よし、では問4⋯⋯愛須瞳真!」


「てめえふざけんなよ!?」


瞳真くんは、やってられねーぜ、畜生! とでもいうような態度で机の上に足を投げ出した。どうだ、ヤンキーは怖いだろう! だからオレに指図するんじゃねえ! とでも言いたげなご様子だ。

生憎だが、こちとら教師になってからそういった生徒は山ほど見てきた。ヤンキーやスケバンにはもう慣れてしまっているって訳さ。今更無駄なアピールはよせ、瞳真くん。私は瞳真くんのメロメロお色気アピールしか望んでいないのだよ。


「瞳真くん。ヤンキーごっこはいい加減卒業しなさい。授業中に堂々と眠るお前が明らかに悪いだろう」


「なにこいつ、ほんとうざぁ⋯⋯。⋯⋯あ、センセー。具合悪いんで保健室行って来ていーですかぁ?」


「⋯⋯なるべく早く戻ってきなさい」


「はぁい♪」


その時間、瞳真くんが授業に戻ってくる事はなかった。


♦︎


家に帰りシャワーを浴びた後、私は瑠衣とソファに座って、くだらないバラエティ番組を見ていた。瑠衣も番組に飽きてきたのか、一生懸命携帯電話を操作し始める。


「男とメールか? 瑠衣も大人になったな⋯⋯ふふふ」


「や、やめてよ! もう⋯⋯お兄ちゃんいちいちうるさいー」


瑠衣は携帯電話を手で隠して私から見えないようにした。怒りながらも少し口元が緩んでいる。上手くいってるみたいで良かった。


⋯⋯それにしても私の瞳真くんの事だが、なにやら最近拒絶が激しい⋯⋯。も、もしかして彼女でもいるのだろうか。白石と絡んでると彼女に勘違いされちゃうからやめてっ! ぷりぷり! って事だったらどうしよう。


か、彼女か。瞳真くんに彼女⋯⋯。やはり瞳真くんは女性にのみ性的興奮を覚えるタイプなのだろうか。そうなるとやはり私は門前払いってことか。⋯⋯いや、私もそれは分かってた筈だろう。あ、あれ?


実際、瞳真くんが身体的には女性である事、また心と体の性が一致していない事は私も十分に承知している。そしてその点にも配慮しつつ接していたつもりだったが。


そもそも私が瞳真くんを好きだと公言している以上、配慮が足りていないという事にはならないだろうか。つ、つまり男である私に好きだと言われるたびに、女性である事を実感させられて辛い思いをしているのでは⋯⋯?


「い、いやしかし。⋯⋯あぁなんだこの感じ。どうにも思考が薄弱としてしまう⋯⋯」


「ん? ⋯⋯お兄ちゃん、どうかした?」


瑠衣が心配そうに顔を覗き込んでくる。どうにもこれが駄目だ。実際、おふざけ抜きで瞳真くんは私を本気で嫌がってたとしたら⋯⋯。


「あぁ⋯⋯なんという事だろう。私とした事が。瞳真くんに酷いことをしてしまっているかも⋯⋯」


「お、お兄ちゃん。瞳真さんと何かあったの⋯⋯? いや、いつもなにかしらあるんだろうけど、今日はなんかお兄ちゃんらしくない⋯⋯。いつものお兄ちゃんに戻ってよ⋯⋯」


瑠衣は寂しそうな顔で私の腕をさすってくれた。⋯⋯妹にこんなに心配をさせてしまうとは。


「⋯⋯あ、あぁ、そうだな。すまない。明日きちんと話してみるから大丈夫さ。⋯⋯よし、今日はもう寝ようかな。少し疲れているみたいだ。瑠衣もあまり遅くならないようにな。おやすみ」


「⋯⋯うん。わかった、おやすみなさい。お兄ちゃん⋯⋯」


あぁ本当に。私らしくもないな。明日瞳真くんときちんと話そう。そしてその上でこれからの事を考え直す。瞳真くんが本気で嫌がっているならもうベタベタし過ぎるのも控えなければならないかもしれん。

たとえ嫌われてるとしても、瞳真くんを傷つける事だけはしたくないからな。


もちろん、何があっても瞳真くんを好きだという事実は変わらないのだがね。


♦︎


次の日の学校。静かな廊下で丁度すれ違った、瞳真くんを呼び止める。私は、面倒くさそうに振り返った瞳真くんに向かって頭を下げた。


「⋯⋯は?ちょっ、なにやってんのおっさん⋯⋯」


顔を上げて瞳真くんの美しいお顔を見た。目を丸く見開いて、随分と驚いた様子だ。私はこう答えた。


「あぁ、その、なんというか⋯⋯。今まで悪かったな。お前への配慮が足りていなかったんじゃないかと反省した。私は瞳真くんといちゃいちゃ出来るならホモ! と言われようがなんでも構わないと思っていたんだが、それはあくまで私個人の話だしな。だから瞳真くんにそれを強いるのが心苦しいのだよ⋯⋯」


「⋯⋯はぁ? なに言ってるか分かんないんだけど⋯⋯。つまりなんなの?」


「⋯⋯つまり私がホモでも瞳真くんはノンケだから、付きまとわれる方も迷惑だろうなって話だよ」


私がそう言った瞬間、瞳真くんが一度ぷっ、と吹いてからけたけたと笑い出した。なんと。瞳真くんと話していて初めて笑ってもらった。今かなりときめいた。

瞳真くんはひとしきり笑った後、私に向かってこう言った。


「つーかさ、おっさん。まさかそんな事で引こうとしてた訳ぇ? 教師のくせに生徒にマジ告白してきたあんたが?超ウケるんだけど!」


「ウケるとか失礼だろ」


「いやいや、でも実際超ウケるし。⋯⋯ふーん、でも意外とちゃんと考えてくれてたんだ」


瞳真くんは少し考えるそぶりを見せた後、静かに話し始めた。


「⋯⋯あのさ、1つ良い事教えてあげるけど。別にオレ、そういうの全く気にしてないから。てかさぁ、白石のくせにそんなに遠慮してる方がキモくて無理だわ」


「ほ、本当か。いやキモくはないけどな」


「だからそー言ってるって。⋯⋯いやいやキモいけど?」


「そ、そうか! すまない。私としたことが、少しおセンチな気分になってしまっていたんだ。⋯⋯じゃあもう遠慮はしなくても良いんだな」


そうだったのか。という事はつまり、私は瞳真くんから身を引く必要もないという事だ。しかも瞳真くん公認! なんと喜ばしい事だろう。ふふふ。笑みがこぼれてとまらん。


「はぁ⋯⋯瞳真くん。君が好きだ。今までよりももっと好きになった」


「⋯⋯」


「本気で愛している。私と交際して欲しい」


「⋯⋯」


「⋯⋯もしもーし、瞳真くん? 聞こえてますか? お耳ついてまちゅか?」


瞳真くんはまるで私が存在していないかのように完全に無視を決め込み、そのまま廊下を歩き始めた。いつものクールな瞳真くんだ。じっと後ろ姿を眺める。それにしてもなんと美しい⋯⋯。

ふと、何かを忘れているような気がした。あ、あれ? 私はそっと腕時計を見た⋯⋯。


***


「すまない! 授業に遅れてしまった! 」


実は、あの後すぐに授業開始のチャイムが鳴ってしまった。私は急いで職員室に授業道具を取りに行ったのが、タイミングが悪く、丁度業者からの電話がかかってきたためその対応をしていたのだ。やっと2年の教室に着いた時には、もうすでに授業開始から15分が経っていた。

私が教室の中に入ると、各自が思い思いに席を移動し、休み時間かのようにわいわい遊び呆けている様子が目に飛び込んできた。


「⋯⋯おいお前ら」


教室の後ろ側から。「今日はもう授業やんなくて良いんじゃないですか〜? 」女子生徒の声だ。

それに同調するようにあちこちから「そうだそうだ〜」と聞こえてくる。私は深いため息をついた。


「どんだけやる気がないんだ」


「⋯⋯へぇ、いいのかなぁ? 今日授業やるっていうんならさ、白石センセーの秘密、みんなにバラしちゃおうかな♪」


机に頬杖をついて意地の悪い顔でニヤニヤしている瞳真くんを見る。おっと。私の秘密って一体何の事だろう。私はこれ以上無いくらいピュアな正直者だから、それほどやましい秘密など無いつもりだが。


「うん、なるほど。ではぜひ聞かせてくれ瞳真くん。どれほどのネタか少し楽しみでもあるしな⋯⋯ふふふ」


「は、はぁ? いや普通にあれだよあれ⋯⋯。 え、なに? バラされたら流石にマズいとか思わないわけぇ? だって、教師が生徒に⋯⋯」


「ん? 教師がどうした? ほら、もっと大きい声で言ってみなさい。悪いが、私は最近耳が遠くなってしまってな⋯⋯」


「⋯⋯う、うっざ⋯⋯! 」


周りの生徒が、秘密はなんだ、教えろと群がってくる。まるでハイエナだな。そもそも、言うほど私の秘密とか気にならなくないか? それも私がイケメン故に、生徒を虜にするフェロモンが出てしまうせいなのだろうか。ふふふ。


「悪いな、私も秘密があるなら教えてあげられるのだけれどね。瞳真くんにでも聞いたらどうだろう?さあ、皆に教えてあげたまえ瞳真くん」


「い、いいよ! まだこのネタ取っとく事にするしぃ?だからオレには逆らわない方が良いよ、白石センセー?」


「子供みたいで可愛いな瞳真くん⋯⋯。さてと、そろそろ授業するぞー」


「はぁ!? ま、マジでバラすからな!? 良いのか!」


私は瞳真くんを無視して黒板に問題を書き始めた。

だが正直、今はこんな数式などはどうでも良い。重要なのは、さっき瞳真くんの方から私にちょっかいを出してきてくれた事一点のみ。実は瞳真くんからの初めてのちょっかいだったのだ。いつもは私から行かないと相手にすらしてもらえてなかったのに。ふふふ。まさか好かれちゃったかも知れんな!


「いや〜私は今日気分が良い! せっかくだから残りの授業は自習に⋯⋯」


私が黒板から振り返った時には、生徒達は既に全員スリープ状態だった。


♦︎


「瑠衣。なんとも素晴らしいオムライスをありがとう!」


「え、えへへ⋯⋯。頑張ってケチャップで絵描いてみたんだけど、喜んでくれて良かった〜。お兄ちゃんって意外とオムライス好きだよね」


家に帰ると瑠衣がオムライスを作ってくれていた。しかもケチャップで描かれた私の似顔絵付き。


「ん⋯⋯なんとも美味だ!さすがだな瑠衣。これもお兄ちゃんへの愛の結晶かな⋯⋯ふふふ」


「くすっ。そうかもねー?」


オムライスを完食した後、早速私は作業に取り掛かった。用意した便箋に、筆ペンで文字を書き込んでいく。瑠衣が不思議そうに私の手元を覗き込んできた。


「お兄ちゃん、なにこれ?」


「ああ、これか。瞳真くんへの愛を綴った恋文を書いている」


「こ、恋文ぃ!?」


「瑠衣も涼くんに書くか? それともイマドキ風にメールで愛を囁くのかな?」


「かか、か、書かないよっ! 囁かないし!」


瑠衣は真っ赤な顔をしてブンブンと首を振っている。ふっ、ういやつめ⋯⋯。


しかし瑠衣も目の付け所がいいな。瞳真くんの弟くんならそれはもう素敵な人なのだろう。この前中庭で会った時の印象も悪い感じの子じゃ無かったしな。授業を担当するようになったら少しちょっかいでも出してみようかな。⋯⋯さて。


「ふふふ。恋文なんて何年ぶりだろうな。えーっと、『愛しの瞳真くんへ♡ 』⋯⋯」


「⋯⋯くすっ。お兄ちゃん。今日はいつものお兄ちゃんだぁ⋯⋯。えへへっ」


瑠衣が後ろからぎゅーっと抱きついてきた。ははは⋯⋯私の妹はなんて可愛いやつなのだろうか、ついニヤニヤと笑ってしまった。おっと、いかんいかん。

ペンをしっかりと持ち直し、文面を書き進める。


《好きな人はいますか?私は瞳真くんが好きだよ⋯⋯♡》


私の愛が伝わるようにハートマークをたくさんつけよう。あぁ。それから若者文化に則ってかわいい顔文字でも描いておくのもありかな。


明日、これを渡した時の瞳真くんの反応を早く見たくてしょうがなくなってきたな。書き終わった手紙に丁寧に封をして、忘れて行かないように通勤カバンの中にしまっておく。


♦︎


私は今、職員室で、手紙を眺め続けている。今、というより10分前から今まで、ずっとそうしていると言った方が正しい。しかし言っておきたいのは、私の目の前にあるこの手紙は、昨夜私が書いた瞳真くん宛の手紙ではないという事だ。



私は今朝、瞳真くんが登校してきた瞬間にあの手紙を渡した。瞳真くんは少し顔を赤らめながら「あ、ありがと⋯⋯っ」だなんて言った訳もなく、無言で手紙を受け取って無言で私の前から立ち去っていった。

私は瞳真くんに愛を伝えられればそれで良いと思っていたから、正直その時は特に何も期待していなかったのだが⋯⋯。


2年のクラスの授業終わりに瞳真くんが私に、「へ、返事書いてやったから! 絶対読んでよね⋯⋯っ! 」とツンデレのような照れ隠しをしながらも、あまりの緊張にぎくしゃくながらラブレターの返事を渡してきたという訳でもなく、普通にこの小さく折りたたんだ手紙を差し出された。



そして、私はあまりの嬉しさにこの手紙(私が一生懸命作った数学のプリントを使われている)を10分間も開かず、ずっと眺め続けていたと言う訳さ。興奮してそっと匂いを嗅いでみると、ほんのりと紙の匂いがした。


「さて。眺めているのも良いが重要なのは内容だ。もしかしたら、私に面と向かっては言えない恥ずかし〜い事が書かれているかもしれん。ふふふ」


私は折りたたまれた手紙をゆっくりと開いた⋯⋯。


『白石先生へ


突然の手紙ありがとうございます。オレの事、こんなに想ってくれてたんですね⋯⋯凄く嬉しいです。本当はオレもずっと先生の事が⋯⋯


⋯⋯なんて言うとでも思ったか?バーカ(笑)


そもそもあんなキモいストーカーじみた手紙、恐怖以外の何物でもないんですけど。ガチでキモすぎ。

あ、でも正直驚きました。白石先生って意外と達筆ですね(笑)あれまさか筆ですか? んー、そこだけはちょっと見直したかも。そこ『だけ』はね!(笑)


はいはい、熱い告白乙でーす。お断りさせてもらいます。


p.s.

好きな人います♡

2人でお風呂に入ったり、一緒に寝たりする仲です。キスももうしました♡

てことで、よろしく〜(笑)


しょうまより』



⋯⋯手紙を丁寧に折りたたむ。読み終わった私はそのまま机に倒れこんだ。変な汗が出て止まらない。し、瞳真くんに好きな人だと?

しかも一緒に寝⋯⋯え、「寝る」って何? ぽかぽか添い寝かな?



瞳真くんの好きな相手......これはきちんと調べなければならないようだ。


〜つづく〜

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