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この作品には 〔残酷描写〕 が含まれています。

古屋敷連続殺人事件

作者:貞治 参
 誰もが口を閉ざしていた。無理もないだろう。数時間前までともに酒を飲み、談笑していた人物が惨死体で発見されたのだから。

 大広間には、この屋敷に滞在しているすべての客人と、使用人たちが集まっている。深夜2時を過ぎた頃だろうか。張りつめた空気の中、やがて一人の男が椅子から立ち上がった。

「大友さんが亡くなられたことは、悲しむべきことです。しかし、一方で、これは、れっきとした殺人事件です。思い出すのはつらいかもしれませんが、みなさん、遺体の状況を確認されたと思います。あのようにむごい形で大友さんは殺されたのです。このまま、犯人を放っておくわけにはいきません。犯人を見つけ、報いを受けさせることが、今、大友さんにしてあげられる最大の弔いなのではないでしょうか」

 客人を見渡しながら、男は語った。彼は、皆子老司みなころうじ、探偵である。屋敷の主である立町に呼ばれ、今回の集いに参加していた。皆子は、参加者をじっくりと観察し始めた。

 主・立町は、椅子に腰を掛け、腕を組み、下を向きながらも探偵の言葉をかみしめているようだった。あるいは、自分のせいで、大友が殺されたと自分を責めているのかもしれない。

 立町夫人は、夫の様子を気遣いながらも、ときおりハンカチを手にし、口元に当てていた。今や彼女本来の美貌は見る影もない。

 立町の友人である兵頭と箱根は、ぼんやりと探偵のほうを向いたまま、黙ったままでいる。突然のこのような事態に対応できないでいるのだろう。兵頭の息子である則之は、不安そうにあたりをきょろきょろと見回している。

 立町夫人のマネージャーである城崎は、血にまみれたひょっとこのお面をかぶっているため、表情は読めない。お面のみならず、全身血だらけで、片手には先ほど使用されたばかりと思われる、やはり血糊がついた西洋風の剣をぶらさげている。

 皆子、兵頭、箱根、城崎に加え、殺された大友を合わせ、計5名が今回招かれた客人たちであった。使用人は赤間・手塚の2名と、メイドの小崎1名である。



「あ、あの」

 メイドの小崎がおずおずと手をあげた。顔色が悪い。今にも吐き出しそうだ。

 彼女は第一発見者であった。深夜1時30分ごろに大友に部屋を訪ねるように言われていたらしい。しかし、部屋の扉を開けて彼女がまず目にしたものは、切り刻まれた大友の死体であった、というわけだ。一体、そんな時間にどのような用事で、大友は彼女を呼んだのだろう。

「私、体調がすぐれないので、自室で休んでもよろしいでしょうか。大変申し訳ありません、なにもお役に立てなくて……」

「や、気づかなくて申し訳ない。休んでくださって結構です。ただ、その前に、何か犯人につながる手がかりについて思い出せることがあれば、それを伝えていただけないでしょうか」

 探偵皆子は、両手を胸の前で合わせ、小崎にお願いをした。

「ええと、私、実は、部屋に入る前に廊下の角を曲がる人の姿を目撃したんです。その姿について、今ははっきりとは思いだせないのですが、もう少し落ち着けば、何か手がかりになるようなことを思い出すかもしれません」

 メイドは震える手で、自身の体を抱きしめた。

「や、ありがとうございます。それは重要な証拠になりそうです。ただ、今はもう、お部屋に戻られてゆっくりしていてください。後でお尋ねすることもあるでしょうが、そのときはぜひご協力ください。必ずや、私が犯人を見つけ出しますから」

 メイドは一礼し、ふらつきながらも大広間から出て行った。

「すみません、私も少しの間、お手洗いに行ってもよろしいでしょうか」

 城崎が立ち上がりながら言った。その声は、お面によってさえぎられているためか、ややくぐもって聞こえた。手にはやはり大剣があり、今はそれをすぐにでも振り回せるように構えている。

「ええ、構いません。ただ、できるだけ急いで戻ってきてください」

 皆子は答え、城崎は足早に広間を出て行った。

 そして、その十数秒後、女の悲鳴が館内に響き渡った。

「いかん! また何か起こってしまったか!」

 言うが早いか、皆子は駈け出した。他の客人や使用人たちも後に続いてきた。

 廊下に出て、角を曲がり、階段を上った先に使用人たちようの部屋はある。皆子はそこを目指して一目散に走った。息を切らせながらちょうど階段を上り終えたとき、彼は目にした。

 胸元に剣が刺さり、すでに絶命していることが明らかな様子の小崎の姿を。

「何があったんですか、今の悲鳴は! わあっ!」

 客人や使用人たちに遅れること数秒、城崎が現れた。彼は今や、何も手にしていなかった。

「また、人が殺された……」

 皆子はうなだれ、床にひざをついた。

「おのれ、犯人……。絶対に、絶対に、俺がお前を見つけ出してやる!」

 探偵の口から絶叫が迸った。

 殺人鬼による饗宴は、まだ始まったばかりであった。
一体、犯人は誰なんだ……! by 作者

冗談はさておき。

普通の推理小説でも、それに登場する探偵以上におそろしいほどの推理力と観察力をもった超探偵がいれば、こんな感じに見えるんでしょうね。「なんで気づかないの?」って。そう考えると、あんまり笑ってられない気もします。
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