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第25話 :コア
「ねぇ、おじいちゃん。」
「どうした?」
「どうして、ドラゴンを使って戦うの?」

そこは草原に小さな木が立っていて、戦争なんかがある世界とはかけ離れた別世界のような所。

「どうして、人は戦うの?
どうして、ドラゴンと一緒に戦うんじゃなくて、“ドラゴンを使う”って言うの?」

赤い林檎の色をしたワンピースを風がなびかせて、少女は問う。
老人と小さな少女と、それから白いドラゴンは彷徨う風を浴びている。
その少女の質問に、おじいさんはドラゴンを右手で撫でて答えた。

「真のドラゴンマスターじゃないからじゃよ。」
「しん・・の?」
「真のドラゴンマスターなら、共に戦うもんじゃから。」
「なら、おじいちゃんは・・・しんのドラゴンマスターじゃないの?」

おじいさんの答えに、少女の疑問は一層広がったようだ。

「さぁ、わからん。エルクーナに聞いてみんとなぁ。」

その大きな疑問におじいさんは笑ってドラゴンの目を覗いた。

『それを、私に聞きますか・・・。』
「エルクーナっ。私のおじいちゃんは、真のドラゴンマスターだよねっ?」

少女もまた、同じような目をしてドラゴンを覗き込む。

『そうですよ。この人こそ、私という白竜が選んだ世界一のドラゴンマスターですよ。』

そんな少女の眼に笑いかけ、白竜は優しい声を出していった。
そうエルクーナが答えると、少女は目の輝きを増して笑った。

「あれ?でも・・おじいちゃんは戦ってないよ?」

その笑顔がすっと流れて、また疑問の顔。

「戦う事が、ドラゴンマスターではないからの。
エルクーナを傷つけずにすむなら、ドラゴンマスターなんぞ興味もないのぉ。」

白いひげが少しだけ持ち上がって、少女を見た。
少女はそのひげを見て、笑った。
(おじいちゃんのおひげは、エルクーナとおそろいの色だぁ。)

「おじいちゃんは、エルクーナが大好きなんだねっ!」

また、笑顔を向ける少女に優しい風が吹く。

「当たり前じゃよ。」
『よくもまぁ、そんなことを。』
「はっはっ。」

2人は少女には分からない話をしていたが、それが何だかとても幸せそうで。
少女はそんな2人を見て笑っていた。

「なぁ、コア。」
「なぁに、おじいちゃん。」

そんな少女の名前を呼んだおじいさんに、少女は聞き返す。

「ドラゴンが声を持っている理由を知っているかい?」
「ドラゴンが?」
「いや、わしらもじゃ。」
「ドラゴンと、私達が声を持ってる理由?」
「そうじゃ。」

少女は難しい顔をして、考え始めた。
(笑うため?・・泣くため?・・お話しするため?
ん〜・・・・)

「分からない。なぁに?」
「呼ぶんじゃよ。」

おじいさんはまっすぐと空に目を向けていった。

「よ・・ぶ?」
「声が聞えるんじゃ、わしを呼ぶ声が。」
「え?」
「わしも、エルクーナを呼んで。エルクーナもわしを呼ぶんじゃ。」

だから声はあるんじゃよ、と空に笑うおじいさん。

「そっか。じゃぁ、呼ばないドラゴンは、私と契約はできないの?」
「どうじゃろうな。けど、声が聞えるまで待ってみるのもいいかもしれんな。」

おじいさんは何か遠くを見るように、少女に言った。
その時間は小川のように優しく不規則に流れていく。

『さぁ、そろそろ帰りましょう。お母さんが待ってます。』
「ままがっ?うんっ!!」

そこは、風が優しく吹き抜けていく草原に木が一本だけ立っている世界の原点のような所。




「ん・・〜」

鳥のさえずりが、窓の向こうから聞える。
ベッドに眠っていた少女は、目を開けて、あの日よりも少し色の濃い世界を目に映す。

「・・・夢?」

誰もいない部屋に、ただ一言呟いてベッドを離れる。

「コアー!」
「わ!もうこんな時間!!」

ドアの向こうの声に時計を見て、服を着替え始める。

「やっぱりね。新年度最初の日に、寝坊なんて。」

分かりきったようにため息をだして、リラが言った。

「わわっ!ごめんなさいっ!」

白くまっさらのマントを羽織って、リラの傍に走り寄った。

「何か、いいことでもあったの?」

リラは私の顔をみてそういった。

「うんっ!!私がここに立った原点の夢をみたの。」
「そう。」

リラは少し嬉しそうな顔をした。

私は、あの日からずっと・・・耳を澄まして、声を探していた。
ずっと、ずっとドラゴンマスターになることを夢にしてきた。
今、目指すものは・・伝説のドラゴンマスターの名を継ぐ事。

『コア、行きましょう。』

この白い色を放つ、ルキアと一緒に。

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