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09:サプライズ
 近付くBBに、沙織はきょろきょろと周りを見た。しかし、近くには誰もいない。
「沙織ちゃん」
「は、はい!」
 ユウの言葉に、沙織が答える。どこを見ればいいのか、何をしたらいいのかがまったく分らないほど、緊張する。
「これ、よかったらどうぞ」
 そう言ってユウが差し出したのは、メンバー四人のサイン入りCDであった。沙織はまたも驚く。
「えっ!」
「昨日、僕らのファンだって言ってくれたじゃない? それに君、手伝いだから今日で最後って聞いて、よかったらと思って……」
 思わぬBBの言葉に、沙織は震える手でCDを受け取った。
「あ、ありがとうございます! 嬉しいです……!」
 感無量といった様子の沙織に、BBのメンバーは顔を見合わせて微笑む。
「よかった。じゃあ、また……僕たちの写真集、手伝ってくれてありがとうね」
 そう言うと、BBのメンバーたちはスタジオを後にした。
「よかったね、沙織ちゃん。彼氏にお土産出来たね」
 そう声をかけたのは、俊二である。
「木田さん。はい、きっとすごく喜びます!」
 沙織は微笑んだ。まだ今までの出来事が、頭の中でリフレインしている。
「よかったね。これ、三日分のバイト代。鷹緒さんから預かってたんだ。お疲れさま」
 そう言って、俊二が封筒を差し出した。
「あ……ありがとうございます」
「鷹緒さん、まだ仕事モードで話しかけられないと思うから、このまま帰っていいよ」
「そうですか……貴重なお仕事手伝わせてもらったので、彼だけじゃなくて、私もお礼言いたかったんですけど」
「じゃあ、伝えておくよ」
「お願いします……あ、もうBBの写真集撮りは終わりなんですか?」
 横目で鷹緒の方を見ながら沙織が尋ねた。しかし鷹緒が居るはずのスペースには、すでに人を拒むかのように仕切りが閉められ、姿さえ見られない。礼の一つも言えずに仕事を終えるのは、少し寂しく感じた。
「ううん。来週、今度は外で撮りがあるよ。平日だけどね……また手伝ってくれる?」
「あ、手伝うのはいいんですが、来週からは学校があるので……」
 沙織が、残念そうに言った。出来ることなら、またBBに会いたいと思った。なにより、スタッフも優しいので、この仕事は楽しく思える。
「ああ、そうか。まだ高校生だもんね……じゃあ、暇な時は事務所に連絡してよ。仕事はたくさんあるからね。また、芸能人に会えるチャンスもあるだろうし」
「ありがとうございます」
「じゃあ、お疲れさま」
「はい。お疲れさまでした」
 俊二に見送られ、沙織はまだ仕事中の鷹緒を尻目に、スタジオを去っていった。


 数日後。冬休みが明けた学校で、沙織は篤と話をしていた。
「すげえな、沙織。みんなに自慢出来るじゃん。BBとしゃべって、サイン入りのCDもらったんだぜ?  マジすげえ!」
 子供のようにはしゃぐ篤に、沙織も微笑む。
「うん。ラッキー」
「おまえ、すごいよ。親戚が売れっ子の写真家だなんてさ。あの人、結構有名なんだな。あれからなにげに雑誌とか見てても、諸星鷹緒って名前、かなり出てるよ」
「え、本当に?」
「うん。確かこれにも……」
 驚く沙織に、篤は持っていたファッション雑誌を広げる。すると、メインページのカメラマン表記に、鷹緒の名前があった。
「本当だ! こんな身近な雑誌にも関わってるなんて、知らなかった」
 更に驚いて、沙織が言う。
「なんだよ、親戚のくせに」
「そうだけど……本当に、知らないんだもん」
「アハハ。おまえも大物だなあ。まあ母親の従兄弟じゃ、俺も全然知らないけど」
 その時、沙織の携帯電話が鳴った。
「あ、電話……鷹緒さんだ」
 電話には、鷹緒の名前が出ている。
「早く出ろよ」
「うん」
 篤に促され、沙織は電話に出た。


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